第24話 S級

 躊躇なくF級の依頼を開いたものの――


 そろそろ都達もS級の依頼を一通り見終わる頃合いかもしれんしな……? 所詮はF級。F級の確認は1つで十分だろう。……と考え私は画面をスクロールした。


 F級


成功報酬:200円

依頼主:腐人警官

依頼名:ちくわ討伐

依頼内容:裏庭にちくわが勝手に生えてきて困っています。なんとかして下さい。


 知るか。自分でなんとかしろ腐女子くさってでも警察官なら。というか無鬼舞津むきぶつ残念ざんねんを呼んでこい。っとスマホの画面の文字にツッコミを入れても無駄か……。しかしまぁ、それはそれとしてこれは200円の依頼だな。納得した。


 ――と。私は周囲をチラ見し一つ頷く。

 良し。まだ全員依頼に目を通しているな。私も良い加減S級の依頼を見ておこう――と急ぎS級の依頼を開いた。


 S級


成功報酬:1000万円

依頼主:ギルド長

依頼名:ポーション求む

依頼内容:切断された腕や脚でさえも再生する。更には軽い病気も快復する薬であるポーション求む。


成功報酬:1億円

依頼主:ギルド長

依頼名:エリクサー求む

依頼内容:生きてさえいればどんな傷でも全快。あらゆる病気を治す万能薬。エリクサー求む。


成功報酬:5億円

依頼主:トムもトム

依頼名:トム求む

依頼内容:トム求む。どっからどう見てもトム。誰がどう見てもトム。まごう事なきトム……求む。但し生死は問わない。


成功報酬:100万円

依頼主:ギルド長

依頼名:薬草採取

依頼内容:薬草1個(約15センチメートル)100万円で買い取ります。随時募集。


 良し! 今あるS級の依頼は4つか……内容はともかくとして読み終えた。飛ばし読みだが読み終えたが――疑問だらけなのは間違いない。全員が読み終えていると判断してこちらから仕掛けてみよう。

「S級というのは随分と報酬に差があるのだな?」

 私がスマホの画面から視線を外し、全員の顔を一望しながらの質問に答えたのはリキで。

「ええ、そうなんです。S級ってピンキリで実際今ある依頼『薬草採取』『ポーション求む』『エリクサー求む』の3つは常にどこのギルドでもギルド長が出している依頼なんですけど、薬草採取がS級。ポーション求むが特S級。エリクサー求むが特上寿司って――公式では明言されてないですが冒険者はみんな言っています」

「いや何故急に寿司が出てくる?」

「え? 急にじゃないですよ? S級は元々寿司級の略ですから」

「なるほど」

 つまりスシ級、特S級、特上寿司という事か……と私が納得していると横からシコナ。

「因みに今の3つの依頼ですが。ポーション1個を作製するのに薬草が5個必要とされているでござる。そしてエリクサーを作製するには更にそのポーションが5個必要。つまりポーション求むとエリクサー求むは完全に薬草採取の上位互換の依頼で名実共に特S級、特上寿司と言って間違いないでござる」

 うむ。まぁ薬草、ポーション、エリクサーの有用性と怪我の多い仕事と考えればギルドとしてはいくつでも抱えておきたいだろうからな。だからどこのギルド長も常に依頼を出しているのだろう。


 となると。

「一応先に訊いておくが薬草は自生しているとして、5個集めた場合ポーションはどうやって作製するのだ? それとポーションを5個集めた場合のエリクサーは?」

 これにシコナは一つ頷き。

「ふむ。薬草を5個。ポーションを5個集めた場合は近くの薬局――マツモトキヨシやウエルシアに持っていけばお抱えの錬金術師殿が手数料だけでポーションやエリクサーに精製してくれるでござる」

「いや、それなら薬局で買い取れ。そして売れ」

「ははは。まあダイコン殿の意見も尤もですが、ポーションやエリクサーを精製出来る錬金術師殿は薬局以外にもスシローやくら寿司にも居りますからな?」

 何故回転寿司屋に錬金術師が居る! スシ級の依頼だからか? いや理由になっていない! それに回転寿司屋に居るのは錬金術師ではなく回転寿司師だろう! とゆーかそれならば絶対ギルドにお抱えの錬金術師が居るはず…………いや。そうか、だからこそバラで買い叩いているのか。そして上位に精製して持ってきた場合には手間が省けるから色を付けて買い取っている……という訳かなるほど。


 ――と。


「ちょっと良いか? 気になったのだが――薬草は約15センチで1個となっているがこれはどういう事なのだ? 葉の大きさか? 普通はポーションやエリクサーの素となり、薬草自体も薬と考えれば1個の規定量は長さではなく重さ……グラムだと思うのだが?」

 という質問を飛ばしてきたのは都だった。

 うむ。実は私も少々そこに引っ掛かっていたので非常に助かる質問だ。……と私が満足して頷いていると答えたのはリキ。

「ああ、それはですね。薬草って基本みな同じ太さに成長するんですよ。だから長さが15センチまで成長していれば1個としてカウント出来る、規定の重さに到達してるって事なんです」

 ん? 同じ太さ……茎の話か?

「同じ太さ? 一体どんな形をしているのだ?」

「えっと、見た目は完全にちくわです。で、たまに裏庭とかに勝手に生えたりしますね」

 それはF級の依頼で見た気がするぞっ!! もしやその辺の制定はガバガバなのかっ!? いや、まあ……とりあえず後でS級依頼をこなす時についでに回収しておこう。間違っていたとしてもただのちくわだし200円にはなるしな。

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