第14話 奈由香の家
「ほらほらくつろいで」
俺は。いや、俺たちは今奈由香の家にいる。カラオケ終わりにそう言う話になったのだ。
当然俺の他にも麗華や、下村さんもいる。
「とは言え、私の家特に何も無いからあんまりおもてなし出来ないけどね」
と謙遜される。奈由香の部屋には本棚と、テレビがあるのみだった。
「奈由香の家何も無いからね。私も麗華も把握してるよ」
「雄太のために言ってるの」
「そうですか。そんな事を言ったら俺の家も特に何も無いし、同じですよ」
むしろ本棚があるという事が凄い。見るところ結構ラノベだか、そうだとしても本を読むという事は俺にはできない。
「雄太の家にはゲーム機があったでしょ、私の家にはゲーム機なんて何も無いし」
「だからゲームしてた時にあんなに楽しそうだったんですね」
「それで何をしましょうか」
「家に呼んだの奈由香でしょ、決めてないの!?」
麗華が奈由香の言葉に反応する。
「仕方ないじゃない。私の趣味知ってるでしょ」
「なんだっけ」
「忘れたの? 言ってみて」
「奈由香、面倒くさい」
と、麗華がため息をつく。
「なんでよ」
「趣味を言ってくれるんじゃないの?」
「分かった言うわ」
奈由香ではなく下村さんがそれに答える。
「小説を読むことと、アニメを見ることでしょ」
「正解! 正確には漫画も好きだよ」
「漫画なんて家にないじゃない」
麗華が言う。
「ネット漫画があるでしょ」
「そういえばたまに読んでたわね」
「そうそう。ということで、これから映画を見ようと思います!」
「奈由香がしたいだけじゃん」
「そんなこと言われてもねえ。ここは私の家だから私が王様だし」
「何だよその理論は」
俺は思わず突っ込む。
「いいじゃない。見ましょう」
「はーい」
麗華がやる気のなさそうな返事をする。
「これってスターマジカルオンラインですよね」
「そうだよ」
俺はこのアニメを知っている。これは小説出身の作品で作中に中二病感のあるセリフがたくさん登場するということを。つまり、奈由香はそう言うやつを好きなのだ。そんなことを言ったら作品に失礼かもしれないが。
とりあえず俺でさえこんな趣味があるとは思っていなかった。なるほどそういう事だったのか。
「これのね劇場版がこの前追加されたんだけどそれが面白くてみんなにも見てほしいの」
俺はすでに見たことがある。しかも、劇場版でだ。だが、二回見ても面白い。
「じゃあ再生するね!」
「うん」
そしてスターマジカルオンラインが再生された。このアニメは単に主人公が裏技を使ってのレベル上げスポットで、一日何十時間もレベル上げをしまくって強くなった主人公が無双するというストーリーである。
「この世界で戦い抜く覚悟、実力、それが俺にはある。お前にはあるか、このゲームで戦う覚悟が。俺にはある! この世界でトップを取る覚悟が。だから今このゲームに何時間も費やしているんだ。だが、お前は、現実のことを考え、このゲームを一日二時間しかしてない。お前には覚悟があると言えるのか!」
主人公がそんな啖呵を切った。やはり面白い。
そして……
「面白かった!」
奈由香が終わるとすぐに感想を言った。
「感想言うの早くないですか?」
「早くないよ。もうエンドロール終わったし。てかさ、あのシーン面白くなかった? キリシオンが集団戦で相手プレイヤーをまとめて相手にするシーン」
キリシオンとは主人公の相棒の名前だ。イケメンで女子人気がある。
「たしかに、迫力あったな」
「うん。面白かった二週目だけど」
「確かにな、実は俺も二週目だけど」
「え? 雄太も二週目だったの?」
「そういや言ってなかったな」
言った気になってた。
「奈由香!」
下村さんが飛んできた。
「ごめん、あんまりストーリー理解できなかった。教えて」
「うん、いいよ」
「じゃあまずは序盤のシーンからね」
と、奈由香がゆっくりと解説をし始めた。そう言えば、質問するのが一番の友達を作る簡単な方法って聞いた事があるな。実践した事は無いけど。
「ねえもっとアタックしなくていいの?」
麗華が話しかけてきた。ついさっき下村さんに奈由香の会話相手を取られたことに対してのことだろう。
「俺はいいんだよ」
「でもこのままだったら絵里にとられるよ? いいの?」
「良くないけど、無理にアタックするのも違うくないか?」
そこまでして会話したいんだー、とかなる可能性がある。俺は奈由香に嫌われるのは嫌だ。
「そうだけど、本当にいいの?」
「うん。てかそう言えばさ、下村さんの味方はしないの?」
俺の友達とか以前に麗華は下村さんの友達だったはずだ。なら下村さんの味方をするのが道理になるはずだ。新入りの俺では無くな。
「ああ、それね。私、そういうのは嫌なんだよね。男女の恋愛以外認めたくないし」
おー百合展開は嫌なのか。まあ俺も好きなわけじゃ無いけど。そもそもここ現実だし。
「そういう系なんだ」
「うん。だからアタックしてきてよ」
「麗華はそれが見たいだけじゃないの?」
カラオケのとこで似たような事を言ってたし。
「バレた?」
「バレバレだな」
「まあとりあえずもう少し話してくる」
「がんばれ!」
とは言ったものの奈由香と下村さんはまだ話している。さすがにこんな状況で話しかけられるわけないだろ。
「今の状況で話しかけられるわけないじゃないですか」
「ははは、そうだね」
「そう言えば麗華はさっきのアニメどうだったんですか?」
「ああ、結構面白かったと思うわよ」
「そうですか。それは良かった」
「なんで?」
「俺が好きなアニメだから」
「奈由香だけじゃなくて雄太も好きなんだ」
「ああ」
「あれ」
奈由香がこっちを見て話しかけた。
「めっちゃ仲良くなくなってない?」
「確かにそうですね」
「良かったー!」
「なんで?」
「そりゃあ当たり前でしょ、雄太君ボッチだったから私以外にも友達ができて。そう言えば絵里は雄太のことどう思ってるの? 絵里はそこまで雄太に話しかけてない気がするんだけど」
そうか、奈由香は下村さんと俺のこと知らないのか。
「普通よ」
彼女は冷淡に答えた。
「へー普通かー」
「何が悪いのよ」
「別に悪くはないわ。これから重ねあえばいいんだし」
いや、そう言う話じゃないんだって。奈由香は気づいてなさそうだけど。
「さてと、そろそろもう四時ね」
「そうですね。なんか今日は短かったです!」
「さてと、次何をする?」
「え? なんか解散の流れじゃなかったんですか?」
「え? まだやるわよ」
「まあいいですけど」
ただの呟きだったか……。なら今日は短かったですと言ってしまったのか恥ずかしい。それに早く帰りたいと思っていると思われてしまったかもしれない。まあ、実際は真逆なのだが。
「麗華と絵里も良い?」
「いいけど、何をするの?」
下村さんが聞いた。
「それはズバリ! トランプよ!」
トランプか。
「トランプ? 大富豪とか?」
「うん、大富豪しかないでしょ」
「まさか、カラオケ行って映画見て最後にトランプ?」
麗華が寝ころびながら言った。確かに大富豪には悪いが、多少ランクが下がってる気はするな。
「いいでしょ! 雄太もいいでしょ」
「俺はかまいませんけど。大富豪好きですし」
まあ良いんだけどな。
「私ももちろんいいよ! 奈由香が提案した物だし」
「じゃあ決定ね! 大富豪やろー!」
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