第37話 音楽

 コンサートホールに入る。そして二階に上がり、中に入った。


 どの席に座ればいいんだ? と、困惑していると、奈由香が「大丈夫だよ。私に着いて来て」と言ったので、奈由香について行く。

 すると俺たちの席があった。


「雄太! いよいよだよ」

「だな。とはいえ、まだ三十分は始まらないんですよね?」

「そうだね、でもこういうのって気分が大事よ!」


 そう奈由香が言ったのに対して、「たしかに」と返した。


 そして十分くらい喋った後、俺たちは一旦席から離れて、コンサートホールの中にあるカフェに入った。そこで軽く飲もうということで、俺はミルクティーのSサイズを頼んだ。


「はあ、幸せ」


そんな中、奈由香が呟いた。


「幸せなんですか?」

「うん。この演奏が始まるまでのこの独特な感じが好きなの。それに入口の方でも結構感じ出てるし」


 たしかに、入り口の方を見ると、慌ただしい人達がホールに入っていく姿が見える。確かに奈由香の言う通り、その感じが出ている。


「だからね、今からもう楽しみなの!!」

「それは良かったな」

「うん」


 そしてしばらく喋り合った後、そろそろ時間だということで、コンサートホールの中にもどった。


 そしたらもう、結構人が入っていて、感じが出ていた。普通にスマホを触っている人や、もらったパンフレットをじっくり見ている人。すでにもう心を音楽の世界へと誘わせている人もいた。

 この空間を見るだけでも楽しみだ。


「さあ、始まるよ」

「うん」


 そして俺たちは手をつないだ。


 そして時間になったら、指揮者が歩いてきた。そして深いお自記をし、そのまま桶が始まった。パンフレットを見ると最初に四季を演奏するらしい。代表曲だ。

 そして聞き始める。


 すると以外にも聴いたことのある曲がズバリと並んでいた。まず軽い感じの曲調から始まって、そしてゆったりになっていった。


 隣の奈由香を見ると、じっくりと聴き入っていた。そしてそれを見て、俺は再び音楽の世界へと意識を持っていく。

 そしてそのまましばらく聴いていたら、新たなメロディが来た。これよく考えたらこのメロディも聴いたことがあるなとい思った。意外に結構知ってるフレーズがあるんだなと。そして高温と低音のはーもにに聴き入っていると、軽快なメロディが始まった。これもまた聴いたことのあるメロディだ。

 そしてまたしばらく聴いていると、また知っているメロディがあった。そう言えば四季は春夏秋冬がある。ということはその各々一つ一つに俺でさえ知っているような有名なメロディがあるという事なのだろうか。


 そしてすぐに曲は終わった。そして数曲の曲が流れて、一部は終わった。およそ一時間。短かった。まだ20分くらいしかたっていない気分だ。


「どうだった?」


 終わった後に奈由香に話しかけられた。


「楽しかった?」

「ああ、すっごい良かった」

「良かった。私から誘ったからさ、もし楽しくないって言われたらどうしようって」

「そんなことないよ。正直予想の三倍くらいも楽しかったし。っと、まだ第二部もあるんだよな」

「うん。とは言っても第一部がメインだけどね」

「そっか」

「でも、二部の曲もめっちゃいいから。楽しみにしてて!!」

「ああ」


 そして、第二部も始まった。第二部の方も素晴らしい演奏が続いた。この音色を聴くだけで来て良かったなと思った。

 最後の方で奈由香が手を繋ごうとしたので、俺も手を繋ぎ返した。音楽を聴きながら彼女と手を繋ぐ。最高だ。


 そして第二部の演奏もすぐに終わった。


「奈由香、本当に来て良かったです」


 終わってからすぐに奈由香に伝えた。


「そう……良かったー」


 そして、俺たちは手を繋いでその場を後にした。



 そして俺たちは近くのカフェに行った。今日の音楽の感想を言い合うためだ。



 俺はカフェラテを頼み、奈由香はミルクティーを頼んだ。


「はあ、いいね。今も音楽が流れてるよ。ほら!」


 そう言って奈由香は音楽を口ずさむ。まさしくさっき演奏されていた第二部の曲だ。


「結構覚えてますね」

「まあ私は元々聴いてたからっていうのもあるけどね」

「ああ、そうでしたね」

「ほら、ね、でも、やっぱり実際に聴く方が良いよ」

「まあそれはあの迫力はテレビとかでは表せませんよ」

「そう! そうなのよ! 雄太は分かってる!」


 奈由香は上機嫌だ。


「もしかして今まで家族とかも」

「そうね、私の家族はあまり分かってくれてないわね。まあ単純に興味ないんだよね。あの人たち。それに麗華ともね、音楽の話はできないからさ」

「そうですか……」


奈由香は何ともない感じで行っているが、趣味を共有できる人がいないとは、結構悲しいことだな。


「でも今は雄太がいるからね! 最高!」

「あの」

「ん?」

「テンションおかしくないですか?」

「うんテンションおかしい! でも許してよ。楽しいんだから!」


 今の奈由香はノリノリで、もう飛びそうだ。だが俺は当然許す。そんな奈由香を見てるだけで幸せだ。

 そして俺は奈由香と、そんな幸せハイマックスな状態で喋る。

 ああ、幸せだ。


 そして一時間弱話した後、家に帰る事にした。だが、俺の家じゃない、奈由香の家だ。

 どうやら今日は奈由香の親がいないらしい。

 だから、という事らしい。

 前は三人だった。しかし、今日は一人、しかも彼氏彼女の関係。

 考えるだけで顔がニヤけてしまう。


「雄太。そんなに楽しみなの?」


 だが、奈由香にそれを指摘されてしまった。


「楽しみですよ。奈由香の家に行けるんですから」

「えへへ、そう? 嬉しい」


 と、奈由香も歩くスピードを速くなっている気がする。

 そして、俺たちはどんどんと歩いていき、奈由香の家に着いた。


「じゃあ入って」

「う、うん」


 だが、緊張する。上手く部屋に入っていけない。


「緊張しないでよ。前に一回入ってるじゃん。友達の家に入るみたいな感じでさ」

「う、うん」


 そして俺は建物の中に入っていく。

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