第23話 依頼

 それを踏まえ私は依頼に目を通す前に質問をしてみる。

「先に参考までに訊いておきたいのだが――。どういう内容の依頼がどのくらいのランクに設定されているのだ?」

 するとリキとシコナは揃って小首を傾げ虚空を眺めるが、答えたのはリキで。

「え~と。そうですね……基準になるかわかりませんが『ドラゴン討伐』でランクBくらいですね」

 な、なんだとッ! 現代日本でドラゴン退治は置いといてドラゴン退治でBランクだと!?

「ちょっと待て。じゃあSランクの依頼はどんな内容になるのだ?」

「Sランクですか? Sランクの依頼で代表的と言えばやっぱり『薬草採取』ですね」

「や、薬草採取で最高難易度なのかっ?」

「はい。まあ、どんな傷でも一定量は回復してしまう万能傷薬と呼べる薬草は現代日本ではほっっっとんど手に入らないのでS級です。しかも手に入れるまでに確実にドラゴンやベヒモスなどとも戦わなければならないので文句なしのS級です」

 なるほどそういう理屈か。確かに異世界ファンタジー物で良くある「難易度低いから薬草採取選んだらとんでもない凶悪なモンスターに襲われる」は定番だからな、そう考えれば薬草採取が低難易度の方がおかしい……モンスターが蔓延る世界で街の外に出る依頼が難易度低いという事自体が間違っているという事か。

 と納得した私はリキやシコナにわかるように頷き。

「わかった参考になった。あとは自分の目で確かめてみるとしよう」

 と言って私はスマホに視線を落とした。


 良し。ではS級の依頼を探すとして――恐らくS級は都達が探してくれているだろうから敢えて私は別の難易度をチェックしてよう。まずはどんなものか中間難易度のC級辺りをチェックしてみるか……。と私はC級の依頼を開いてみる事にした。


 C級


成功報酬:2万円

依頼主:謎の日本人ロドリゲス

依頼名:枕が欲しい

依頼内容:屋根裏にドラゴンが棲みつき、夜中うるさくて安眠が出来ません。なので安眠出来る枕を所望します。


 …………まあ、この後にも他に住所や連絡先等も書いてあるが今はこれ以上読む必要はないだろう。

 そして屋根裏にドラゴンが居てはうるさくて眠れんのは確かだ。安眠出来る良い枕を欲しがるのは必然だろう。


 さて。C級の依頼がどんなものなのかなんとなく理解はしたが――念のためもう1つくらい見ておくか……。


成功報酬:2万5千円

依頼主:磯野かつうお

依頼名:布団が欲しい

依頼内容:庭にフェンリルが出没してウチのヘラクレス(チワワ)のエサを盗み食いして困っています。なので安眠出来る心地良い布団を所望します。


 なるほど。フェンリルが飼い犬のエサを食べてしまうとエサ代がかさんで不安になり、夜しか眠れなくなるだろうからな……。その時に心地良い布団で眠りたい気持ちは良くわかる。


 うむ。まあ、パッと見だがC級の報酬は2万円前後くらいでドラゴンやフェンリルを直接退治するような依頼はないみたいだな? ――で、確かB級になってくるとドラゴン討伐クラスの依頼が出てくるという話……。ならばB級の依頼も1つくらい見ておくか。


 B級


成功報酬:20万円

依頼主:歯磨き

依頼名:暴走ベヒモス討伐

依頼内容:信号無視、スピード違反、他車両への煽り走行、高速道路の逆走、酒気帯び走行、スマホをいじりながらの走行、駐車違反を繰り返す暴走ベヒモスを発見。現在、警察と自衛隊が追っていますが冒険者にも応援を要請する。


 う~む。牛や馬は軽車両扱いされるがベヒモスは完全に大型車両扱いのようだな? そしてB級ともなるとベヒモス討伐も出てくるという事か。しかし20万……いや、まあ警察や自衛隊も出動しての討伐ではそんなものなのか? というかそうなるとこの「歯磨き娘」は警察か自衛隊関係者という事なのかこの名前で?


 ……等と考えているとB級も中々に気になるな? カレーライスとライスカレーの違いくらい気になるので、1つで良いと思ったがもう1つくらい見ておくか。


成功報酬:30万円

依頼主:メン・ヘラ

依頼名:鬼討伐

依頼内容:信号無視、スマホをいじりながらの走行、駐車違反、強盗、殺人、放火、誘拐、マヨネーズの万引きを繰り返す鬼「無鬼舞津むきぶつ 残念ざんねん」がちくわを食い逃げしたので捕まえて欲しい。但し生死は問わない。


 なるほど。ライスにカレーが掛かって出てくるのがライスカレーで、カレーとライスが別々の容器で出てくるのがカレーライスだったか……。

 そして「マヨネーズの万引き」ではなくて「窃盗」の一言で良いだろう? 何故そこだけわざわざマヨネーズと細かく説明するのだ? それにちくわの食い逃げ。これも食い逃げだけで良いはず。これだと無鬼舞津残念が一見凶悪そうに見えるが実は小物説が浮上するぞ。


 ――と。それはそれとしてB級ももう十分だろう。そろそろ私もS級の依頼に目を通すか。……と言いたいところだがC級B級と見て、最後に絶対S級を見るとなると――どうしても最低ランクのF級が気になる、見ておきたいというのが人情という物だ。なので私は躊躇なくS級ではなくF級へと指を動かし画面をタップするのであった。

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