第22話 奈由香とのお風呂
「さてと、みんなでお風呂入りましょうか」
お風呂の時間になった。
「でも、雄太一人で入ることになっちゃうなあ」
「仕方ないよ。男だから」
男と言う性別に生まれてしまった以上仕方のないことだ。それに男じゃなかったら奈由香を好きになってなかったわけだし。
「じゃあ! 私たちと一緒に入る?」
「犯罪は犯したくありませんよ」
「バレなきゃ犯罪じゃないし、私警察に言わないよ」
そう言う問題じゃない気がするんだけど。
「あのさあ、少なくとも私は嫌なんだけど」
「え? 麗華嫌なの? 雄太が嫌いなの?」
「そういう問題じゃないでしょ。入るんだったら二人で入ってよ」
「らしいけど、入るって言ったらどうするんだ?」
「タオル巻くわよ。それは。雄太にもパンツ履いてもらうことになるけど。さすがに私も男性のアレを見たいわけじゃないから」
奈由香は「どう?」 という感じで見てくる。冗談なのかと思ってたのに、思ったよりも現実的な案を出してきた。これは本気なんだな。
「じゃあ入りましょう」
男としてこんなシチュエーションを提示されては断ることなどできない。
「やった! じゃあ決まりね。先に二人が入って後で私が入るから」
「え? 私も奈由香と入りたいんだけど」
決まりかけていたところに下村さんが待ったをかけてきた。
「え? 絵里は私とじゃあ満足しないの?」
「満足というより、奈由香と一緒に入るつもりだったから」
「私は絵里と入るつもりだったよ。でも断られるんだったら仕方ないなあ。私が一人で入るよ」
「なんでそうなるの?」
「だって、三人の希望を叶えるんだったらもうそれしかないじゃん」
「それは嫌」
俺も嫌だわ。下村さんと一緒に入るのは。
「だったらもうどうしようもなくない?」
「という訳で絵里ごめんね」
「わかった」
明らかに不満そうな顔だったな。少し悪いことをしたかもしれないけど、あくまでも提案したのは奈由香なのだ。俺は悪くはない。
「じゃあ先入ってきてね」
「わかった!」
と、二人は入っていった。
「さてと、私たちはどうするー?」
「小説でも読みます?」
「それでもいいけど、もう一つだけしたいことがあるの」
「何だ?」
「これこれ、プロの演奏を見せたいなって」
「プロの?」
「そう、雄太、普段あんまりクラシックとか聴かない系でしょ」
「まあそうですけど」
クラシックなんて自分から聴いたことなんてないだろう。
「ならこれでクラシックにも精通してみない?」
「なんか、奈由香に影響され続けてません?」
「なら最終的には私そのものになるね」
「怖いこと言わないでくださいよ」
ホラーですか!?
「まあとりあえず流そうよ」
「うん」
そして曲が流れる。
「迫力満点じゃないですか!」
「当たり前でしょ。百人くらいいるんだから」
「百人!?」
多すぎる。まあでもこれだけの音を出すにはそれくらいの人数はいるか。
「うん。これがオーケストラよ」
「すごい、ほかのみんなには見せたんですか?」
「見せたけど、印象悪かった。絵里は最初はもう一度聞きたいと言ってたけど、二回目はね……」
「そうなんだ……」
「だから勧誘するの。雄太はクラシックいいと思う?」
「いいと思うよ。俺は。二回目聴きたいかどうかはわからないけどな」
「そう……私ね、実はチケットがあるの。良かったら行かない?」
「え?」
実質デートじゃん。
「もう! はいかいいえで答えて?」
「じゃあはい」
「決まりね! 来週の土曜日行ける?」
「うん!」
「よし、これで完璧ね」
こうしてデートの予定が俺のカレンダーに組み込まれた。
「ねえ麗華」
絵里が麗華に話しかける。
「何?」
「私たちこれでいいのかな」
「なんで?」
「私たちはもうずっと奈由香の友達やってるじゃん。でもあいつはまだ一週間程度よ。なんでよ」
「私はいいと思うよ」
「どこか?」
「だって見てて楽しいじゃん」
麗華は笑顔で言う。
「はあ?」
「奈由香の幸せを思うならさあ。黙ってみているのがいいと思わない?」
「私はそれで、奈由香といられる時間が減るのが嫌」
「それは我儘すぎるよ絵里」
「我儘?」
「うん。それは友達じゃない。今の絵里は奈由香のことを友達じゃなくておもちゃとして扱ってる。自分の者みたいにね。でもそんなのはいけないと思う。人間誰もが人権っていうものを持ってるんだから」
「……」
「私は別に奈由香にアピールすることが悪だという訳じゃないよ。でも、過度な干渉はやめた方がいいってだけ。実際私雄太にアピールしなくていいの? って聞いたら、今は邪魔したくないって言ってたし。だからそうゆうので行こうよ」
「私はそれには納得できない。なんで私たちが先に友達になったのに、あの子に、あいつのほうが仲がいいの? 確かに麗華の言ってることもわかるよ。でも、違うの」
そして絵里は風呂に顔をうずめ、麗華はその頭をよしよしとする。
「とりあえず、しつこくない程度に頑張ったらいいんじゃない? 応援するわよ」
「うん」
「まあ、私は雄太の味方だけどね」
麗華は小声で言う。
「何か言った?」
「ううん。なにも」
「お風呂あがったわよ。奈由香」
「ええ、分かったわ。雄太はーいろ!」
「はい!」
そんな二人を見送って……
「麗華、私やっぱりあいつのことが憎い。なんで私じゃなくてあいつなのって思って」
「ゆっくりとさあ、頑張って雄太とも仲良くなっていけばいいんじゃない? それでゆっくりとともだちになったらさ」
「なれる気がしないんだけど」
「なれるわよ。私が間を持ってあげるからさ」
「うん」
「雄太。私の胸どう? 巨乳?」
「はあ?」
いきなり何を言い出すんですか?
「だって、女子に聞いてもさあ。それぞれが持つ胸の大きさとかあるじゃない? なんか聞きづらいのよ。だから男である雄太に聞くわけ」
「それって俺答えにくくありませんか?」
まさか、巨乳なんて言ったら変態ってなるかもしれないし、そもそも今胸をじっくりと見ている今の状況が変態になるんだけど。
「雄太、どうなの?」
「答えられるわけないでしょ!」
「もう! だったら雄太とお風呂入らない!」
「ええ!?」
「嫌なら答えて!」
「どちらかといえば巨乳かなあ」
「え? そう?」
さて、これはどっちの反応だ?
「嬉しい」
勝ちだった。
「男子的にはそそる感じ?」
「それは流石にセクハラでしょ」
「セクハラ?」
「性的な質問して……俺じゃなかったら怒ってますよ。それに俺も男ですから」
流石に「そそる感じ?」は答えが無さすぎる。そそらないって言ったら奈由香に魅力がない事になるし、そそるって言ったらもう俺はただの変態になる。どちらを選んでもいい事がない。ただまあ本音を言ったらそそるということになるわけなんだけど。
「ああ、それはごめんなさい」
「本当に怒りますからね!」
そして奈由香が俺が入ってるお風呂に入ってきた。
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