第10話 みんなとのカラオケ
奈由香は俺の手を引っ張って行った。
「歌うぞー」
カラオケに着くやいなや奈由香は早速曲を入れる。
「私も入れたいんだけど」
そして下村さんもカラオケの曲を入れる画面を見ながら順番を待っている。
「えっと……」
そんな中俺は困っていた。人生初の他人とのカラオケ。どう行動すればいいのか全く分からない。ぼっち卒業から三日でカラオケとはよく考えたら結構キツイ相談だ。
「雄太も選びなよ」
「うん」
俺はもう一方のマシンで曲を入れる。しかし、何を歌えば正解なのか分からない。アニソンは良いのか? ドラマソング歌えば良いのか? アイドルソング? 昭和の歌? 流行りの歌? 全く分からない。
しかし、麗華を待たせてる以上早く決めないといけない。それに奈由香が歌おうとする前に入れなくては。奈由香の歌は、集中して聴きたい。それには歌を選びながらではだめなのだ。という訳で、俺は急いで流行りの歌を入れた。これでよかったのかなと思いながら。
「じゃあ歌いまーす、水星のオリーブ」
奈由香は机の上に置いてあったマイクを掴んだ。
「堕天の星に生まれし戦士、そして闇夜に舞い降りた……」
奈由香さんが歌い出した。奈由香さんの歌を初めて聴いた。ああ、想像を裏切らない綺麗な声、そして綺麗なビブラート、最高だ。というか今気づいたが、奈由香アニソン歌ってるじゃん、俺の知ってる。しかも、結構ガチめの。俺も好きなアニソン歌った方が良かったかな?
「唐突の叫び、今聴こう。さあ、明日へ飛び出そう」
サビに入る。この曲はサビが良いのだ。それに奈由香の歌補正が入っているサビ、体が踊り出しそうだ。
「最後まで戦い抜こう、そう決めたんだ。あなたを信じればいけるはずだ。みんなで守り抜こう、この世界を。さあ手を伸ばそう」
奈由香さんが歌うサビ最高だ。
「良いぞ奈由香、いけいけー」
下村さんが叫ぶ。
「頑張る!」
奈由香さんがそれに答える。
「奈由香頑張ってください!」
俺も負けじとエールを送る。
そして奈由香は歌い終わった。
「良かったよ」
まず麗華が奈由香さんに抱き着く。
「ちょっと、急にやめてよ」
ああ、女子同士のハグもいいものだ。ってそうじゃないだろ。
「奈由香さん」
「だから奈由香でいいってば」
「奈由香良かったよ、最高!」
「ありがと」
奈由香さんは麗華から手を放して俺に抱き着いた。え? 男女間でもするの? わからねえ。
「ちょっと、奈由香? 雄太、混乱してるよ」
「え? だめ? 男女差別だー」
「そう言う話じゃないよ」
奈由香さんと麗華が話しているのは分かる。逆に言えばそれ以外何も分からない。もしこれが漫画だったら鼻血が出て貧血になるところだろう。だが幸せだ。今死んでもいい。
「さてと、得点見ましょうか」
奈由香さんはようやく解放してくれた。いや、まあ、気持ちよかったけどさ。
「どうだった? ハグは」
麗華が聞く。そう言われても困る。普通に幸せだったと言いたいところだか、そんなことを言ったらどんな反応をされるかどうかは想像に難くないだろう。
「まあ、どういえばいいんでしょうね。一応異性ですし」
言葉を濁す。何を言うのが正解なのかはわからないが。
「そうじゃなくて、気持ちよかったか聞いてるの」
やめてくれ、本質を見抜くのマジでやめてくれ。
「気持ちよかったかどうかですか?」
「うん」
「それは……一応異性だからそういう気持ちがないこともないですけど、そういう事じゃないじゃないですか」
「ならどういうこと?」
「俺たちはあくまでも友達で、奈由香もそう言う気持ちで抱き着いてきたのに、異性だからとか違う気がして」
「そうよ、異性とか関係ないわ」
奈由香さんが言う。
「あんたが言わないでよ!」
麗華の鋭い突っ込みが入る。
「えー」
「まあ俺はまたしてくれてもいいですけど」
願望込みの発言だ。奈由香のハグは幸せだし。
「いいの!?」
「奈由香さん、いや奈由香は俺を異性とか関係なしに友達と認めてくれたんだよ、それに異性とか関係ないと思う」
まあ俺は異性とか関係ありで好きなんだけど。
「てかさ、奈由香さんの得点って何点?」
俺はテレビ画面を見る。そういえば見ていなかったのだ。そこには89.769と書いてあった。
「惜しいじゃ無いですか」
「そうだね。というかさ、奈由香って言うのそんなに抵抗あるの?」
「なんか言いにくくて」
さすがにいきなり呼び捨ては恥ずかしすぎる。
「そう……私は雄太って呼べてるのに?」
「……それとは違う話じゃ無いですか」
「ふーん」
あ、なんか機嫌悪くなってそう。
「俺も努力しますから」
「私のために頑張って! てかもう始まらない?」
「たしかに」
そして俺はマイクを持つ。そして俺はマイクを持つ。正直に言って、自信などあるわけがない。だが、奈由香に失望されない程度に歌えたらいい。よし、歌うぞ。
「君に恋して何年だろう。僕はしっかりやっているのだろうか……」
よし今のところはいい感じだ。
だが、この曲、サビがかなり難しいのだ。だからと言ってめちゃくちゃ間違えるほどかと言うわけではないが、さすがにあのハグ事件があった後だ。
心拍数がおそらく今も速くなっている。この状況だと恥ずかしいミスをするかもしれない。頑張らないと。
「君が愛したのは私? それともあなた? 私はどちらでもいいわ。君は私の瞳に映ってる。それ以上は求めないわ」
よしサビも歌えてる。緊張は止まらないが、大丈夫そうだ。
そして二番と三番も無事に歌い終えた。
「雄太良かったよ!」
「ありがとうございます」
俺はお礼をする。
「で、点数は何点でしょうか」
「あ、90.329」
どうやらギリ九十点超えたようだ。
「私より上じゃない」
「そうみたいですね」
「悔しいわね。次の曲では負けないからね」
そして、麗華がマイクを取る。
「私もちょっと九十点目指そっかな」
麗奈は顔をぱんぱんと叩く。気合い入れだろう。
「じゃあ行くね!」
そして麗華は歌い出す。
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