第12話 親友からの誘いは……
俺は親友の高橋亮介と一緒に食事をしていた。亮介は俺の悩みにいつも耳を傾けてくれる、頼れる存在だ。
「どうしたんだよ、友。最近、元気なさそうだけど」
亮介は心配そうに俺を見ながら言った。
俺は深くため息をつきながら、「ああ、ちょっとな……」と返事をした。
亜美のこと、絵里ちゃんのこと、そして自分自身のこと。全部が頭の中でグチャグチャになっていた。
亮助は、同じ音楽サークルの一員で、俺たちは同じアーティストが好きという共通点で急速に仲良くなった。彼は明るくてノリが良く、俺にとっては心の支えのような存在だ。能天気だけど、俺の感情の起伏には敏感に反応してくれる。
亮助には亜美のことは言っていなかった。でも、絵里とのやり取りについては話していて、彼はそれに羨ましがっているようだった。
「あんな可愛い子に付きまとわれて、いいよなー」
亮助は弁当を食べながら言っていた。
だけど、俺は視線を逸らして、「全然羨ましくないよ」と言った。
絵里ちゃんが可愛いのは事実だけど、彼女との関係が俺にとって複雑なものになっていることを、亮助には理解してもらえないかもしれない。
「おーん? 何すかしてんだよ」
亮介は笑って、俺の肩を抱いた。
「まぁいいや! それでお前も来るだろ?」と強引に俺に言った。
「何だよ?」
俺が聞くと、亮介はニヤリとして。
「とぼけんなよ! 合コンだよ! 噂によると超可愛い子が来るらしいぜ! なぁ、行くよな?」
俺は一瞬迷った。押しが強い亮介にここで断ったら、何か疑われるかもしれない。絵里ちゃんと亜美には悪いけど、ここは行くしかないのかもしれない。
「じゃあ、決定な!」
亮介は満足そうに言った。
「当日はこの場所でやるから、あとは俺に任せろ! あ、酒は飲まない方がいいかもなー。飲んでもいいけど」
強引に俺は亮介の主催する合コンに参加することになってしまった。内心では複雑だった。亜美への未練、絵里ちゃんへの思い、それに新しい出会いへの不安。全部が頭の中でグルグルと渦巻いていた。
そして、この合コンが俺にとってさらなる試練を与える。
亮介に強引に合コンに誘われた後の帰り道、俺は絵里ちゃんと遭遇した。
彼女は「先輩」と呼んだが、いつもと違って声に元気がなかった。何かあったのかと心配になり、俺は彼女に声をかけた。
「大丈夫か?どうしたの?」
俺がそう尋ねると、絵里ちゃんの表情が一変した。
「なんで私という女がいるのに、合コンなんて場に参加するんですか?」
彼女の声には怒りと失望が混ざっていた。
その言葉に、俺は思わず引いてしまった。怖い、怖すぎる。絵里ちゃんがこんなにも激しく感情を露わにするなんて、想像もしていなかった。
「いや、それは……」
俺は言葉を失った。正直に話すべきか、それとも何かいいわけをするべきか。俺の心は混乱していた。親友の誘い断れない。それに、新たな出会いを経験することで何かが変わる。かも、しれないからだ。
絵里ちゃんはさらに詰め寄ってきた。
「私は先輩のことを考えて、色々と我慢しているのに、先輩はそんなこともわからないんですか?」
彼女の声は涙声に変わっていた。
俺は彼女の言葉に圧倒され、何も言えなくなった。俺にとって絵里ちゃんは大切な存在だったが、こんな形で彼女の感情を知ることになるとは思っていなかった。
「ごめん、絵里ちゃん。でも、俺も色々考えてるんだ」
俺はそう言ったが、自分の言葉に確信が持てなかった。
「まぁいいですよ!」
絵里ちゃんは突然、微笑んでそう言った。その変わりように、俺は戸惑った。彼女は急に表情を変え、俺に近付いてきて耳元でささやいた。
「先輩はどうせ私の元に帰ってくるんですから、いいですよ。だから合コンは楽しんできてください!」
絵里ちゃんのその言葉と余裕そうな態度に、俺はさらに驚いた。彼女はそう言って、俺から離れて立ち去っていった。
「いや、そもそもなんで知っているんだ?」
俺は独り言をつぶやいた。絵里ちゃんはどうやって合コンのことを知ったのか。彼女の行動や言葉は、俺には理解ができなかった。
絵里ちゃんの言葉が頭の中でグルグルと回り続けた。彼女は俺が必ず戻ってくると確信しているようだった。しかし、俺自身はそのように考えていなかった。絵里ちゃんの自信はどこから来るのか、不思議でならなかった。
俺は深くため息をつきながら歩き続けた。絵里ちゃんのこと、合コンのこと、そして自分自身の未来について。俺の心は混乱していた。
絵里ちゃんの振る舞いと言葉は、俺に新たな疑問を投げかけた。彼女は本当に何を考えているのか? そして、俺は彼女とどう向き合うべきなのか?
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