第24話 大変だったんだな

 合コンから一週間が過ぎた。その間、俺は色々と考え込んでいた。絵里の突然の告白、小川さんとの出会い、そして風間隼人という男の存在。


 俺は一人で、過去一週間の出来事を振り返っていた。絵里の行動には驚いたし、彼女の感情の深さには少し怯えもした。彼女は俺に対して強い感情を持っていることは明らかだった。


 小川さんとの出会いは、俺にとっては新鮮な風だった。彼女は俺のことを理解しようとしてくれ、俺の心の中にある混乱を少しでも軽減してくれたように感じた。


 そして、風間隼人。彼は亜美の現在の彼氏で、俺にとっては複雑な感情を抱かせる存在だ。亜美との過去、それに終止符を打つためにも、俺は何かを決断しなければならないと感じていた。


 教室の中で、俺は窓の外を見つめながら深くため息をついた。


「どうすればいいんだろう……」俺の心は答えを見つけられずにいた。


 絵里、小川さん、亜美、風間……彼らとの関わりが、俺の心を複雑にしていた。何を選ぶべきか、どう進むべきか。俺は自分の心と向き合い、答えを見つけるために奮闘していた。


 教室で一人、深く考え込んでいた俺に、亮介の元気な声が飛び込んできた。


「おい、ちょっと時間あるか?」






 俺は何となく彼についていった。目的地はサークルの部屋。この時間、誰も使っていないらしく、俺たちはそこで話をすることになった。


 亮介は合コンの話を切り出した。


「この間の合コン、どうだった? 絵里ちゃんとの関係も変わったみたいだけど」


 俺はため息をつきながら答えた。


「いや、正直まだ頭が整理できてないんだ、絵里ちゃんのことも、他のことも全部」


 亮介は俺の表情を見て、真剣な顔になった。


「そうか……でも、お前が何か決めるのを急がなくてもいいんだぜ! 焦らず、自分のペースで考えてみろよ、まぁ、俺もあんまり状況が分かってねえけどな」


 俺は亮介の言葉に心が少し軽くなるのを感じた。


「ありがとうな、亮介」


 俺は彼に感謝の気持ちを伝えた。



 亮介は合コンの後の状況について話し始めた。


「色々あってな、結局残ったのは俺と立花さんだけだったんだよ……ちょっと大変だったけどさ」


 俺は申し訳なさを感じ、謝罪した。


「ごめん、俺があんな風になって……」


 しかし、亮介は手を振って言った。


「いやいや、気にすんなよ! それより、お前、何かあったんだろ?」


 俺はしばらく黙っていたが、結局心の内を打ち明けることにした。


「実はな……」


 俺は合コンのこと、絵里のこと、風間隼人のこと、全てを亮介に話した。


 亮介は真剣に聞いてくれた。


 亮介の前で、俺は心の内をすべて話した。亜美との過去、俺が寝取られたこと、裏切られた感情、そして絵里に付きまとわれている現状。合コンで知った断片的な事実も含めて、すべてを明かした。


 亮介は俺の話に深く耳を傾けてくれていた。亮介の目は俺の目をしっかりと捉え、表情には深い理解と共感をしてくれた。


 亮介は俺の話を真剣に聞いていたが、全てを聞いた後、彼は信じられないという表情を浮かべた。


「なんだよ、それ……まるで漫画やアニメの主人公みたいな話だな。」


 彼の言葉には真剣さと同時に、冗談めかした調子も含まれていた。

 しかし、俺にとっては全てが現実の出来事だった。


「いや、本当の話だよ」


 俺は改めて強調した。


「全部が俺の頭の中でごちゃごちゃして、どうしたらいいか分からなくなってるんだ」


 亮介はしばらく黙って考え込んでから、言葉を紡いだ。


「大変だったんだな……でも、お前なら乗り越えられるさ。お前は強いからな」


 俺が強い? いやいやそんなことはない。

 でも、親友の亮介と過ごしてきた時間は長い。

 そんな彼が言う言葉だからそうなんだろうか?



 その言葉には、俺への信頼と励ましが込められていた。亮介の言葉が、俺の心に少しの希望をもたらした。


「ありがとう、亮介」


 俺は感謝の気持ちを込めて言った。


「本当に助かるよ」



 亮介は俺をじっと見つめ、俺の心情を深く理解してくれていた。

 彼は俺の肩に手を置き、心からの助言を与えた。


「お前は自分が思ってる以上に強いやつなんだよ……頭もいいし、周りの人を気にかけることができる、それがお前の強さだ」


 俺は亮介の言葉に首を傾げた。自分自身を強いとは思えなかったが、亮介の言葉は何かを変える力を持っていた。


「でもな、お前のその優しさが、絵里ちゃんを惹きつけたんだと思うぜ! 

 優しすぎるのも考えものだけどな」と亮介は続けた。


「絵里ちゃんの姉ちゃんのこともあるし、お前の優しさが時には複雑な事態を引き起こすこともあるかもしれないけどな」

「複雑な事態……」

「まぁ! そんな気にするな! 彼女も居ないモテない俺の発言なんてな!」


 俺は亮介の言葉を反芻し、自分の優しさとその影響について考えた。亮介の言葉は、俺の優しさは強みでありながら、時には複雑な状況を生み出す要因にもなることを理解した。


「ありがとう、亮介……俺、自分のことを見つめ直さないといけないな」

「何だよ、気持ち悪いな……まぁ、何かあったら相談してやるから安心しろ」


 俺は心から感謝を述べた。亮介の存在は、俺にとって大きな心の支えになっていた。


「おう、いつでも頼ってくれよ! それにしても、お前のこれからが気になるな」


 亮介は少し心配そうに言った。


 俺は窓の外を見つめながら、これからの自分の行動について考えた。絵里への対応、亜美との過去、それに新たな出会いである小川さんへの思い。俺はこれまで以上に慎重に、自分の心に正直になることを決めた。


「絵里ちゃんには、はっきりと話す必要がある! もう、彼女を惑わすようなことはしたくない」


 俺は決意を固めた。


「亜美には……もう、過去のこととして割り切るしかないか」


 亮介は俺の言葉に頷いた。


「それがお前にとってベストな判断だろうな、でも、無理はするなよ」


「あと、小川さんとは……もう少し話してみたいな」と俺は静かに続けた。

「彼女といると、なんか落ち着くんだよね。」


 亮介は俺の言葉を聞いて、少し驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔に変わった。


「お前、新たな一歩を踏み出そうとしてるな。応援してるぜ!」


 サークルの部屋を後にするとき、俺の心は少し軽くなっていた。亮介との会話は、俺に新たな視点を与え、俺の心に希望の種をまいた。これからの道は決して簡単ではないが、俺は自分自身と向き合い、一歩ずつ前進することを心に誓った。

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