第32話 敗走?
――と。
「ほぅ? こいつは驚いたな? 俺の
レッドだった。
私は未だ喋れずに地面を転がっているが……どういう理屈で寿命が延びるのだ? どう考えたって3日は寿命が縮んだぞ。
「しかしまあ丁度良かったな。実は最近このF・D・M・I・OHの更に上をいく必殺技を開発したところでな? どれくらいの威力かお前に試し撃ちさせてもらおう」
止めろ。今度こそ死ぬ。今延びた10年の寿命が早速消し飛ぶだろうにっ!
「だが安心しろ。俺の見込みだともし耐えられればお前の祖父の寿命が10年延びる」
だからどういう原理でその現象が起きる? というか祖父はとっくに亡くなっているから私はただの殴られ損ではないかっ!
と私が無言の訴えをしていると。
「ではそろそろ受けてみるがいい。俺の新必殺技ファイナル・デッド・マギカ・インパクト・オーバーヒート・ジ……」
レッドがここまで言いかけた時だ。
「お待ちをレッド殿」
突然湧いた声にレッドだけでなく、なんとか私も視線を這わせれば――そこに居たのはごはんですよのブルーだった。そしてその両手にはぐったりとしていてピクリとも動かない都が抱えられている。
それをレッドも見たか。
「ブルーか。……それはお前が戦っていた都こんぶだな? 殺したのか?」
「いえいえ。私の必殺技である『尻の呼吸
転失気? 確か――オナラの別名義だったな? つまり「尻の呼吸 九十九の型 転失気」などと大仰な言い方をしているが結局オナラが直撃したという事だろう? オナラだけにクソみたいな話だな……しかし何故異世界の魔王だった男が古典落語の演目である転失気を知っているのかは謎だが、都が殺された訳じゃなく失神しているだけならそれは良かった。
――で。
「ほう? さすがはブルー。
レッドが問いかけるがそれは私も気になっていたところだ。そしてこのままずっと会話をしていてくれると助かるのだが……?
「それですが――実はピンク殿、グレー殿、博士殿は無事でこそありますが既に敗れ、敵の手に渡り人質となっています。というより、敵は私とレッド殿の戦いぶりを見て急遽ピンク殿達を人質にとった……と言った方が正確なようですな?」
「なるほど。だからお前も都こんぶを抱えてここに来たのか。まあ、奴等からすれば総大将である都こんぶとその右腕の大根乱が討たれたとなれば敗けだからな。咄嗟に人質を取って2人を救い出そうという訳か」
「そういう事でしょうな? どうやら敵にはその咄嗟の判断が出来る――爽やかな大草原で佃煮の妖精と戯れる諸葛亮孔明並みに頭のキレる参謀がいるようですな?」
……クソ。本来ならばそれは私の役目なのだが、まさかの人質の方になってしまうとは情けない。今の私は佃煮を高級フランス料理と勘違いしていた諸葛亮孔明並みに惨めだ。
と考えているとレッド。
「なるほど話はわかった。つまりピンク達3人を取り返すならこいつも生きていた方が良い……だから俺の必殺技を止めたと」
「左様。こちらは人数が1人少ないですが、討たれたら終わりの総大将とその右腕ですからな……2対3の交換でもおつりがくるのでは……と?」
「確かに」
とレッドが頷いているところに。
「その話……私が確約しよう」
これを言ったのは……なんとか絞り出した私だ。
『ん?』
レッドとブルーが同時に頭に疑問符を浮かべるが。
「その人質交換の話を私が確約すると言ったのだ。もし私と都を見逃してくれるのならば、貴様等の言うおつりを出しても構わんぞ……」
未だ全然回復していない私だが、かろうじて身は起こせる程度にはなった。なので上半身だけを起こしていると。
「つりか……因みにどんなだ?」
レッドが喰い付いてきた。これはなんとかなりそうだ。
「そうだな? 中古の勝負パンツとかはどうだ?」
『中古っ!?』
レッドとブルーが見事にハモる。
「おいおい。勝負パンツってのは人それぞれ……他人の勝負パンツなんて俺が履いても意味ないだろう?」
そこかっ!? お前が驚いたのはそこなのかレッドよ! やっぱこいつらバカだな……というか何故貴様が履くの前提なのだ。だが――
「だが安心しろ。こいつは勝負パンツというだけあって実際に履くと攻撃力が上がる。更に言えばフィット感も良く素早さも上がるし、通気性の良さから頭がスッキリして賢さも上がるが防御力だけは上がらない。因みに色は赤、白、黒、ヒョウ柄の4色を揃えているが何色がいい?」
「中古のパンツの分際で4色揃えてるとは随分と品揃えが良いな? まあいい、ヒョウ柄で頼む」
レッドの質問に私は一つ頷き。
「わかった。今度クール宅急便で送ろう」
……とこうして。人質交換の交渉はなんとか上手く纏まり、私と都は事なきを得た。
しかしごはんですよのレッドは果麺ライダーとは比にならない強さだった。これは次回までに対策を練る必要がある……なのでとりあえずごはんですよは後回しにして、我々は先に戦国坂を使ってパンストセイントを叩く事にした。
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