フラれた彼女のことを忘れようとしたのに、彼女の妹は全て知っていた

第13話 混沌とする合コン

　合コンの日、会場は大学から少し離れた居酒屋だった。

　俺は亮介と一緒に電車で移動していた。

「今日は楽しもうぜ！」

　亮介は意気揚々と言い、俺を励ました。でも、俺の心はどこか不安でいっぱいだった。絵里ちゃんの言葉が頭から離れなかった。

　合コンは当初2対2の予定だったが、どうやら急遽3対3に変更になっていた。

　こちら側からは、ある女の子が急に参加したいと言ってきたためだ。相手側からも男性が追加された。

　俺は、相手の女の子が誰なのか、追加された男性が誰なのか、正直どうでもよかった。人数合わせで参加しているだけだった。でも、内心ではこの心を落ち着かせられる相手が見つかればという、淡い期待を抱いていた。

　合コンの会場には、緊張と興奮が入り混じる空気が漂っていた。

　亮介は俺に「大丈夫か？」と何度も声をかけてきたが、俺は「うん、大丈夫だよ」と答えることしかできなかった。

　しかし、実際は全く大丈夫ではなかった。

　合コンの集合場所に着くと、亮介ここだと合図する。時間より少し早く着いたが、移動して指定の居酒屋に向かった。俺は何気に、これが初めての合コンだったから、緊張していた。

「緊張するなよ、大丈夫だって」

　亮介はそう言って、俺を励ました。だけど、俺の心は落ち着かなかった。

　居酒屋に入ると、個室は広さもちょうど良く、居心地が良かった。女の子たちはまだ到着していないようだったので、俺たちは談笑しながら待った。

　しばらくすると、「初めましてー」と入ってきた女の子たち。

　その中に、驚くべき人物がいた。

「初めまして……って、先輩と高橋さんは同じ大学でしたね！」

　そこにいたのは絵里だった。確かに、絵里ちゃんだ。

　俺は驚愕し、言葉を失った。どうして絵里ちゃんがここに？彼女が合コンに参加するなんて、想像もしていなかった。

　「お前には悪いけど、絵里ちゃんもどうしても参加したいとか言ってきて……いやー彼女が来れば華があるなと思って！　お前にとってもいいだろ？」

　喜んでいたが、俺の心は混乱していた。絵里ちゃんとの関係、そしてこの場での彼女の存在が、俺にとってどういう意味を持つのか。

　合コンの会場にさらなる混沌が訪れた。最後に入ってきた男性は、絵里から聞いていた名前で、そして俺の最も憎い相手だった。

「ういーす、初めまして、風間隼人です！　急遽参加して欲しいということだったので、参加しました」

　彼の声が響いた。

　俺は驚愕し、その場に凍りついた。どうして風間隼人がここに？亜美の新しい彼氏で、俺が心の底から憎んでいた男が、目の前にいた。

　居酒屋の個室は暖かな灯りで満たされ、和やかな雰囲気が漂っていた。しかし、俺の心は重苦しいものに押し潰されそうだった。

　絵里ちゃんと風間隼人の存在によって、合コンはただの楽しい飲み会ではなくなっていた。絵里ちゃんは時折俺の方をチラチラと見ていたが、何かを言おうとする度に口を閉ざしていた。彼女の目には複雑な感情が浮かんでいた。

　一方、風間は他の参加者たちと自然に会話を楽しんでいた。

　彼の周りには常に笑い声があり、彼が話すたびに女の子たちはキャッキャと笑っていた。彼のカリスマ的な魅力が、この場を支配していた。

　俺は、絵里ちゃんと風間の間で心を揺らしていた。風間と向き合うことによって、亜美への未練が再び強くなってきた。

　一方で、絵里ちゃんへの罪悪感も増していた。

　風間は周りに気さくに挨拶し、すぐに場の空気を明るくした。彼は本当にカリスマ的な存在感を持っていて、女の子たちはすぐに彼に夢中になった。

　一方で、俺は完全に動揺していた。絵里ちゃんの参加も驚きだったが、風間の参加はさらに大きな衝撃だった。俺はこの状況をどう受け止めればいいのか、全くわからなかった。

　合コンが進むにつれて、俺の心はますます複雑になっていった。亜美への未練、絵里ちゃんとのこれから、そして風間との関係。これらすべてが俺の心を圧迫し続けた。

　合コンにいた女の子の一人、立花さんは風間と同じ大学の学生だった。その事実に気づいて、俺は何かを悟ったような気がした。しかし、立花さんの表情はどこか険しく、笑顔の裏に隠された何かを感じさせた。

　しかも、俺が亜美のために目指していた大学。

　確かに交通機関を使えばそんなに大した距離はない。

　浅はかだったのは俺の方だ。離れた気が全然遠くになってなかった。

　地獄のような場所だ。今すぐにでも帰りたい。

「いったいどういうことなんだ？」

　俺は心の中で疑問を抱いた。風間は彼女がいるのに、なぜ合コンに参加しているのか。その神経が理解できなかった。こんな奴に、俺は憤りを感じた。

　会話はやがて俺に向けられた。

　絵里ちゃんが「先輩もこんなところに来るんですね」と言った。その言葉には、何か意味深なものが感じられた。

　風間は俺に向かって。

「さっきから全然話さないけど、大丈夫か？」

　俺は「ああ、苦手なんだよね、こういう雰囲気」と答えた。

　本当は心の中で渦巻く感情と戦っていた。

　誰のせいでこうなっているんだと言いたかった。

　でも、それをこの場で言ったら何もかも崩壊する。

　だから、まだ言わない。必死に怒りと悲しみを堪えながら笑顔で対応していた。

　立花さんは俺と風間のやり取りを見ていたが、何かを言いたそうに唇を噛んでいた。彼女の目には、何か訴えかけるような表情があった。

　合コンは進んだが、俺の心はずっと不安定だった。絵里ちゃんとの関係、風間との微妙な空気、そして立花さんの険しい表情。これらすべてが俺の心をかき乱していた。