第14話 特訓
―ウル要塞近辺の診療所の病室
マーリン少尉が病室から出て行った後、カトゥーロはケインズ大将からの手紙を読みます。
「数日前、ガラディア公国と同盟を取り付けた。休暇が終わり次第、黄牙連邦に引導を渡しに行きなさい。 追伸:僕てぃんのハッピーライフの為に命を懸けて頑張るんだゾ♪☆(ゝω・)vキャピ」
カトゥーロは手紙を読み終えると、即座にその手紙をクシャクシャに丸めて病室の暖炉に投げ入れました。
(やる事成す事一々気色悪ぃ爺だぜ。何が『♪☆(ゝω・)vキャピ』だ。頭空っぽ野郎が舐め腐った態度取る時みてーな追伸までつけやがって)
ウル要塞陥落を予見していたケインズ大将は一足先にガラディア公国と同盟を結び、自らは一切戦わずして美味しい所を掻っ攫おうとしていたのでした。
先見の明こそ流石といえど、彼の目論見を知ったカトゥーロや部下たちからすれば当然気分のいい物ではなく、その狡猾さには嫌悪感を覚えずにはいられません。
そんな中、再び戸を叩く音が聞こえてきました。
「閣下。ローラ・イスヴァルドが戻りました」
外でローラ・イスヴァルドと名乗る者が診療所を訪ねた時、カトゥーロは少し面食らったようでした。
―ローラ・イスヴァルド
彼女はイスヴァルド王国の第一王女です。彼女もまた弟のマーリン同様カトゥーロを尊敬しています。
少女時代は荒れていた不良少女でしたが、当時密偵活動でイスヴァルド王国に来ていたオライオン帝国軍のレックス・フォンケル中尉に誘拐されそうになった際、
イスヴァルド王国軍の少尉になったばかりのカトゥーロが咄嗟の機転で、その場にあった石をレックスに投げつけ昏倒させて逮捕しました。
その時に命を救われて以来、礼儀正しかった彼に想いを寄せるようになった彼女は不良少女から改心し、軍へと志願します。
現在彼女は准将となり、カトゥーロからは別動隊の指揮等を任されています。
「あ、ああ。入ってくれ」
そう言うと、ローラ王女は病室に入ってきます。
「あぁっ…!!カトゥーロ様、何と手酷いお怪我をッ…!!」
「お、落ち着かれてください、王女様。私はこの通り無事ですから…」
入るや否やカトゥーロの負傷具合を見たローラ王女は泣き崩れますが、カトゥーロは優しく宥めます。
少しして落ち着きを取り戻したローラ王女…准将は戦果を報告します。
「閣下の見込み通り、黄牙連邦国境付近で背後から黄牙連邦軍が侵攻しようとしておりましたので即座に一掃して参りました」
「やはりな…よくやってくれた。手柄を立てた後で申し訳ないが貴官には早速遂行してもらいたい任務がある」
「ご命令とあらば何なりと」
「今回のウル要塞陥落の折、特別休暇を取得した。本日より20日間、しっかり休養を取るように」
「かしこまりました」
そう静かに言うとローラ・イスヴァルド准将は病室から去っていきました。
―場面代わって、ウル要塞城下町の広場
カルロスは噴水の近くで素振りの練習をしていました。
そこへカルロスを見かけたマーリンが嬉しそうに声を掛けました。
「ようカルロス!無事だったんだな、良かったよ…!」
「マーリン!お前も無事だったんだな…!こうしてまた会えて嬉しいぜ。黄牙の内乱、成功させたんだって?」
「へへ、何のことでございやしょーな?」
「さっすがぁ!やっぱりマーリンはすげぇよ」
「よせやい、お前だって1年前にオライオン帝国行ったとき裏工作してたろ?」
「あ~!それいうのナシだろ!?」
「お前ならやると思ってたぞ~、このこの~♪」
「おいテメェらぁ!!特訓始めるぞォ!!1分以内に支度しろォ!!」
再会してニヤニヤしながら話す二人の元へ突如鳴り響くローラ王女の怒号に二人は縮み上がります。
「出来ねえなら腕斬り落とす」
「「は、はい!!」」
カルロスもマーリンも大急ぎで持参したカバンから特訓服を取り出し、着替えに掛かります。
その様子を物陰で見ていたロレッタは面白がってみていましたが…
「ロレッタ、テメェもだ」
「…へ!?」
気が付くといつの間にか背後に回られ剣を首筋に突き付けられていました。
「遅れたら殺す」
「イエッサー!准将閣下!!」
青ざめたロレッタもまた大急ぎで物陰の中で特訓服に着替えました。
そして、噴水の近くで3人全員が集合しました。
「54秒もかかってんじゃねえか。あぁ?舐めてんのかコラ」
「……」
「罰としてテメェら全員腕立て伏せ500回、4分以内でやれ。用意、始め!!」
彼女の怒号が響いた瞬間、カルロス、マーリン、ロレッタの三人は死に物狂いで腕立て伏せを始めます。
5分後全員がどうにかやり切りましたが、ロレッタは完全に力尽き倒れこんでしまいました。
その様子を見たローラ王女は3人に意外な質問をします。
「気合も入った所でテメェらに技の稽古つけてやる。各々どんな技が良いか言ってみろ。ただし、ふざけた返答しやがったら容赦なくぶち殺す」
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