第33話  最終決戦どころではない?

 突然だが地球滅亡まで残り約10分となっていた。


 どうしてこんな事になっているかと言えば――


 ごはんですよとの戦いは人質交換で事なきを得た私と都だったが、私達はそのまま翌週にはパンストセイント達に戦いを挑んだ。……と言っても私と都はボコボコにされた後だったので、パンストセイント達には当初の予定通り戦国坂をぶつけたが――やはり戦国坂にパンストセイント達の相手は荷が重かったらしく……特にスク水兄弟には双子ならではのソロプレイに翻弄され大苦戦を強いられていたが、最終的にリキを幻の47人目として助っ人に出し、リキのバフでムッキムキの超盛り盛り……人差し指1本でリア充を爆発させられる、更に中指も使えばその爆発したリア充を復活させられるくらいバフを盛り盛りにしたのでなんとか逆転勝ちに成功したのであった。


 なので――ニチアサ組の2組目も撃破し、当然ながら地球征服最後の砦。おかず戦隊ごはんですよと再び戦う時がやってきた。

 ――ので。こうしてウチの元テーマパークにまた全員揃い、今度こそ対戦相手を適性がある組み合わせにして勝ちに行こうか……としている時にその事件が起きた。


「みんな。ちょっと戦ってる場合じゃないかも……今から約20分後くらいに、地球が消滅する程の巨大隕石並みの冷凍マグロが地球に刺さりに来る」


 と。突然なんの前触れもなく突拍子もない事を言い出したのはごはんですよのマスコット――。良く見ても良く見なくても良くわからないフェレット的な小動物……漬物で言えばジョニーが漬けたぬか漬け的な小動物っぽいマスコットだった。


 はっきり言って敵から突然そんな事を言われても信じられる訳がない。「真実はいつもふたつかみっつ!」とコナンが言い出して誰が信用するかという話だ。

 ――という話だったが。

「ホラ、あれ」

 空を眺めて呟くマスコット。つられて全員がそちらを見れば――


 ……た、確かに。こんな真っ昼間の空に恒星のような――? かなりの光を放つ物体が肉眼で見える。しかも非常にゆっくりだが輝きが大きくなっている……つまりこちらに近付いてきていると考えられるが?

「なっ! バカなっ!?」

 我々全員が空を見上げている中、大声を上げたのはレッドだった。

「本マグロじゃなくてインドマグロだとっ!?」

「そこどうでもよくないっ?」

 透かさずツッコミを入れているピンクだが。わかり易く言うと本マグロはクロマグロの事で、インドマグロとはミナミマグロの事である。それをこの距離で見分けるとは……レッドの奴はやはり相当の怪物かマグロマエストロである事は間違いない。

 しかし実際にそこはどうでもよかったらしく、レッドはこちらに視線を向け。

「おい、忍転道。悪いが勝負は一旦お預けだ。俺達はお前達の事より先にあっちをなんとかしなくてはならないからな」

 と巨大冷凍マグロをアゴで指すレッド。――だが。

「舐められたものだ……」

 これを言ったのは私だ。

「貴様等は何か勘違いをしているな……? 我々の目的は地球を征服する事。その地球が本マグロならまだしも、インドマグロに消滅させられる訳にはいかん」

「だからソレはどうでもよくないっ? 地球のピンチには変わらないじゃん!」

 ピンクがわざわざこっちにもツッコミを入れてくるが、レッドは冷凍マグロを指差し。

「それはつまり……お前達はあのインドマグロが本マグロに変われば地球が滅んでも良い訳だな?」

「そういう事だ」

 私はゆっくりと頷いた。

「そーゆー事なのっ! 違うでしょ! ここは敵味方一丸となってあのマグロを迎撃しようって流れになる場面でしょっ!?」

 おっとそうなのかピンク? 別に私はそんな必要はないと思っているのだが……あ、いや?


 ――と。

「私からも良いか?」

 横から入ってきたのは都だった。

「まあダイコンの補足になるが――『おかず戦隊ごはんですよ』よ。君達はこの星を宇宙そとから見た事はあるか?」

 都の台詞にごはんですよ達が顔を見合わせ、代表して口を開いたのはピンクだった。

「テレビとかでは見た事あるけど……自分達の目で見た事はないです」

「そうか。なら1度見てみると良い。他の星とは比べ物にならないくらい美しいぞ? 青と白のコントラストはまるで宝石のよう……だから私はこの星が欲しくなったのだ。なので消滅されるのは困るし、実際のところ所有権さえ手に入れば地球に住む人間達をそこまでどうこうするつもりはない。まあ、反抗したりバレンタインデーにたくあんを送ったりしなければな」

「なるほど。バレンタインデーにたくあんか……ならば根っからの悪党という訳でもないという事か。実際お前達は他のヒーローを無力化こそすれ抹殺まではしていないからな……そういう理由だったのか。ならば、とりあえずお前達もあの冷凍マグロをどうにかしたい……という事で良いのだな?」

 うむ。どうやらレッドも理解してくれたようだな。

「ああ、そういう事だ」

 私は徐に頷いた。


 ――という事で地球滅亡まで残り約10分。我々とごはんですよは呉越同舟――地球を滅亡させる冷凍マグロを迎撃する事になった。

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