第9話 ファーストステージ〜地下迷宮〜その2
「し、死神?」
死神と遭遇した
ただ、目を反らせなかった。
「よ、よく出来た模型じゃない。随分、手が込んで……」
すると、死神は大鎌を大きく振り被った。
斬っ! ダダダダダッ!
床に大鎌の先が触れた瞬間、ヒビ割れが広がる。
「ほ、本物? 嘘でしょ!」
寸前のところで交わすことが出来た米津は危険を感じて一目散に走り出した。
死神は宙に浮かびながら米津を追い掛ける。
「いやああああああああああああ。殺されるううううううううううううううううううううううううううううううううう!」
本気で死を感じた米津は大声を張り上げながら走る。
「悲鳴? 一体、どこから?」
米津の近くに居た
すると、次の瞬間、米津と垣根は鉢合わせする。
「いやああああああああああああ!」
「な、何事?」
半泣きになりながら自分の方向に向かってくる一人の参加者に対して垣根は困惑していた。
その後方をよく見ると大鎌を持った遺骨が追いかけてくるではないか。
状況を察知した垣根はすぐに走り出す。
「ちょっと、こっちに来ないでよ!」
巻き込まれる形で垣根は走り出した。二人は走るのに必死だ。
追いつかれたら最後、あの大鎌で真っ二つにされてしまう。
「ちょっと、あなた。どこかに行きなさいよ。勝手に私を巻き込まないでくれる?」
「知らないわよ。あんたがたまたまそこに突っ立っているのが悪いんでしょ」
「はぁ! なにそれ。どこか行きなさいよ」
「どこかってどこよ」
現在、一本道。後方から追ってくる死神から逃げるのに必死である。
「げっ! しまったこの先は……」
垣根はあることに気付いて立ち止まる。
「え? 何? あっ!」
そう、その先は既に行き止まり。先ほど行き止まりで引き返してきたところに米津と鉢合わせていたのだ。
「どうするのよ。行き止まりじゃない!」
「知らないわよ。あなたが連れてきたんでしょ。あなたが何とかしなさいよ」
「無茶言うな!」
二人が言い合っているすぐそこまで死神は迫っていた。
最初の脱落者となるのはどちらか。画面の奥にいるスポンサーが楽しむ様子が目に浮かぶ。
「くそ! どうせ死ぬなら最後の最後まで足掻いてやる!」
米津は戦闘態勢に入った。
「な、何をするつもり?」
「一か八か。ブン殴る!」
米津は拳を握り込み、大きく振り被った。
死神も命を狩ろうと大鎌を振り被る。
「えいっ!」と米津が拳を向けたその時である。
スカッと拳が死神をすり抜けてしまう。
「え?」
一瞬、何が起こったのか。米津は終始困惑していた。
「わわわっ! こっち来ないでよ」
死神はそのまま垣根の方へ向かう。
グッと目を瞑った垣根の身体をすり抜け、行き止まりの壁ごとすり抜けた。
死神の姿がいなくなった瞬間、米津と垣根は顔を見合わせる。
「い、今のって……」
「幽霊よ。現実でありえないじゃない。今のは間違いなく幽霊の仕業よ」
垣根の導き出した答え。それは死神の正体は幽霊であると言うことだ。
「幽霊ってそんなわけあるか」
俺はモニター越しからついツッコミを入れてしまう。
「まぁ、いい線はいっているんじゃないですか。黒鉄様」
「何故、ソリットビジョンだと分からない。まぁ、実体がないところまでは分かったみたいだからヨシとしよう。それより愛華さん。編集の方はうまくいったのか?」
「はい。狩られる瞬間に別視点に移動させました。スポンサーとしては続きの展開が気になって仕方がないと思いますよ」
「なら大丈夫だ。誰も死者を出さないように誤魔化さないといけないからな」
「いつまでも誤魔化せきれないですよ。スポンサーとしても人の苦しむ姿を好む方が多いですので」
「なら次の仕掛けだ。次は別の参加者で試そう」
次の仕掛けを発動しようとしたその時である。
(ゲームクリア。ゲームクリア。ゲームクリア)とアナウンスが流れた。
「これって……」
システムの故障を疑ったが、エラー表示はない。正常である。と言うことはつまり……。
「黒鉄様。先ほどの画面に気を取られている間にファーストステージ最初の通過者が出てしまいました」
「そんなバカな。システム上、こちらからゴールを出現させないとゲームクリアには繋がらないはず。一体、誰がどうやってクリアしたと言うんだ」
予想外の事態に俺は困惑していた。
シナリオから外れた展開は全く予想していなかったので尚更だ。
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