第21話 フィニッシュ・バスター
「聞け貴様等」
ここはいつもの会議室。私は声と共に都、リキ、シコナ、ヨネの順に視線を巡らせる。
「今、我々のユーチューブチャンネルはチャンネル登録者数も12人と順調に伸び、そして臭影者の方も戦国坂四十六がファーストシングル『年貢の納め時』を発表し、こちらも順調と言って良いだろう……」
私の声に各々が思い思いに頷いているのがわかる。
「なので我々もそろそろ地球征服の第一歩を踏み出す時がきたと思うのだが――。手始めに全人類のウンコから必ず湯気が出るように人体を改造手術するような事はせず、まずはリキとシコナの復讐から始めようかと思うのだが?」
「えっ?」
「拙者達の復讐を?」
リキとシコナが目をパチクリさせているが、私は都と視線を交わし。
「ああ、既に都とは話がついている。ただ我々としては具体的にかまぼこの紅白の味の違いがわからなければ貴様達がどうしたいのかもわからないので、それを今から訊いて今後の方針を決めたいのだが?」
という質問をすると先に口を開いたのはリキで。
「それでしたら私は前に言った通り、元パーティーメンバー達に『ざまぁ』と言ってやりたいのでそのための動きをしたいです。シコナさんは?」
とリキがシコナを促せば。
「拙者も同じくですかな? 基本的な方針はリキ殿と一緒と思って頂いて結構」
と一つ頷いた。なので私も一つ頷き。
「なるほど理解した。ではその動きとは具体的にどうする? まさかその元パーティーメンバー共を直接ぶちのめしに行く訳ではなかろう? リキが抜けてS級からE級まで降格するようなクソ雑魚共をわざわざ直接叩くなどただの弱い者イジメで何も面白くはないだろう?」
「ですね。なので考えたのですが――私、シコナさん、ヨネさん。それに都さんと大根さんの5人で冒険者ギルドへ行って登録してパーティーを組みませんか? もちろん私とシコナさんは既に登録してあるので御三方に新しく登録してもらうって事ですけど」
とリキが言っているとシコナが続く。
「ほほう。それは妙案ですな? それで我々がS級までいけば彼奴等は相当口惜しいと同時に、上位ランクが一つとはいえ埋まるので彼奴等のランクも相対的に下がり易くなるという――1度で2度美味しい作戦でござるな」
この言葉に私は深く頷く。
「なるほど。
「なんでっ!? カルロスってダイコンさんの実家に住んでる謎のブラジル人ですよねっ? インド関係ないじゃないですかっ!」
と素早い反応を示したのはリキだが。
「いや違うな。そのカルロスとは別のカルロスだ」
「別 の カ ル ロ ス ッ !? いや寧ろ別のカルロスの方が謎なんですけどっ!?」
――というリキの言葉はさて置き。
「では明日にでも冒険者ギルドに行って登録するとして、今日の内に何かしておくべき事はあるか?」
と。私はリキorシコナに質問する。するとリキは首を捻りながら虚空を眺め。
「う〜ん……そうですね。特にはないんですけど、私達5人でパーティーを組むワケですからパーティー名は今考えちゃった方が良いかもしれませんね? 明日ギルドで悩むくらいなら」
「いや、寧ろそれは大事だな。明日ギルドでそれに時間を割く方が勿体無い。今の内に決めておくべきだ」
という私の意見にみな納得したか無言で頷いてくれる。なので――
「では誰か意見はあるか? 直接名前を提案してくれても良いし、アイデアだけでも構わない……何かあるか?」
すると私の視界の隅で真っ先に片手を上げたのはヨネだった。
「ヨネか……ならば先に問おう。名前か? アイデアか?」
私の質問にヨネが電子パッドをひっくり返し。
『名前です』
「良かろう。で、名前は?」
私の声にヨネが再びパッドをひっくり返せば。
『開運なんでもない鑑定団』
「却下だ」
秒で却下してやった。更に私は見下すようにしてヨネに人差し指を突き付け。
「良いか? スキル『鑑定』を持っているのは貴様しかいないのだぞ? しかも森羅万象のステータスを見る事が出来るなど開運とんでも鑑定士以外の何者でもない……因って却下だ」
私の言葉に両肩を落とすヨネと、入れ替わるようにして出てきたのは都。
「ダイコン良いか?」
「うむ。聞こうか」
「やはりなんと言っても我々はユーチューバーだからな。よって動画のタイトルっぽく『開運ろくでもない鑑定士3選 パート7』とかはどうだ?」
「没」
「ボォツゥ!?」
アゴをシャクレさせてまで驚く都だが当然だろう?
「馬鹿か貴様は? 確かにユーチューブでは『ハリウッドで実写化された大コケ映画3選』や『ハリウッドスターが日常的に使う必殺技5選』や『アルマゲドン・フィニッシュ・バスターを日常的に撃っているハリウッドスター173選』といった『ホニャララなホニャララ何選』という動画は良く見かけるが、3選と言っているのにパート7までやっていたらそれは3選ではなく21選だろうが?」
「う、迂闊……」
と言って項垂れる都と、入れ替わりで次に来たのはリキだった。
「じゃあ思い切って『どすこい尿酸値』とかどうでしょう?」
どう舵を切ったらそんなパワーワードが出てくるのだ? いやそれより。
「それならば貴様達が居たパーティーのように『片翼の天使の尿酸値』とかの方が良いのではないのか?」
やたらと「片翼の天使」と「尿」がセットになっているパーティーが多かったからな。
――が。
「えっ? どすこいって片翼の天使って意味じゃないんですか?」
え? 初耳だが?
っとしているところへ横からシコナ。
「まぁまぁリキ殿ダイコン殿。では間を取って『どすこい・フィニッシュ・バスター』というのは如何で?」
……というシコナの意見は意外に評判が良く。我々のパーティー名は「どすこい・フィニッシュ・バスター」に決まりかけていたが、どすこい・フィニッシュ・バスターだと必殺技の名前っぽいという話になり、最終的には良くわからない内に「どすこいカルロス」に決まった。
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