第11話 開封動画
私達のメイン活動が決まった直後――。そのままの流れで私は都に提案をした。
「良し。では早速初投稿用の動画の企画を練るとするか」
「そうだな。メイン活動である動画投稿……のメインとなるような動画を最初に投稿しておきたいものだな?」
なるほど。確かに最初に意思表示、或いは決意表明といった内容の動画を投稿しておくのは大事かもしれんな?
「ならばどうする? 再び先に訊くが何かやりたい事はあるか?」
私の質問に都は同じリアクション。再び静かに首を左右に振り。
「さっきまで何をやるかすら決め兼ねていた私に、やりたい企画があると思うか?」
「……だろうな。だとは思ったが一応訊いたまでだ。となると何か考えねばならないが、とりあえず参考までにユーチューブで良くあるジャンルや人気企画などを考えてみるか?」
これに都は両腕を組み。独り言のように呟く。
「ユーチューブの企画で良くある……か。歌ってみたや踊ってみたなどだろうか?」
「……まあ、確立された1ジャンルである事は間違いない。しかし我々がやるには問題ありだな」
「というと?」
「うむ。これらの動画がバズるには当然ある程度のクオリティが必要になる。しかし我々はド素人……恐らくだがそのまま動画をアップしてもヘタクソと罵られ炎上するか、もしくは全く再生数が伸びないで終わるだろう」
ここで都は虚空を見上げてアゴを撫でる。
「ふ~む。炎上は一向に構わないが再生数が伸びないのは困るな? 我々は炎上目的や迷惑系ユーチューバーのような犯罪者予備軍や実際に犯罪者になってしまったユーチューバーではなく、ただの犯罪者がユーチューブをやってる訳だからな? 寧ろ犯罪のプロである我々がタイトル詐欺や狙わずに動画を炎上させられないのは大問題だ」
「だろう? となるとだ……クオリティの高い歌ってみたや踊ってみたを作る場合。どうしてもリキのバフ……歌が上手くなるバフや踊りが上手くなるバフが必要になってくる。しかしこれらを使用した場合バフが強力過ぎてプロが裸足で逃げ出すレベルになってしまい炎上どころではない……違うか?」
「あ~なるほど確かにな。実際、リキの『踊り』が上手くなるバフは歌唱力のステータスが人間の限界値を突破し、そして『歌』が上手くなるバフは本来人間の体が曲がってはいけない方向に曲がって踊れるようになりつつ、ある程度の重力も操作出来ようになるので物理法則を無視した踊りを可能とするバフだったな?」
私は深く一つ頷き。
「その通りだ。つまりそこまでいってしまうとただの上手いだけの歌ってみた、踊ってみた動画になってしまうのでそれはそれで我々の目的というか主旨とは離れてしまう動画になるという事だ」
「となると他にはどんな動画が良いだろうか?」
都の質問に私は首を捻り。
「う~む。開封動画などはどうだ? ユーチューブでは福袋やトレーディングカード、あとはソシャゲのガチャ動画もまぁこれに該当すると言えるだろう」
「ほぅ? 開封動画か……これはイケそうだな? 我々の場合オリジナリティーを出すために邪神の封印を開封する動画とかどうだろうか?」
「悪くはない。リキ、シコナ、ヨネの実動部隊を世界中に飛ばし邪神が封印されているアイテムをかき集めさせ、それを我々が開封する動画……これはバズるな!!」
当然偽物の方が多いだろうが当たりが出るまでやるのも良いだろう。
……と私が考えていると都も同じような考えだったか。
「ダイコンよ。こういうのはどうだ? 『邪神開封動画
ほぅ? 帰れま10を元にしたユーチューブの企画「何々するまで帰れません」と開封動画の組み合わせか……悪くはないが今の発言で引っかかった事がある。
「都よ。企画としては賛成だ。だがもし本当にSRやURの邪神を当ててしまった場合。SRやURだけあって地球を簡単に滅ぼしてしまうような邪神である可能性が高い。そうなると地球の支配権が欲しい貴様にとっては邪魔な存在、場合によっては我々が全力で戦わねばならない相手になるが良いのか?」
しかし私の言葉に都は不思議そうに小首を傾げ。
「別に問題ないだろう? 邪神開封をする時にヨネさえいれば、ヨネの
確かに完璧な流れだ。ヨネならば他の惑星で魔王を封印した実績もあるしな。しかも今回はリキも呼んでおいて、事前にヨネにバフを掛けておけばその一連の流れを1フレーム以下でこなせるはずだ。
なので私は目礼を一つし。
「なるほど。そこまで織り込み済みなら私は文句はない。ならばメイン動画にするかはともかく、まずは邪神開封動画は撮影する事にしよう」
「うむ」
と頷く都。
こうして我々は邪神開封動画を撮影する事になるが――
これは後日談だが。初っ端速攻でUR邪神を引き当てた我々は……ヨネが1フレーム未満で邪神を封印。なので動画では余りに速く、一般人には何をやっているのか全くわからない意味不明な動画になったが構わずネットに上げたところ無事炎上した。
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