第20話 お泊まり会

「雄太」


 と、奈由香と麗華に話しかけられた。


「土日さあ、お泊まり会しようって話になってるんだけど。雄太も来ない?」


 え? 良いんですか?


「それってなんかみんなで遊ぼう的な?」

「うん。そう言う感じ」

「今のところは誰が来るんですか?」

「カラオケ行ったメンバーね」


 つまりプラス下村さんか……いや、怖いなあ。


「参加したいです」


 まあでもなんかあったら麗華とか奈由香が止めてくれるだろ。二人きりにならなかったら良いだけだからな。やはり奈由香との時間は何事にも変えられない。


「オッケーわかった。じゃあ雄太はゲーム機の持参お願い」

「分かりました!」




 そしてついに土日になった。途中下村さんににらまれるという事件があったものの、今日を楽しみにこの一週間生きてきた。


「さて、今日は準備良いかな。雄太もちゃんとゲームもってきた?」

「ああ、もちろんだ」


 そしてゲーム機と、奈由香の小説と、複数のボードゲームが用意された。


「さてと、まずは何からする?」

「うーん、ボードゲームで良いんじゃない?」


 と、麗華が発言する。


「異論は無い?」

「無い」

「じゃあやりましょう」


 と、場にすごろくが置かれる。


「ルールとかは?」

「今から言うわ。でも前雄太の家でやったゲームとは違ってたいして難しくはないみたいだね」

「なんかただすごろくを振っていくみたいな?」

「そう、ただ場の指示に従えばいいみたい」

「へー」

「まあやろっか!」


 そしてすごろくシートが開かれる。なるほど、確かに簡単そうだ。一回休み、ワープ、進むマス、戻るマス、最初に戻るマス、サイコロの目が増えるマスなど色々あるが、頭を使わない系みたいだ。


 まあそんな事を言ったら前にやったすごろくゲームも頭は使わないんだけど。


 そして最初になった俺がすごろくを振る。


「やった六だ!」


 すると場には三戻ると書いてあった。


「え?」

「ドンマイ雄太」


 そう言いながら麗華がサイコロを振る。


「三ね」


 と言って駒を進める。


「あ、四マス進むだって。雄太に勝った」

「まだ序盤だから」

「分かってるよ」


 そして奈由香が振る。


「六だ。てことは雄太と同じじゃん」

「奈由香もドンマイです」

「まあいいでしょう。同じ被害者がもう一人いるんだし」

「俺のことですか?」

「もちろん」


 そして次下村さんがサイコロを振った。


「二ね」


 と、シンプルマスへ進む。


「奈由香、私現在最下位じゃん。慰めて」

「はいはい」


 と、奈由香は下村さんをよしよしする。今の下村さんの顔は見なくてもわかる。絶対にやにやとしてると思う。


「それじゃあまた雄太だね」


 と、奈由香が言ってもう一度俺が回す。


 そしてそんな感じで進み……下村さんが最下位になった。と言うのもスタートマスに戻るとかいう最悪のマスに止まってしまったのだ。


「奈由香ー慰めてー」


 と、下村さんは大胆にも奈由香の膝枕を要求してた。これは好きとかいう問題じゃない、下村さんは奈由香の子供になっているのではないか? そんな疑問が頭の中を駆け巡る。


「分かった分かった」


 しかし、そんなプライドを捨てて奈由香に縋り付く理由も分かる。奈由香には母性がある……流石に俺はここまでプライドを捨てようとは思わないけど。


「じゃあ次は何をやる?」


 と、奈由香が見る。


「カートレースゲームとか良いんじゃ無い? 四人いるし」


 麗華が提案した。


「良いね! じゃあ次はこれで」


 それはキングカートだ。


「じゃあ勝つね!」


 と言って奈由香が猛スピードで駆け出す。


「速いね」


 と、麗華が言う。俺も同感だ。スタートダッシュが上手く決まりすぎている。


「でも私も負けないよ」


 と、麗華も道端に落ちてるアイテムを取り、加速する。そして俺はというと……下村さんにも負け、今五位だ。


「雄太遅くない?」

「うるさいなあ」


 奈由香が煽ってくるのでキレ返した。


「奈由香、こっちに集中しなさいよ!」


 と、下村さんが注意を下村さんの車に戻そうとする。


「おお、もう少し手間抜かされそうだ」

「余裕ぶらないでよ」


 と、下村さんと奈由香は激しく争っていた。その中で少しだけ置いていかれてる俺だが、経験者として負ける訳にはいかない。


 と、近くにあったアイテムを取り、一定時間車の速度を上げる。下位ほど、いいアイテムを取りやすいのだ。


「最下位にはならないわよ」


 と、麗華もインコースを上手く攻め、俺の車の攻めを許さない。


「あ、雄太ごめんね」


 と、麗華が謝るとすぐに俺の車がスリップした。


「攻撃アイテムを拾ったの。ほんとごめんね」

「なら前に投げてくださいよ!」

「え? 麗華後ろに投げたの? 雄太に対して酷いね」

「仕方ないでしょ。前は結構距離あったから」

「私たちのせい?」

「うん」

「いや、麗華のせいだろ」


 と、ツッコむ。


「まあでもすぐに奈由香に追いつくから」

「雄太、あと一周で行けるの?」

「頑張ればいけるだろ」


 と、アイテムを取る。それは一定時間無敵➕加速のアイテムだ。


「雄太、アイテムの力に頼るんだ……へー」

「奈由香、煽らないでください!」


 と、言うが、まだすぐには使わない。


「そんな事を言いながらわたしの煽りに乗ってるじゃん」

「大丈夫、使うタイミングを定めてるだけだから」


 そして……


「ここだ!」


 と、アイテムを使い、麗華を抜かし、そのまま下村さんと奈由香を抜かす。


「雄太ずるいー!」

「運も実力のうちですから」


 と、そのままゴールする。大逆転勝利だ。


「悔しい!」


 と、奈由香が俺のほんの十センチ先に来て……


「雄太、次は負けないからね」


 と、言って元の場所に戻った。

 かわいい。その一言だ。

 だが、結局調子を取り戻した俺に奈由香は勝てなかったが。


 そして俺が五連勝した所で……


「別のやつやろう!」


 と、奈由香が言い出し、別のゲームをする事となった。

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