第17話 乗り越えるために
寒い夜の公園で、俺はベンチに座って泣いていた。自分自身の迷いと、決めきれない自分への苛立ちが、悲しみをさらに深くしていた。家に帰ろうと思い立ったが、足が動かなかった。冷え切った体と心をどうにか暖めようと、俺は自分を奮い立たせようとした。
その時、凛とした声が聞こえた。振り向くと、息を切らしながら俺の方を向いている小川さんがいた。彼女は安心したような表情で、俺に「見つけました」と言ってくれた。
小川さんの突然の登場に、俺は驚いた。
「どうしてここに……?」
尋ねると、彼女は。
「心配になって、探していました」
その言葉に、俺は何とも言えない感情が湧いてきた。
小川さんが「失礼します」と言いながら、俺の隣に静かに座った。彼女の存在は、何か安堵を与えてくれるようだった。俺はまだ話すことができなかったが、彼女は何を考えているのか、俺には理解できなかった。こんな惨めな俺をわざわざ追いかけてきて、何をしてくれるつもりなんだろう。初対面なのに。
彼女は俺の隣に座り、俺を見つめながら「大丈夫ですか?」と静かに尋ねた。小川さんの心配する目に、俺は心を打たれた。こんなにも心配されるとは思っていなかった。
「ありがとう、大丈夫だよ」
俺は言った。でも、本当は全然大丈夫じゃなかった。彼女の存在が、俺の心を少し和らげてくれた。
小川さんは俺にそっと手を差し伸べた。
「ここにいても寒いだけですよ?」
彼女の言葉には優しさが込められていた。
彼女の優しさに支えられた。
まだ心は重たかったけど、少なくとも一人じゃないという安心感があった。
すると、小川さんは静かに話し始めた。
「何があったか分かりませんけど、大体は予想が付きます……辛かったんですね」
彼女の言葉に、俺は思わず「え?」と声を漏らしてしまった。そして小川さんは言葉を続けた。
「私は経験があります……誰かと付き合うということは、楽しいこともありますけど、辛いこともあります。信頼、愛情、その裏には憎悪や悲しみ、負の感情もあります。だから恋愛って難しいですよね」
彼女の言葉には、深い理解と共感が込められていた。小川さんは俺の心の内を見透かしているような気がした。
「俺は……」
俺は言葉を探した。彼女の前で、自分の感情を正直に話すことができるような気がした。俺は小川さんに向かって、今日の合コンでの出来事と自分の感情を打ち明けた。彼女は静かに聞いてくれた。
話し終えると、小川さんは優しく微笑んだ。
「大丈夫ですよ! これも一つの経験です。辛いけど、乗り越えたらきっと強くなれます」
彼女の言葉に、俺は少し安心した。小川さんとの会話は、俺にとって心の支えになっていた。彼女の優しさが、俺を癒してくれた。
恋愛は本当に難しい。ゲームみたいに攻略法があれば楽なのにな。人の気持ちはその時々で変わるから、亜美も、俺も、そしてみんなもそうだ。だから、俺はこの場でうだうだしている場合じゃない。一つ一つに決着をつけないと。
俺は立ち上がり、涙を拭きながら小川さんに向き合った。
「ありがとう、少しだけど前に進めたような気がするよ」
小川さんは微笑えむ。
「こんな上辺だけの言葉で良かったら」
と言ったが、俺にはそれが勇気を与える言葉だった。
その時。
「先輩!あーこんなところにいたんですか! 探しましたよ」
言ってくる女の声が聞こえた。振り向くと、絵里が俺たちの前に現れた。彼女は笑っていたが、平常心ではないように見えた。
絵里の登場に、俺は少し緊張した。
「絵里ちゃん……」
呼ぶと、彼女は。
「先輩、大丈夫でしたか? 心配しました」
でも、彼女の目には何か他の感情が隠されているようだった。
「大丈夫だよ……もう帰るから」
俺は言った。小川さんにもう一度感謝の言葉を伝える。
小川さんに感謝の言葉を伝えた後、絵里が口を開いた。
「えーそんな、私と遊んでいきましょうよ! 合コンでは悲しい想いをしましたけど、私と遊べば……」
絵里が言いかけた瞬間、小川さんが割り込んできた。
「何にもわかってないですね」
小川さんの言葉は鋭く、絵里に向けられた。その言葉に、絵里は少し驚いた表情を浮かべた。
「あなたと遊ぶことが、名雲さんにとって何の解決になるんですか?」
小川さんの言葉は冷静だが、その中には強い感情が込められていた。絵里は言葉を失い、俺と小川さんを交互に見つめていた。
俺はその場に立ち尽くし、小川さんと絵里のやり取りを見ていた。小川さんの言葉には重みがあり、絵里に対する俺の感情も複雑だった。絵里は俺に何を求めているのか、俺自身もまだはっきりとは分からなかった。
「私はただ、先輩が少しでも楽になることを願ってるんでーその為なら私は何でも出来るんですよ? あなたにその覚悟があるんですかぁ?」
絵里は強く小川さんに言い放つ。
彼女の表情は複雑そうだった。彼女もまた、自分の感情と向き合っているようだった。
二人の対決が静かに開始されそうだった。
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