第22話 先輩、覚えていますか?


「先輩、あの日を覚えていますか?」



 その日から、私の人生は変わり始めた。

 お姉ちゃんの提案で、先輩は私に勉強を教えてくれることになった。


 先輩はいつも優しく、自分の大切な時間を割いて、私の勉強を見てくれました。そんな先輩の姿に、私は深く心を打たれました。私にとって、先輩と過ごす時間は特別なものだった。


 先輩はただ教えるだけでなく、私の悩みも真剣に聞いてくれました。

 私の心の内を誰よりも理解してくれるような気がして、心から安心できる人だと感じた。


 私は先輩のやさしさに触れるたびに、彼への想いが深まっていきました。先輩は私にとって、ただのお姉ちゃんの彼氏ではなく、私自身にとって大切な人になりつつあった。


 勉強を教えてもらう度に、私は先輩のことをもっと知りたくなりました。彼の話し方、笑い方、考え方。すべてが私にとって新鮮で、魅力的だった。


 私の心は先輩でいっぱいになっていった。

 そして、先輩への恋心は、私の中でじわじわと育っていった。


 私と先輩の勉強の時間は、ただの学び以上のものになっていた。ある日、私は先輩に心の内を打ち明けることにした。


「先輩、実は私……お姉ちゃんと比べられるのがすごく辛いんです。どんなに頑張っても、いつも彼女の陰に隠れて……」


 先輩は私の言葉に静かに耳を傾け、そしてやさしく答えた。


「絵里さん、自分を他人と比べる必要はないよ、あなたはあなただから」


 私は先輩の言葉に心が温まるのを感じました。


「でも、周りはいつも姉と比べて……」


 先輩は私の目を見て、言った。


「他人の目は気にしなくていいよ、大切なのは……自分自身がどう感じるかだよ! 絵里さんが頑張っていることは、僕には分かるよ」


 私の心は先輩の言葉でいっぱいになりました。先輩は私を理解してくれる唯一の人。その温かさに、私はますます彼に惹かれていきました。


「先輩……本当にありがとうございます、先輩のように強くなりたいです」


 先輩は微笑んで、「一緒に頑張ろう」と言ってくれました。


 その瞬間、私の心に希望の光が差し込みました。先輩と一緒なら、もう一人じゃないと感じたのです。


 私は先輩との勉強時間を心から楽しみにしていました。先輩は、私の質問に一つ一つ丁寧に答えてくれ、時には難しい問題も一緒に考えてくれました。その姿に、私はただただ感謝の気持ちでいっぱいでした。


「先輩、今日は特に難しかった問題が解けたんです! 先輩のおかげです!」


 私は先輩に向かって笑顔を見せた。


 先輩は優しく笑って、「絵里さんの努力のおかげだよ」と返してくれました。私はその言葉に心が躍りました。先輩の前では、私は自分自身を少しでも良く見せたくて、いつも以上に頑張っていた。


 だけど、先輩と一緒にいると、私の心は安らぎを感じました。お姉ちゃんの影から抜け出し、自分自身を見つめ直す時間が増えました。


「先輩、お姉ちゃんには勝てないかもしれないけど、私は私なりに頑張ります」


 先輩は私の肩を軽く叩いて、「それでいいんだよ。絵里さんは絵里さんだから」と励ましてくれました。

 先輩のその一言が、私にとって大きな支えとなりました。


 私と先輩の関係は、徐々に変わり始めていました。勉強を通じて、私は先輩に心を開いていった。そして、先輩の存在が私の日々に彩りを与えてくれていることに気付き始めていました。


 私の心の中では、先輩への感情がどんどん強くなっていき、それはもはや単なる憧れを超えていました。私の日々の思考の中心には、いつの間にか先輩がいたのです。



 私の心は複雑な感情で満たされていました。先輩への深い想いと同時に、彼を独占したい、独り占めしたいという強い願望がありました。


「先輩は私だけのものになってほしい……」


 そう思う度に、私の心は焦燥と興奮でいっぱいになりました。彼との特別な関係を誰にも邪魔されたくなかった。


 しかしその一方で、お姉ちゃんへの嫉妬も私を苦しめていました。彼女はいつも完璧で、私はいつも彼女の影に隠れていた。お姉ちゃんが持っているもの、すべてが私にはなかった。


「なんでお姉ちゃんばかりが……」


 私の心は嫉妬で痛んだ。お姉ちゃんには彼氏もいて、周りからも愛されている。私にはそんな幸せが訪れないことに、苛立ちと悲しみを感じていました。


 先輩への愛情とお姉ちゃんへの嫉妬が交錯する中で、私の心は混乱していました。先輩を手に入れることが、私の中でお姉ちゃんへの勝利にもつながると思っていました。


「先輩が私を選ぶことが、私の勝ちなんだ……」そう自分に言い聞かせながら、私は先輩への独占欲とお姉ちゃんへの嫉妬の中で、葛藤していました。



 ある日、私はいつものように家に帰った。しかし、家の中からは聞き慣れない男性の声と、お姉ちゃんの声が聞こえてきた。声はリビングから漏れているようだった。


 私はそっとリビングのドアを開けた。そこにはお姉ちゃんと見知らぬ男性がいて、二人は楽しそうに話していた。彼らの間には親密さが感じられた。


 私の心は驚きと嫉妬でいっぱいになった。お姉ちゃんにはすでに彼氏がいるはずだった。でも、この男性はお姉ちゃんの彼氏とは違う人だ。


「こんなことが……」


 私の心は複雑な感情で揺れ動いた。お姉ちゃんが他の男性と親しげにしている光景を目の当たりにして、私は何を感じればいいのか分からなくなった。


 私はその場から離れ、自分の部屋に戻った。部屋の中で、私は考え込んだ。お姉ちゃんが他の男性といるという事実。それが私にとって何を意味するのか。


「もしかして、これは……」


 私はある思いが頭をよぎった。お姉ちゃんにも弱点があるのかもしれない。彼女が完璧ではない証拠かもしれない。


 私の心は、お姉ちゃんへの嫉妬と先輩への想いで満たされていた。この新たな発見が、私の中で何かを変えるきっかけになるかもしれない。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る