第23話 決戦の火蓋
黄牙連邦政府に動揺が走る中、レルム・デリンジャーは『例の物』をオライオン帝国の秘密基地から入手しているため、イスヴァルド王国軍が今まさに黄牙連邦を滅ぼさんとしている瞬間においても冷静でいました。
(さあ来いイスヴァルド王国軍…貴様らが政府に攻め入ってきたその瞬間、貴様らの命運は尽きるのだ。そしてイスヴァルド王国を滅した後はガラディア公国をも滅し天下を統一してくれる。攻めあぐねれば直にオライオン帝国より救援もやってこよう。貴様らの負けは既に決まっておるのだ)
実はレルムはこの時を予期して念入りにも黄牙連邦への帰り際にオライオン帝国から救援を要請しており、仮設部隊が駐屯していました。更に本部隊も明日中には到着する予定だったのです。攻めても地獄、守れどもやはり地獄…実は王国軍は追い詰めているようで追い詰められていた状況だったのです。このまま行けば黄牙連邦の逆転勝利は決定的だったかに思われました。しかし2日待ってもオライオン帝国からの援軍はやってきません。そのうえ、イスヴァルド王国軍も城を包囲したきり一歩も動こうとしません。
(援軍はまだか?もう来ていないとおかしいはずだ…それに王国軍共、あそこから一歩も動かんぞ…どういうことだ?)
レルムはこの状況を不審に思っていました。そこで彼は王国軍に対して陽動を仕掛けるよう軍に命じました。
ところが、イスヴァルド王国軍はそれでも動こうとしません。更に1日経っても動きがないのでしびれを切らしたレルムが軍に出動命令を出そうとしたところで大きな動きが出てきます。
「申し上げます!!たった今、城内で大規模な反乱が発生しております!」
「(このタイミングで…だと?)皆殺しにしろ」
「は…?」
「皆殺しにしろと言ったのだ。早くしろ」
「し、しかし…」
「さっさとしろ。貴様も処刑されたいか?」
「は…はっ!!」
レルムはこの段階になってもオライオン帝国からの援軍が来ない事に苛立ちを覚え始めます。
(役立たずのオライオン帝国め…何をしておるのだ!!)
「申し上げます!反乱を扇動している人物が判明しました!!ティーゲル・フォイエルシュタイン、オライオン帝国大尉です!!」
「なん…だと?オライオン帝国が…?」
(してやられたッ…!!まさかオライオン帝国が反旗を翻したかッ!!『例の物』をここで使うわけにはいかん…一旦退かねばなるまい)
この時点でレルムは完全に敵の術中にハマった事を悟り、逃亡準備を始めました。
なんとカトゥーロは侵攻前にオライオン帝国の軍人と繋がりがあったのです。
彼が帝国の待遇に不満を持っている事、帝国においても数々の犯罪行為を起こした鼻つまみ者である事、待遇の悪さに不満を持ち数々の危険な不正行為に手を染めている事をウォーカーズ・ファミリーから聞いていたカトゥーロは宝天商会に頼んでその軍人に極秘に接触を試みます。
そのやり取りを簡単にまとめると…
商人「イスヴァルド王国からの使いで参りました、ティーゲル様にお目通り願えますでしょうか」
ティーゲル「これはこれは…マディア閣下のご勇名はお伺いしております、お話とは何でございますか」
商人「『我が軍は1か月後黄牙連邦へ侵攻する。もし貴官がわが国につくならば、相応の待遇を約束する』とのことです」
(おいおいマジかよ…!?こいつぁ俺の時代来たんじゃね!?神様は俺を見捨てなかったんだぁ!!)
ティーゲル「かしこまりました。黄牙連邦は格差社会、私めに掛かればどうという事はございません。必ずや反乱を成功させて御覧に入れます」
商人「ありがとうございます。ではこちらの『商品』をお使いください。街中にばらまけばより確実に反乱を成功させられます」
話を聞いたティーゲルは迷わずイスヴァルド王国に帰順することを決意しました。
『商品』の効果により超強化された貧民たちは彼らの殺害に向かった黄牙連邦の兵士達を逆に返り討ちにしていきます。このままでは分が悪いと判断したレルムは本軍を率いて城の裏口から逃亡を図り、鮮やかな手腕で脱出に成功しました。
(やむを得ん…一旦辺境で体勢を立て直して…)
「今だ!!突撃開始ーーーッ!!」
そんな事を考えていた矢先、なんと外で待機していた王国軍がレルム率いる本軍相手に突撃してきたのでした。
なんと王国軍は敵側が城から出てくるのを待ち構えていたのです。これには一溜りもなく王国軍はなすすべもなくやられていきます。
しかし、レルムは王国軍にカトゥーロの姿を確認するとニヤリと笑います。
(しめたッ!!今こそ『例の物』を使う時だッ…!!)
そして彼はついにハンカチにしまっていた『例の物』を取り出すと、高々と掲げたのでした。
次の瞬間、『例の物』からは煌びやかな赤い光が戦場一帯を照らし出し…。
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