第29話 楽しいデート……のはずが
付き合い始めた小川さんとの日々は、俺にとって新鮮で楽しいものだった。亮介は時折俺をからかってきたが、彼も心から祝福してくれていた。過去のことはもう関係ない。俺は小川さんと共に一歩ずつ前に進んでいけると信じていた。
キャンパス近くの小さなカフェでのデート。周りにはカップルや学生たちが賑やかに話している。
小川さんとのデートは、新鮮で心地よい時間だった。俺たちはキャンパス近くの小さなカフェで、お互いの趣味や最近の出来事について話し合っていた。カフェの雰囲気は温かく、背景には静かなジャズ音楽が流れていた。
俺たちは窓際の席に座り、外の景色を眺めながら会話を楽しんでいた。小川さんは、俺のジョークに笑い、時には恥ずかしそうに顔を赤らめていた。彼女の笑顔は俺の心を和ませ、今までの悩みを忘れさせてくれた。
食事をしながら、俺たちは共通の趣味である音楽や映画について熱く語り合った。小川さんは音楽に詳しく、俺の知らない新しいバンドや曲を教えてくれた。彼女の情熱的な話し方に、俺はますます彼女に引き込まれていった。
「ねえ、小川さん……好きな映画のジャンルは?」
「うーん、難しい質問ですね、私はミステリーやサスペンスが好きかな……心理戦が面白いと思いません?」
「確かに、サスペンスはいいね! ドキドキする展開にハマるよね! 僕はコメディが好きかな? 笑いって、一番のストレス解消になると思うし」
「そうですね、笑いは大切です……名雲君のそのジョーク、いつも楽しいですよ」
「そうかな? 自分では全然そう思わないけど……あ! 次のデートでは映画を見に行かない? コメディかミステリー、どちらか選んでさ」
「そうですね、じゃあミステリーにしましょうか……名雲君の反応が見たいですから」
「俺の反応か、怖くて叫んでしまうかも」
「楽しみにしてますよ、そ、その……二人で行けるのも」
「……ありがとう、好きだよ、俺だって楽しみだよ」
「私もです……」
俺たちはそう話しながら、夕暮れの公園を散歩した。木々の間に差し込む太陽の光が、小川さんの笑顔をより一層輝かせていた。俺たちは次のデートの計画を立てながら、自然な笑顔を交わした。小川さんと一緒にいると、心が安らぎ、自分らしくいられる。それが、何よりも大切なことだと感じていた。
夕焼けの空を見上げながら、俺は新しい未来に思いを馳せた。小川さんとの関係は、まだ始まったばかりだが、俺たちの間にはすでに深い絆が芽生えているように感じられた。これからの未来がどうなるかはまだ分からない。でも、今はそれでいい。俺たちはこの瞬間を大切にしようと思った。
デートの帰り道、俺は小川さんと別れた後、満足感でいっぱいだった。
「今日も楽しかったな」
心の中で呟きながら、キャンパスを歩いていた。そんな時、突然聞こえてきた声に、俺は足を止めた。
「先輩、久しぶりですね」
その声に、俺は足を止めた。声の主は、絵里だった。彼女は予期せぬ場所に現れて、俺を驚かせた。
「絵里? どうしてここに?」
「ただ、偶然です。先輩を見かけたので、声をかけてみただけですよ。」
俺は絵里の突然の登場に戸惑いを隠せなかった。彼女は何をしに来たのだろう? 俺たちの間にはもう何もないはずなのに。
「あの女とのデートは楽しかったですか?」
「あぁ、楽しかったよ。でも、君と話すことはもうないはずだろ?」
絵里は不敵な笑みを浮かべながら、俺に向かって言った。
「ふふ、これから楽しいことが起こるよ」
その言葉に、俺は戸惑いを隠せなかった。絵里の言葉は何を意味しているのだろうか。それは脅迫のようにも、予告のようにも聞こえた。
「何のことだよ?」
絵里は答えず、ただ不気味な笑いを浮かべていた。彼女の表情や言葉には、何か計画しているような雰囲気があった。
「先輩が悪いんですからね、私を好きになれなかった先輩が……」
絵里の言葉には、何か裏があるように感じられた。彼女は何を企んでいるのだろうか。そして、その「楽しいこと」とは一体何なのか。
俺は彼女の去る姿を見送りながら、不安と疑問を感じた。絵里との関わりは、まだ終わっていないのかもしれない。彼女の言葉は俺の心に重くのしかかった
絵里が俺をある場所に誘う。
「こっちに来てください! ちょっと見てほしいものがありますから」
「……どうせこれが最後になるだろう、付き合ってあげるよ」
俺は、この一夜が絵里との最後の関わりになるだろうと思いながら、彼女の後をついていった。しかし、これが最悪の事態を引き起こすきっかけになるとは、この時の俺には想像もつかなかった。
絵里は俺を静かな路地に連れて行った。周囲はほとんど人通りがなく、不気味な静けさが漂っていた。
「ここで何を見せたいんだ?」
「ちょっと待ってて下さい……すぐに分かりますから」
絵里の言葉には不穏な雰囲気が漂っていた。彼女の表情はどこか冷たく、計算されたもののように感じられた。
絵里は何かを取り出すと、俺に向かって何かを見せた。それは、俺の予想をはるかに超えるものだった。
「これは……なんだこれは!?」
絵里の手には、予想外のものが握られていた。俺はそれを見て、驚愕と恐怖を感じた。絵里の行動の意図が理解できなかった
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