第35話 初デート

 八時半、待ち合わせ場所である駅に到着した。三〇分前だが、それくらい今の俺は緊張している。奈由香との初デート、それが今一番緊張しているのだ。

 今は付き合えているが、そんな中俺が何か変なことをしてしまったらあきれられ、「別れよう」なんて言われるかもしれない。

 それが怖い。失敗しないようにしなければ、その考えがまた俺の心臓の鼓動を早まらせる。


「え? 雄太早!! もしかして私待たせた?」

「いや、全然」

「奈由香、今日服に合ってますね」

「そこだけ?」

「髪の毛もいい感じです」


 そう分かっている。今日の奈由香は気合入れていると。

 今まで奈由香はあまり休日のお出かけの日でもあまりちゃんとはしてない。まあ人に見られて普通に思われる程度だ。

 だが、今日は違う。今日は色々と仕上げているのだ。そんな奈由香と一緒に歩くのか……俺ももう少しちゃんとすればよかったかな。


「ありがとう」


 と、軽く顔を真っ赤にする。奈由香可愛いな。今日は一段と可愛い。


 そして今、俺たちは手をつなぎながら歩いている。あああああ、なんて不釣り合いな二人なんだ。


 奈由香の隣で俺が一緒に歩いている。しかもちゃんとメイクもしている奈由香の隣で。楽しいけど、羞恥心で軽く恥ずかしい。


 そして奈由香が予約した店に入った。その店の雰囲気はいい感じの雰囲気で、メニューも、朝ごはんとして最適そうなサンドイッチやパンケーキなど多種多様なメニューがそろっていた。


「いい感じのメニューですね」

「でしょ! 良かった。私が選んだ店が雄太に合って」


 そう言って奈由香はほっとした顔をする。

 そしてメニュー表をぺらぺらめくって食べたい料理を探す。全部おいしそうだ。何なら全部食べたい。だが、一番おいしそうだなと思った料理はカツサンドと、カフェラテ、そしてサイドメニューとしてミニパンケーキが付いていた。カフェのようなレストランだ。

 そしてメニューを奈由香に手渡す。


 そして奈由香がメニュー表をじっくりと見ながら頼みたいメニューを選ぶ。その光景を見ながら俺は一人妄想にふける。この奈由香の顔を見ているだけで、穏やかな気持ちになる。


「何見てるの?」


 やばい、ガン見していたことが奈由香にばれた。


「いや、真剣な顔してるなって」

「まあ、メニュー選びは大事だからね。でも……早く決めるよ。待たせるの悪いし」

「いや、俺はいつまでも待てますよ。ゆっくり選んでください」

「うん」


 と、再び奈由香は真剣に選ぶ。普通にここの居心地が良すぎて、ボーとしてるだけで楽しい。


 そして、奈由香がメニューを決め、店員さんにメニューを告げた。


「ねえ、この後だけどさ、もう一つ行きたいところあるからそこに行ってもいい?」

「もちろんいいよ」

「やった。そこはね、この近くにある服屋さんなの。ちょっと雄太の好みを聞いときたくて」

「俺のためにってこと?」

「うん」

「ありがとう」


 そして、ご飯が到着した。


 カツサンドを一口かじる。


「美味しい!」


 肉の旨みをパンの柔らかい食感が支えてて、凄く美味しい。これにして良かったと思える美味しさだ。


「良かった、雄太に喜んでもらえるほど嬉しいことはないね」

「そんなこと言ったら俺が照れるじゃないですか」

「もっと照れさせちゃっても良い?」

「なんて?」

「今日の服にあってるね」

「今?」

「今。普通にいうタイミング見失ってたから」

「なるほど。ありがとう。じゃあ俺も奈由香を褒めましょうか」

「何?」

「奈由香のチョイス最高!!!!」

「……ありがとう」


 奈由香な顔が軽く赤くなってるのが目に見てわかる。効果的な褒め言葉なわけか。まあもちろん事実だが。


「てか、奈由香も食べてよ」

「あ、そうだね」


 そして奈由香も食べ始めた。

 ああ、この空間幸せだ。



 そして食後に、


「ねえ、雄太どう?」


 服屋さんで奈由香のファッションショー(俺向けの)が始まった。


「最高です!」


 最高すぎて、漫画だったら鼻から血が出そうだ。


 かわいいし、美人だし、もう言葉で形容しようのない綺麗さだ。今この美女と一緒に入れてるという事実だけでうれしくなる。しかも、今奈由香は俺の彼女なのだ。幸せ過ぎる。


「ねえ、最高以外で言ってよ」

「分かった」


 とはいえ、なんて言ったらいいのだろうか、国語の授業もう少しちゃんと聞いてたら良かったん場と思ったが、いまさらそんなことを考えても仕方ない。


 とりあえず、思いつく感想を……と。


「奈由香のかわいい顔が引きただされる感じがしていい感じです」

「おーいいね、言葉で説明できてるじゃん」

「俺だってやろうと思ったら出来るんですよ!」

「へー、じゃあこれは?」

「うーん」


 これは……


「似合わない」

「え? ひど!」

「ひどって、似合ってるものは来てほしくないじゃないですか」


 それに対し、奈由香は「冗談よ」と言って笑った。


「さて、次これはどう?」


 そして次に奈由香が着た服、今までで見た中で一番の服だった。今日来て来てた福よりもはるかにいい。奈由香の顔が今まで見た中で一番かわいく見える。控えめに言って最高な、もう俺の国語力では掲揚できない、とにかく素晴らしい福田。


「もうこれ買いましょう!!!」


 気か付けばそう言っていた。この服を着た奈由香をもっと見たい、その思いが俺の口を自然に動かしていた。


「そんなにいいの?」

「もちろん。最高中の最高」

「まさか、そんなに褒められるとは」


 奈由香はまた照れたような顔をしている。


「まあ、と言うことでこれは決定かな」


 俺の選択はしっかりと受け入れられた。

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