第31話  VSおかず戦隊ごはんですよ

 果麺ライダーをボッコボコにし、パンストセイントを戦国坂四十六に任せる事にした私達はいよいよ大本命であるおかず戦隊ごはんですよと戦う事になった。

 ニチアサ組でも最強格――つまり日本最強。いや、地球最強にして友達以上恋人未満。更に言えば幻覚が見える不思議な白い粉の密売人以上力士が本気でうんこした時の量未満と言ったら流石に過言なヒーローだが、要は現地球に残っているヒーローからして最大最強最後の敵である事は間違いないだろう。

 そして向こうは5人組の戦隊ヒーロー。なので今回ばかりはリキ、シコナ、ヨネのいつもの3人に私と都が加わり5対5で戦う事になった。


 ――が。私は後悔していた。


 理由は簡単だ。どういう流れでそうなったか詳しく覚えていないが、私の相手はレッドで……この男がデタラメに強い! 今までのヒーロー達とは明らかに次元が違う。そう――今までの雑魚をおっぱいで例えるならAカップだが、このレッドをカレーで例えるなら福神漬け……それぐらい別次元の存在だった。

 今、我々は会社の敷地内で決闘をしているのだが……元テーマパークなだけあって第三者から見ればスーパー戦隊ヒーローショーのように見えなくもないだろう。だがこいつの存在はそんな生温いものではない……というかまだ変身すらしていない。リキのバフでガッチガッチに強化した私が手も足も出なければ向こうはまだ変身を残している……かなり絶望的な状況だ。

 まあ、戦隊ヒーローのレッドといえばリーダーにして最強なのは間違いない。ならば私はひたすら時間を稼いで、都やシコナ達が他の奴を倒して応援に来てくれるまで粘る……これしか活路はないだろう。


 ……と決めた私は時間稼ぎのために両肩で息をしたまま発する。

「貴様……名前はなんという? 何故変身をしない?」

 するとレッドは頭に疑問を浮かべながら小首を捻り。

「俺か? 名は『うめぼし』だ」

 うめぼし……実は知っている。というか流石にネットで調べればすぐにわかる事はグレーから全て聞いて知っている。これはあくまで時間稼ぎの質問。

「苗字か? シモの名は?」

 私が再び問えば。

「うめぼしでフルネームだ。そうだな……知らないならば教えておいてやろう。俺は日本人ではない、というか異世界で魔王を倒し、その褒美でこの世界にバカンスしに行く事を神に許された元勇者だ。なので端的に言えば俺は異世界人、だからうめぼしでフルネーム……。因みにこの世界には徒歩で来た」

「バカなっ! 異世界転移を徒歩でしただとっ!」

 こ、これは初耳だぞ! 普通は強制的に召喚されたり、召喚に巻き込まれたりだろう? 徒歩で異世界転移など非常識にも程があるぞ!

 っと私が驚いていると。

「そんなに驚く事か? ウチのブルーは以前異世界で魔王をしていて、勇者に倒される際に『次は良い奴に生まれ変われよ』と言われたので、本当に良い奴に生まれ変わるためにこの世界に転生してきたと言っていたが、あいつは背泳ぎで異世界転生してきたと言っていたぞ?」

 トラックに轢かれたり神のうっかりミスで転生ではなく背泳ぎで異世界転生だとっ!? バカなのかこいつらはっ?

「因みに普通の地面を背泳ぎしてきたそうだ」

 あ、本物のバカだったか。

 っと私が納得しているとレッドは続ける。

「まあそんなワケでな……俺は変身しなくても圧倒的に強いのだが、逆に変身するとバトルスーツの力が変に作用して魔法が撃てなくなり、更にはスーツがピチピチで動き難く体術のパフォーマンスも落ちる。だから変身しないのだ」

 それも知っている。つまりこの姿の方が完全体という事……と私は思っていたが。

「だが安心しろ。俺はまだ30%程度の力しか出していない。なのである意味まだ変身を残していると言えなくもない」

 なっ!? もしそれがハッタリではなく事実だったら非常にマズイぞ……今の私はリキのバフで2000%くらいの力を発揮しているのに向こうは30%だと……? いや、だが確かこいつにはこいつより遥かに強い女子力の高い軍人の守護霊が憑いていて、そいつがスタンドとして出てきてからが本気中の本気だ……みたいな事をうっすら聞いた覚えがある。


 私が何かの冗談だと言ってくれ……自前のメイドを引き連れてメイド喫茶に行くぐらいの冗談だと言ってくれと思いながら尻に汗を垂らしていると。

「よし。ではそろそろ……40%くらいの力を見せてやろう。俺の必殺技『ファイナル・デッド・マギカ・インパクト・オーバーヒート』を受けてみるがいい」

 と言ってレッドが右手を引いて腰を落とし構えた。


 ――だけだった。


 だけだったが……な、なんだこの凄まじい闘気とでもいうのか? 奴を中心に空気が震えだす……いや、空気だけではなく地面も揺れている。更には熱量……震えた空気が頬とアホ毛をヒリつかせる! ただ構えているだけでこの圧力……確実にヤバイ技が来る!

 ……と。思った時には私は既に空中にブッ飛ばされていた。


「ファイナル・デッド・マギカ・インパクト・オーバーヒィィイイトッ!!」


 後から遅れてレッドの叫び声が聞こえてくる……? 奴は……音を置き去りにしていたっ!?


 無様に地面に激突する私。私はそのまま声も上げずにのた打ち回る。


 な、何も見えなかったが恐らく私はどてっぱらにショートアッパーを喰らったと思われる。無論ただのショートアッパーではなく、あくまで打ち方がショートアッパーなだけで必殺技を喰らった事に変わりない。……変わりないがこれで40%だとっ! 口から内臓が飛び出したかと思ったぞ……というか戦う前に食べたファイナル・デッド・プリン・ア・ラ・モードを殆どそのまま吐き出してしまったぞクソッ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る