第35話 集結

「――ならばオレも手を貸そう」


 突然のその声に全員がそちらに振り返る。

「お、お前は!」

「果麺ライダーさんっ!」

 レッドとピンクが声を上げるが――確かにそこに居たのは以前リキ達が倒したニチアサ組の1人。果麺ライダーその人だった。

「来てくれたのかライダー」

 と握手を求めるレッドに。

「あぁ、病院で寝ている場合ではないからな」

 とレッドの手を握り返すライダー。

「うむ。ライダーが来てくれたのは心強い。だが、まだまだ人手は足りないぞ……」

 と小豆が洩らしていると。


『私達もいます!』


 今度は別の角度。そこに居たのは……

「パンストセイントちゃん! 来てくれたんだっ!」

「モチロンです!」

 そう――ピンクの声に応えたのはニチアサ組の残り1組。パンストセイントの5人だった。――と。


『俺達もいるぜっ!』


 声は上空から降ってきた。全員が空を見上げる。

「あ、あれはマジンガ一乙いちおつにゲッタ一口ひとくちボ。それに……他人!」

 誤解のないように言っておくと都の言っているこの他人というのは本当に他人の事ではなくウルトラマンの「ウルトラの他人」の事である。つまり上空には2体の巨大ロボと巨大ヒーローがこのピンチに駆けつけてくれたという訳だ。

 ――そして更に。


「どうやら……パーティーには間に合ったようだな」


「お、お前はっ!?」

 レッドの叫びに全員の視線が地上に戻される。

「キャプテン・エジプト! わざわざアメリカから来てくれたのかっ!」

「ああ、今夜はマグロのスシパーティーがあると聞いて飛んで来た。本場日本なら特上なのをご馳走してくれるんだろ?」

「ああ、任せろ」

 言いながら日米のヒーローが握手を交わす。


 ほぅ? 流石に日本のトップヒーローなだけあってアメリカのヒーローもちゃんと知っていたか。しかし後ろの2人は誰だ? 鉄男や蜘蛛男ではない……見た事ないがアメリカのヒーローか?


 っと私が疑問を抱いているとレッドも同じだったのか。

「ところで後ろの2人は誰だ? 見た事ないが――やはりアメリカのヒーローか?」

「ああ、彼等は私の従兄弟でキャプテン・フィリピンとキャプテン・フィリピンパブだ」

 従兄弟だとっ!? も、もしやキャプテン・エジプトも含めてこいつら全員、実はキャプテン・アメリカの親族なのかっ?

「いや、キャプテン・フィリピンはまだいいけど、キャプテン・フィリピンパブはダメでしょ……いろいろと……」

 ピンクがボソりと呟いているが。


「アメリカだけじゃないぜっ」


 声はまた別方向から来た。

「だ、だれッッ!」

 ピンクが叫んでいるが……いや本当に誰だ? 急に見た事ない奴が出てきたが?

「えっ? いや、私はパプアニューギニアのヒーロー『8頭身の目玉のおやじ』ですが何か?」

「キモッ! 目玉のおやじって小っちゃいからかわいいのに8頭身とゆーモデル体型だとキモッ。そして8頭身だからってモデル立ち止めろっ!」

「えっ? ……でも実際モデルなんで」

「モデルなのっ!」

「ええ。ティーンズファッション雑誌の……」

「目玉の『おやじ』なのに10代ファッション雑誌のモデルやってんのっ」

 ――と。


「アメリカとパプアニューギニアだけじゃないぜ」

 更に別方向からの声に全員が振り向けば。

「だから誰ッ!」

「え? いやだから私はインドネシアの『8頭身のリラックマ』ですが何か?」

 また知らん奴が出てきたな……。

「何か? じゃなくて……いや8頭身だからってモデル立ち止めろって言ってんの! 8頭身の目玉のおやじと並んでポーズ決めてるとなんか腹立つのよっ!」

「えぇ〜。そう言われましても実際おやじなんで……」

「モデル関係ないじゃん!」

 とピンクは言っているが、確かに8頭身の目玉のおやじが10代雑誌のモデルをやっていて、8頭身のリラックマはおやじなんて、素材を活かしたハラスメント以外の何ものでもない……世も末だな。


 と私が思いに耽っているとブルーがピンクを宥める。

「まあまあピンク殿。おやじ殿とクマ殿もこうして地球のピンチに駆け付けてくれた立派なヒーローな訳ですから……」

 このブルーの言葉に8頭身の目玉のおやじとリラックマは胸を張り。

『そうですよ。我々は顔と頭と性格が悪いだけでちゃんとスーパーヒーローなんですから!』

「良いとこないじゃん! しかもなんでそんなセリフを一言一句ズレずに合わせて言えるのよ!」

 言ってやるなピンクよ。もしかしたら1つくらい良いところ……迷惑系ユーチューバーを私人逮捕するくらいの良いところはあるかもしれんだろう?


 としていると。ここに集合したヒーローはこれで全部だったのか。

「よし。そろそろ時間だ……」

 レッドの言葉に再び空を見上げれば、空はもう冷凍マグロでいっぱいになっていた。まぁ、はっきり言ってデカ過ぎてもうマグロかわからない。結局のところ隕石と何が違うのかわからないが――我々のやる事にかわりはない。

「ではいくぞっ! ファイナル・デッド……」

 言いながらレッドが右の拳を構え、深く腰を落とした。


 ――時だった。


 私がアイコンタクトから1度頷き、GOサインを送る。するとそれを受け取ったヨネがレッドより先に飛び上がり。

「ッ!」

 一瞬で巨大冷凍マグロを消し去った。

『……』

 無論、収納無限のアイテムボックスにしまっただけの話である。レッドはあーだこーだ作戦を述べていたが、私は最初からヨネ1人いれば十分。そしてヨネも同じ考えだったようで――つまり私は地球がピンチとはそれほど思っていなかったので適度にふざけていたのである。

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