第17話 黄牙連邦軍の急襲
マルティム将軍がカトゥーロ率いる王国軍の要塞への襲撃を決定したその晩、王国軍の陣地で何やら外に異変を感じたメリッサはカトゥーロにその旨を報告しに行きます。
「閣下。もしかすると敵襲かもしれません」
「へえ…来たか。んじゃあ早速臨戦態勢に移るよう指示を出してくれ」
「はっ!」
カトゥーロの命を受け、メリッサは兵士達に退避するよう早速指示を出します。
兵たちは面倒そうにしながらも、要塞から出ていき戦闘態勢に入りました。
そして最後の兵士が出てきた次の瞬間、
ドッグォオオオオオオン!!
左右の要塞の壁に岩が直撃し、壁は粉々に粉砕されてしまいます。
「うおおお!?な、なんだぁ!?」
「向こうだ!構えろ!」
岩が直撃し兵士たちが動揺した刹那、左右から黄牙連邦軍が物凄い勢いで押し寄せてきました。
左側の重装兵を中心に構成された軍はマルティム中将の腹心であるデミックス連隊長が、右側の遠投機を中心に構成された軍はマルティム中将がそれぞれ率いて物凄い勢いで突撃してきました。
「要塞放棄!撤退開始だ!退けーッ!!」
流石の王国軍もこれには堪らずカトゥーロは撤退命令を出します。しかし、撤退する王国軍を黄牙連邦軍は容赦なく追撃します。カトゥーロ将軍は卓越した指揮で降り掛かる投石をもある程度躱しますが、それでも数十名の損害を出してしまいます。
(流石、黄牙連邦軍のマルティム中将…やるな。偽の要塞を見破ってきやがった。しかも二手に分かれて撹乱するとはね。噂通り中々キツい相手だぜ)
そう内心考えながらもカトゥーロは驚くほどに冷静です。どうもカトゥーロは連邦軍の動きを観察しているようでした。
他方でヴィクター連隊長率いるアームストロング連隊は遠方からの投石攻撃や新型の兵器を使った攻撃には初手では攪乱させられてしまいます。
(クッ…精鋭だけあって中々手強いな…。だが失態を犯す訳にはいかん。徐々に陣形を立て直していくとするか)
しかしそこはカトゥーロ将軍の右腕、撤退しながらもデミックス連隊長率いる別動隊の猛攻を捌きながら陣形を徐々にではありますが立て直していきます。
カルロスとディーナはカトゥーロの直属部隊で、マーリンとロレッタはヴィクター率いる別動隊で殿を務め、迫りくる敵を捌いていきますが、新型の兵器には思ったように損害を与えられず苦戦を強いられます。
(何だあの鎧は…全然歯が立たねえぞ。どういうことだ…)
ディーナは後退しながらも力任せに鋼鉄の兵器をハンマーでガンガンぶん殴りますが中々ダメージを与えられません。
そこへ他の敵兵たちもディーナ目掛けて襲い掛かってきます。
カルロスは兵士達と共に敵を切り伏せながら、苦戦を強いられているディーナの元へ駆けつけ、
「准尉!退きましょう!これ以上は危険です!」
「クソが!覚えてやがれ…!」
悪態を付きながらもこれ以上の戦闘は危険と判断し、撤退を開始します。
しかし、カルロスは何かに気づいたようでカトゥーロの方まで一気に走っていきます。
一方別動隊の方でもロレッタが魔導兵器を使って鋼鉄の兵器を攻撃しますが、全く堪える様子がありません。
マーリンも奮戦しますが徐々に押されていきます。
(あたしの魔導兵器が効かない…?てことはこいつら重装兵じゃないのね)
「マーリン!こいつら重装兵じゃない!多分、機械だわ」
「機械?てことは電気仕掛け、か!」
「多分ね。かといって唯の雷撃じゃ効果がないけど」
「でかしたぜロレッタ!殿は俺に任せろ。お前は連隊長閣下に伝えに向かってくれ」
「ウス!くたばんじゃねーぞやんちゃ好きの王子様!」
そう言うとロレッタは一気にヴィクターの元へ向かいます。
ヴィクターとカトゥーロはほぼ同時にカルロスとロレッタから鋼鉄の兵器の特性を聞きました。
「でかしたカルロス、そうとわかりゃあ本格的に反撃準備開始だぜ!」
「分かった。反撃するのはしばらく引き付けてからだ」
報告を聞いた後もしばらく同じように撤退を続けていましたが、マルティム将軍は何か違和感を感じ始めます。
(この陣形…クソッ!嵌められたか!!)
「全軍撤退開始ー!!退けーっ!!」
異変を感じたマルティム将軍は全軍に撤退指示を出します。その号令を聞いた兵たちは撤退しようとしますが、次の瞬間にカトゥーロは大声で号令を出しました。
「今だーッ!携帯バリケードを空中へ射出!サンダー一斉掃射開始ーーッ!!!」
号令とともに一斉に戦線の兵士達が宝天商会から取り寄せた携帯バリケードを空中目掛けて射出します。次の瞬間、敵側の鋼鉄の兵器に対して一斉にとてつもない雷撃が走りました。
その結果、鋼鉄の兵器は一斉に機能を停止してしまいました。
そう、この瞬間が来るであろうことをカトゥーロは最初から予期していたのでした。
「反撃開始だ!!敵を蹴散らかせーッ!!」
号令とともに王国軍は一気に反撃を開始します。
ところが、マルティム将軍が本領を発揮するのはこの後からでした。
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