第4話 モニター越しから見る参加者たち
モニターには参加者となる十名の人物が映し出された。
狭い鉄越しからの映像でどこかの地下施設に幽閉されている。
「ここは?」
「控え室です。参加者はゲームが始まるまでここで生活をしてもらっております」
と藍華は説明する。
「生活ってどれくらい?」
「現在三日目ですね」
「三日? まるで囚人じゃないか」
「組織に捕まったことで既にあの者たちは組織の所有物です。デスゲームに参加する以外に選択肢はありません」
「デスゲームを始めるタイミングは?」
「それは黒鉄様次第です。なんなら今すぐデスゲームを始めることは可能です。ただ、生配信になるのでスポンサーには事前に告知は必要ですけどね」
「参加者のリストを確認させてくれ」
「それならこちらに」
俺は藍華から奪うようにリスト表を取り上げて目を通した。
俺にとって参加者は命運を分ける一心同体の存在だ。事前情報は必須である。
「私なりにデスゲームを盛り上げてくれそうな人物を三名ピックアップしました。この三名には是非、最終ゲームまで生き残って盛り上げて欲しいと個人的に考えております」
藍華の注目する三名。
一人目。
二人目。
筋肉質で体を動かすことが好き。高校時代は陸上の長距離で全国出場を果たしたほど。人に騙されて組織に借金を背負ってしまった。元々孤児施設で育ったため、頼れる親はおらず参加者として連れてこられてしまった。
狭い鉄越しで落ち着かないのか、筋トレをして気を紛らせている様子だった。
三人目。
生気が一切感じられず鋭い眼光で歯軋りを繰り返していた。
親に対する恨みと世の中の理不尽さに怒りを感じているように見えた。
「事情はそれぞれありますが、デスゲーム参加者として申し分ない逸材だと思います。参加者に合わせてゲームの内容を変えるのは効果的だと思いますが、どうしますか?」
「シナリオはそのままでいい。最短でゲームを始められるタイミングは?」
「会場の設営とスポンサーへの告知もありますので翌朝くらいには可能です」
「よし。じゃ、最短で動いてくれ。一秒でも早く」
と、俺は念を押すように指示をした。
「黒鉄様。何か急ぐ理由でもあるのですか?」
「俺の横領がいつバレてもおかしくない。だったら早くデスゲームを始めて組織は手出しできないようにしておきたい」
というのは建前でこれ以上、参加者たちを狭い空間に閉じ込めておくのもストレスが溜まるのはよくない。それに注目している三人の活躍が気になるところである。
「そういうことでしたらすぐに手を打ちます」
ゲームを早く始めたい一方、俺は参加者を見てふと思った。
準備に取り掛かろうとする藍華を止めるように言った。
「あの、一つ気になったんだけど、参加者はその……絶対に死なせないとダメなのかな?」
自分が何を言っているのか分からなかった。これはデスゲーム。死なないデスゲームなんて聞いたことがない。それは藍華も同じである。
しかし、一瞬驚きの表情を見せた後、冷静に藍華は答えた。
「いいのではないですか? 誰も死なないデスゲーム。確かに聞いたことはないですが、ゲームマスターがそうしたいというのであれば我々はその意向に従うだけです。ですが、スポンサーが納得できる結末ではないと意味がありません。そこは腕のみせどころですよ?」
「分かっている。分かっているけど不安でいっぱいなんだ。参加者も俺と同じ何だろうなって」
「同じ……ですか?」
「いつ殺されるか分からない。不安がありながら今を生きている。それって今の俺と全く同じだと思わないか?」
「……えぇ、そうかもしれませんね」
なんて答えていいか分からず、藍華は同調するように返事をした。
せめて今を生きている間は楽しく生きてもらいたい。そんな自分都合があった。
参加者が施設に連れてこられた四日目の朝のことだった。
ファーストステージの準備は着々と進み、デスゲームが開始されようとしていた。
そして俺の役目である参加者へのゲーム説明のため、位置に着く。
「よし。いよいよだな」
藍華が用意してくれた仮面のマスクとマントに身を包んでいた。
「黒鉄様、一点注意事項があります」
「何だ?」
「ゲームマスターはある意味、役者でもあるんです」
「役者?」
「素の黒鉄様は何と言いますか優しいです。しかし、それだと参加者にもスポンサーにも雰囲気が出ません。ですから威厳があるような怖い演技をした方がいいかと」
「仮面とマントで隠してあるから大丈夫じゃないのか?」
「雰囲気が優しいです。声も少し低くしてキャラ作りをして下さい。第一印象で最終ゲームまで繋げられるか変わります」
「うーん。そう言われてもなぁ……」
「まだ少し時間があります。練習しましょう」
藍華に促されて本番ギリギリまで雰囲気作りのリハーサルをさせられた。
「うーん。まぁ、いいでしょう。気を抜かずにモニター越しでは絶対に大物感を出して下さい。いいですね?」
「わ、分かったよ」
俺は深呼吸をして素の自分を捨てた。
モニターの外なら構わないが、モニターの中だけでもゲームマスターらしい姿でいようと心に使った。
「黒鉄様。間も無く生配信に切り替わります。準備はいいですね?」
「あぁ、頼む!」
カメラを向けられていよいよデスゲームが始まろうとしていた。
俺にとって、参加者にとって命を掛けた戦いの幕が開けた。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
ニーズ外したら面目ない(汗
外して……ないと信じたい。
よければ★★★をよろしくお願いします!
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