第10話 メイン活動
忍転道という名を聞いて誰が悪の秘密結社だと想像出来るのだろうか……という疑問を残しつつも我が社の社名が忍転道に決まり、いよいよもって私達の活動も本格的に始動しようか……という時だった。
今日も今日とて都に呼び出しをされた私だが――。
「なんだ……。今日は私だけか?」
ここは前回社名を決めた、例の会議室のような場所である。しかし今日はあの丸テーブルに腰を下ろしているのは都だけだった。なので私もとりあえず適当な席に座ろうとしていると答えたのは当然都で。
「あぁそうだ。というより予め言っておこう、これからはこうなるケースが多いと思ってくれ。何故なら私の構想では私と君が司令塔でリキ、シコナ、ヨネの3人は実行部隊だからだ。もっと正確に言えば、君が司令塔で私はあくまで君の弄した策や案を承認する――実行するか否かを最終的に決定するメスゴリラ。そしてリキ、シコナ、ヨネがその決定した策を現場で実行するメスブタ部隊だ」
「いや、ちょっと待ってくれ。話の内容は理解したがそのメスゴリラとメスブタ部隊の『メス』の部分は必要なのか?」
別にゴリラとブタ部隊だけで十分だと私は思うのだが?
しかし都はアゴに手を当て小首を捻り。
「ん? 必要なかったか? 私としては年金問題や国境問題などに配慮して付けてみたのだが――要らない物なのか?」
「では逆に訊くが。この場に私と貴様しかいないのに、なんの配慮が必要だと?」
「ああ、言われてみればそうだな……」
というようなオープニングトークを終え、席に着いた私は姿勢も新たに都に質問した。
「それで? 実動部隊を抜きにして今日はなんの話をしようというのだ?」
「うむ。これからの我々の方針――。つまり地球征服活動におけるメインとなる活動を決めたい」
ほぅ? 確かに司令塔として最初やっておくべき仕事と言えるな? となると。
「ならば先に訊いておこう。都、貴様は何かやりたい事はあるのか? 結局のところ決定権を持っているのは貴様だ。ならば初めから貴様の意思を尊重した方がスムーズだろう?」
という私の言葉に都は静かに首を左右に振り。
「いや、特にはないな。私は最終的に地球の所有権さえ手に入れば過程は問わない。なのでリキやシコナの復讐、半裸のおじさんが猛獣と戦う動画の違法アップロードを優先してもらっても全然構わんぞ?」
……?
半裸のおじさんが猛獣と戦う動画……つまり半裸のおじさんが全裸のおじさんと戦う動画という事か。確かに野生を解放したという意味では全裸のおじさんは猛獣と言える。しかし違法アップロード……か。
「良し。ではユーチューブに動画を上げるというのはどうだ? ユーチューブの企画というかタイトルっぽく言うのであれば『地球征服を目論んだ結果』や『地球征服を目論んだ奴の末路』っといった感じの動画だな。まあ、詰まるところメイン活動としてはユーチューバーになるという事だ」
この私の意見に都はアゴを2、3回撫でると。
「ユーチューバーか……悪くはない。さしずめ私は半魚人に擬態しているからバーチャル・ユーチューバーと言えるな。そう――生身のままで撮影したとしてもVチューバーになるリアルVチューバーだ」
リアルなのかバーチャルなのか幻覚なのかハッキリしないヤツだな。だがまあいい。
「貴様が気に入ったのであれば、我々はユーチューバーとして活動していくとして――。まあ、最終的に目指すはチャンネル登録者数80億だな」
「80億?」
私の言葉に都が眉間にしわを寄せるが――すぐに意図に気が付いたか。
「あぁ、おおよその地球の人口か。なるほど……つまり雑な計算だが80億人がチャンネル登録した=地球征服完了と考えて良いという訳か」
「そういう事だ。まあ、貴様も知っていると思うがユーチューブはチャンネル登録者数が10万人に到達すると銀の盾。100万人に到達すると金の盾が貰える訳だが、80億人に到達すれば地球が貰えるという訳だ」
「なるほど。それはわかり易い指標になるな。因みにチャンネル登録者数が10万3人に到達すると伝説の盾。100万5人に到達すると伝説のビーム
私は一つ頷き。
「ああ、その通りだ。そして最終目標直前である登録者数79億人到達で貰えるのは半チャーハン2つだそうだ」
「ギョーザは?」
「つかない」
私の即答に都はヤレヤレといった感じで両肩を竦めると鼻から息を抜き。
「ふぅ……そいつは残念だ。だがチャーハン1つではなく敢えてのメスチャーハン2つというのはありがたいな」
「メスチャーハンではない半チャーハン2つだ。そして先程も言ったがメスは必要ないだろう?」
「そうなのか? 私としては雨男や雪男に配慮したつもりなのだが?」
「その配慮も必要ないと言っただろう?」
だいたい雨男は人間だが
……というようなトークを経て。我らが忍転道幹部のメイン活動は動画投稿という事に決まった。
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