第8話 勇者より強い一般人
「――で? ヨネは『片翼の天使の尿漏れ』で聖女をやっていてどうやって都と出会ったのだ? それと今後のために訊くがヨネはどういうタイプの聖女だ? バッファーか? アタッカーか?」
私の質問に都とヨネが揃って首を左右に振る。そして当然だが口を開くのは都で。
「どちらでもない。彼女はパーティーのただの荷物持ちだった」
にっ! ……1番の役立たずだったのか!
「彼女は……というより、この世界に召喚された異世界人である
滅茶苦茶らっきょうを漬けるのが上手いタクシー運転手が量産された訳か……魔王を倒すために。
「そして肝心のヨネのスキルは『鑑定』と『
ど、どこかで聞いた事がある……というよりまあまあ聞いた事がある能力だが一応訊いておこう。
「鑑定とアイテムボックス……どいう能力なのだ?」
「うむ。鑑定とは森羅万象のステータスを見る事が出来る能力。そしてアイテムボックスは出し入れ自由の収納無限。収納したものは時間凍結されるという次元収納箱を使う事が出来る能力だ」
やはりそうだったか……。となるとパーティーで1番の役立たずどころか1番有能だったまであるのか。
「どうやらヨネさんは私やシコナさんとは違うタイプの聖女だったみたいですね?」
と独り言のように呟いていたのはリキだが、もうここまでくると聖女にタイプもクソもあるかと言いたい。しかしそれとは別に都ないしヨネにも言いたい事があるので私は口を開く。
「というより、その能力がありながら冒険者になったのか? 一生食うに困らない能力だろう?」
仕事なんて選びたい放題。寧ろそのスキルがあって冒険者をするなんて無駄に命を張るだけでバカのする事だろうに?
「更に言ってしまえば、そのスキルがあれば勇者でなくても魔王を瞬殺出来たはず」
これに何故か都とヨネはハトが豆鉄砲を食ったような顔をし。
「流石だなダイコン。その事に一瞬で気が付くとは……」
いや普通……。
「しかしまあ、ヨネも冒険者になった瞬間その事に気付き――。すぐに冒険者を辞めてその足で魔王を瞬殺したが……気付くのが遅かったそのショックで喋れなくなってしまったのだ」
じゃあ彼女のアイテムボックスの中には今、魔王が封印されているのか。それはそれとして私は頬に汗を垂らし。
「ぼ、冒険に出る前に気付けただけマシだな。しかし喋れなくなるほどショッキングな事か? どんだけ豆腐メンタルなんだ」
「豆腐メンタルではない。焼き豆腐メンタルだ」
焼いた分、豆腐メンタルより若干固いと言いたいのか……
「それは申し訳ない。前言は撤回しよう。それで? その後どうやって都と出会ったのだ?」
すると都は両肩を竦め。
「なんて事はない。冒険者を辞めてこれからどうするか悩んでいたところでバッタリ私と出会ったのだ……アパレル店員だらけで足の踏み場もない心霊スポットで。なので私は有能なスキルを持つ彼女を当然スカウトして友人、食客として我が社に迎え入れたのだ。無論、まだこの星に来る大分前の話だがな」
そして時が来たからいよいよ仕事をしてもらおう……というところか。
「因みにヨネは電子パッドとサービスでフライドポテトを持っているのでコミュニケーションをとろうと思えば筆談でいつでもとれる。なのでみな仲良くしてやってくれ」
と都が言っていると、ヨネが座ったまま次元の扉を小さく開いたのか、何もない虚空から電子パッドとサービスのフライドポテトらしき物を取り出していた。
――なるほど。あれが
というヨネの紹介が終わったところを見計らって私は気になった事を口にする。
「都。1つ訊きたいのだが、ヨネは貴様がこの星に来る前からの友人だったという事は、貴様が地球を征服しようとしているのは知っていて協力しているのだな?」
「無論だ。彼女はこの世界と2.5次元俳優にあまり良い印象を持っていないからな……。なので惑星の1つや2つは支配しちゃっても良い……という考えだ」
という都の発言にウンウン頷くヨネだが――
ま、魔王を倒すために召喚された勇者の内の1人……といってもヨネ自体は巻き込まれた一般人だが。まあ、とにかくその内の1人が魔王は倒したものの、結局その後に星1つ支配しようとしているのは滑稽だな。
だが、それはそれとして。
「なるほど。ヨネも納得しているならば良い。そして動機も我々ほど強くはないが、結局のところこの世界への『復讐』という事か」
「うむ。そうなるな……実際のところ彼女はもう元の世界に戻る手段は得ているのだが――元の世界にいつでも戻れるからこそ私の野望に付き合い、キッチリこの世界に復讐という名の嫌がらせをしてから帰りたいそうだ」
あぁ、その嫌がらせが地球を征服する……という事か。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます