第30話 VS果麺ライダー
「正直なところ――。ごはんですよのグレーがアルバイトにくるのは予想外……劇団ひとりがふたり居たくらい予想外の出来事だった」と都は言っていたが、これによって我々の計画に狂いが生じるような事はなく。その後も順調に日本のヒーロー達――例えば敵と戦う時にジャージに着替える「ジャージマンの件」や、元々水兵セーラーなのでセーラー服を着ているクセに何故か敵と戦う時は女子高のセーラー服に着替えるおっさん「セーラームゥン」といった日本のヒーロー達を秘密裏に抹殺していった。
そしていよいよ――残すところはニチアサ組だけとなり。まずは果麺ライダーを抹殺する時がやってきた。
「今回のターゲットが果麺ライダーになった理由だが、まずパンストセイントは同じアイドルである戦国坂四十六に任せる事にし――というより、アイドル天下統一を果たすには戦国坂四十六がパンストセイントを倒さなければ、世間は誰も戦国坂が日本一……いや、世界一の完璧で究極のアイドル様とは認めてくれないだろう。但し――誰もが目を奪われていく、君は
そしてその果麺ライダーだが、私個人としてはもっと早くに倒したかった。何故ならこのライダー……ウチのモヒカン頭で裸体に革ジャンを着て、バギーに乗って出社している一般社員達をしょっちゅう粛正していたからである。ウチの世紀末ヒャッハー社員達は地球征服のために通行人から水や食料を略奪する、あとは汚物を消毒する事だけが仕事以外で認められている権利なのだが、その権利を行使していると咎めてきたのが果麺ライダーだったのだ。
なので1度、私が直接クレームを入れにいったら「北斗の文句はオレに言え」と何故かキレ気味に言われた事がある。いやだから文句を言っているのだが? というか何を北斗神拳伝承者気取りで言っているのか? と当時は思ったものだが――
――その経験が今生きた。
当たり前だが北斗神拳は一子相伝なので、この胸に七つの傷がありそうな男が一見伝承者ッポイが伝承者でない事は間違いない。なにせこいつは名前が「安室
――という訳で私と都は今。モニター室でリキ、シコナ、ヨネの3人がライダーと戦っているのを見ている訳だが。
「……3対1。まあ実際ヨネは戦っていないので実質2対1だがそれでも互角。いや、リキのバフで北斗神拳を封じていなければ既に負けていたかもしれない……それぐらいにライダーの体術は優れている」
と呟いたのは都だった。これに私は一つ頷き。
「確かに。奴の北斗神拳以外の技……例えば『ライダーチョップ』。一見するとただのチョップだがそれは幻術で、実際には誰が履いたかわからない地域密着型のパンツをヌンチャクのように振り回してブン殴るという凶悪無比な技。リキやシコナが苦戦するのも頷ける」
「ああ、だがそれだけじゃない……」
と都が続く。
「他にも『ライダーキック』。一見すると果麺ライダーの必殺技であるただのライダーキックのようだが、実際には核爆弾でブン殴るという幻術を見せる凶悪無比な技」
「うむ。それと最も凶悪な技は『ライダー核爆弾』。一見すると核爆弾でブン殴っているだけに見えるがそれは幻術で、実際には隣のおじさんが核爆弾でブン殴っているという極悪無比な技」
と、私が言っていると都。
「ここまで高い身体能力を活かした幻術は誰でも出来る訳ではない。流石はニチアサ組の一角を担うヒーローといったところか……?」
確かに。私もここまでの体術オンリーの幻術は見た事がない。だが――
「だが、それでも我々の敵ではない。果麺ライダーの命であるベルトとバイクは既に呪いのベルトと呪いのケンタウロスに取り替えた……もう倒してしまっても構わないだろう」
「だな」
都の合意の頷きを視界の隅で捉えながら、私はマイクに向かい指示を飛ばす。
「リキ。もう十分だ。いつでも倒して構わんぞ」
『了解です』
私の指示が届いた途端。リキがバフを発動させた……んだと思われる。実際リキはレベルが高過ぎて考えただけでバフが発動出来るので説明がなければどんなバフを発動させたのかは瞬時にはわからないが、明らかにシコナの動きが変わったので恐らくパンツと核爆弾で殴られると身体能力が爆発的に高くなるバフを発動させたのだと思われる。
まあ要するにリキ達はここまで北斗神拳を封じ込めるだけのバフしかかけておらず、それで苦戦していたレベルなので攻勢に出るためのバフを解禁すればライダーなど相手ではない。……と私と都は予想していた訳だが実際その通りとなり、我々はニチアサ組の一翼。果麺ライダーを撃破する事に成功した。
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