第14話 フロント企業
それは都に呼び出されていつもの会議室に着いた時だった。
「ん? 今回は全員集合か……」
――そう。私の呟きの通り。私が会議室についた時点でそこには都、リキ、シコナ、ヨネの全員が席に着いていた。
私が扉に手を掛けたまま全員の顔を確認していると。
「来たかダイコン。早速会議を始めたいので席に着いてくれ」
という都の手招きに、私は自分の席に深く腰を下ろすとすぐに口を開く。
「それで? わざわざ幹部全員を集めて今日はどんな話し合いがしたいというのだ?」
「それなんだがなダイコン。君は前回我々が全員揃っての会議の時に言った事を覚えているか?」
前回の会議? っと私が頭に疑問符を浮かべていると、リキ、シコナ、ヨネの3人も特に心当たりがないのか私に奇異なる視線を送ってくる――中で。
「前回の会議? 確か――『ウォシュレットの好きな投げ方』の話だったか?」
「いや、そんな話はしていないだろう? 本当に覚えていないのか?」
ム? なんだか良くわからないが妙に癇に障る言い方だな?
「だったら逆に訊くが都。貴様は今までに食べた米粒の数を覚えているのか?」
「パ、パンの枚数じゃないんだ……」
リキが何やら呟いてるが、気にせず私は都から一切視線を逸らさずにいると。
「いや、流石に今朝食べた数しか覚えていないな……」
「何粒だ?」
「3粒だ」
「多いな?」
「育ち盛りだからな?」
「育ち盛りだったの都さんっ!?」
またリキが何か言っているがシカトしよう。
――というところで見兼ねたのかシコナが割り込んでくる。
「うむ。ところで話を本筋に戻すと今日はどういった用件か都殿?」
まあ、確かにシコナの言う通りで、話が少し逸れ始めていたので戻すとして――都は。
「おっとそうだった。ダイコンよ。前にフロント企業の話をしたのは覚えているか?」
フロント企業? あぁ、そういえば社名を考える時にチラッとそんな話をした覚えがあるな?
「それならば覚えている……というより思い出したと言った方が正確な言い方だがそれは置いておくとして――。しかしあれはフロント企業の話をしたというより、話題として持ち上がった程度だろう?」
「ああ、その通りだ。だが今日はそのフロント企業を本当に立ち上げるためにみなに集まってもらったのだ。今我々の会社は名前も決まり、アルバイト募集のホームページにも社名や代表である私の名前が記載されている。なので悪の秘密結社忍転道をカモフラージュするために如何にも健全なフロント企業を立ち上げ前面に押し出していきたいのだ。良く言うだろう? 健全な大胸筋は健全なブラに宿ると……それくらい健全な企業にすれば裏に悪の秘密結社があるとは誰も想像するまい?」
確かに想像はしないかもしれないが、結局ネットで検索されたら一発だがな?
――としていると横からリキ。
「あの……それを言うなら健全な大胸筋は健全なブラに宿るじゃなくて健全な精神は健全な身体に宿るじゃないですか?」
これに都は小首を傾げ。
「それはつまりブラじゃない。大胸筋矯正サポーターだと言いたいのか?」
「いや都よ。誰もそんな話はしていない。してはいないが――それならばもういっその事。フロント企業は女性専用の下着売り場か謎の覆面レスラー専用のタイツ売り場で良いのではないか?」
という私の意見に都は首を左右に振り。
「いや、それはダメだ。君も知っているだろうが我々はヒーローからすればラスボスだ。そして古来よりラスボスの基地には謎の覆面レスラー専用のタイツ売り場を設置するのがお約束になっている。なのでこの忍転道の社内には既に謎の覆面レスラー専用のタイツ売り場があるのだ」
そ、そうだったのか……どうりで敷地内でIQの高そうなデータキャラっぽいIT関係者を良く見かけると思ったが、奴等が謎の覆面レスラーの中身だったのか……。これで謎の覆面レスラーの謎が少しだけ解けたな。
と私が納得していると都は続ける。
「なのでカモフラージュ的にもフロント企業を同業種にするのはあまり宜しくもないし、出来る事なら呪いの藁人形の中から出てきた天使のブラを売る女性専用の下着売り場より健全な企業が好ましいのだ」
いや、そもそもとして呪いの藁人形の中から出てきた天使のブラを売るというのはどちらかと言えば不健全だと思うのだが?
――という話はさて置き私は口を開く。
「話はわかった。要するに今日はそのフロント企業をどういった会社にするのかを決めようと……。だから全員を集合させたという訳だな?」
「そういう事だ」
と頷く都はそのまま続ける。
「つまりここからが本題で、ここまでの話は全て前置きだったのだ。…………フロントなだけにな」
「あ、うまい!」
と呟くリキだが――上手いかっ? 貴様も貴様でドヤ顔を止めろ都。半魚人のドヤ顔などムカつくだけだ。大体前置きがここまで長くなったのは半分は私のせいだが半分は貴様のせいだろう? まあ、とりあえず議題内容は理解したのでここからはなるべくスムーズに話を進めるとしよう。
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