第11話 激戦の後始末
「…!!居たぞ、バイマンだ!!討ち取れ!!」
ケインズ中将の声を聴いた瞬間、彼の率いる部隊が一斉に瀕死のバイマンに襲い掛かります。
ところが、バイマンは不敵な笑みを浮かべます。
次の瞬間、バイマンの周囲をドッと突風が吹き荒び、葉が舞い散りました。
咄嗟にケインズ中将は持っていた槍を投擲しましたが、バイマンには当たりません。
舞い散った葉が収まるとバイマンはその場に居ませんでした。
咄嗟に上を見ると、何と箒に乗った魔女がバイマンを背負っていたのです。
「な、何だあれは…」
「ばいばーい♪イスヴァルドの皆さま」
魔女はバイマンを連れて立ち去ろうとします。
「魔導兵器、用意!!標的はあの魔女だ!!」
ケインズ中将が号令を掛けたのと同時に、魔導部隊は魔導兵器で魔女を攻撃しますがなぜか当たりません。
そうこうしているうちに、魔女は飛び去ってしまいました。
「閣下!追跡しますか?」
「待て、深追いはするな。この先はオライオン帝国領だ、今侵攻しても勝ち目は薄い」
部下が魔女を追跡しようとしましたが、ケインズ中将がそれを止めます。
バイマンをあと一歩のところまで追い詰めながら逃がしてしまった事にケインズ中将は気まずい表情を浮かべています。
そこへ、彼の掛け声を聞いたカトゥーロ一行がやってきます。
「バイマンは逃がしてしまった…マディア中将、申し訳ない」
「ケインズ中将、奴が逃げ去る際に何か気になったことは?」
「箒に乗った魔女がバイマンを連れ去っていった。それから魔女が飛び去る際に葉が舞い散っていた。あれは一体…」
「魔導兵器の一種だ。あのまま突っ込んだらあんたでも無事では済まんかったろう」
「すると、あの魔女は」
「エヴァ・ヨアヒム・ボルツの部下だろうな」
「あのマッドサイエンティスト、今やそれほどの物を開発していたとは…」
―エヴァ・ヨアヒム・ボルツ
バイマン将軍の妻でオライオンの科学者です。
魔科学研究所という彼女独自の研究所を有していますが、これはハインリッヒ3世からの援助で建設されたものでした。
極めて優秀な武器開発者で、光の矢などの強力な魔導武器を次々を開発した天才技術者で、ハインリッヒ3世からは技術少将の階級を与えらえています。
一方で人体実験などの非道な実験も数多く行うなど黒い面も知られていて、国内からの評判はさほど良くありません。
「バイマン将軍が負傷したと分かればオライオン帝国も黙ってはいまい…。国境付近に兵を集めるべきか?」
「いや、その必要はねえよ。黄牙やガラディアも居る以上、王都が手薄になったらそれはそれで怖いからな。なーに、ウル要塞は当面は持ちこたえてくれるさ」
「分かった。一先ず我々は王都に戻る。念のためだ、ある程度兵は置いていこう。何かあったら遠慮なく連絡してくれ」
「忙しい中ありがとな、ケインズ中将」
「これもイスヴァルド王国の為だ。今後も共に力を合わせよう、マディア中将」
ケインズ中将は兵をある程度ウル要塞の下町に残した後、兵を率いて王都に戻っていきました。
カトゥーロたちもウル要塞の周辺に戻っていきますが、要塞付近まで来て、ある事を思い出します。
「…あ、あの鬼が暴れまくって大分ぼろっちくなっちまったんだったわ。こいつは修繕が必要だな…どーしよ」
「修繕ですか…我々の部隊は如何せん戦いは得意ですが修繕ともなると不得手ですね。どうしたものか…」
カルロスやヴィクターとそんな事を話していると、商人らしき姿をした女性がカトゥーロの一団に近づいてきました。
「何奴!!」
「お、落ち着かれてくださいませ!何も怪しいものではござりませぬ!」
「ヴィクター、良い。お前は?」
「私、宝天商会の商人でございます。先ほどこちらにて大音声が聞こえまして足を運ばせていただきました」
女性の商人の話を聞いて少し気になったカトゥーロは要塞の話題を切り出します。
「実はここの要塞、大分崩れてるんだよね。そちらさん、修繕が得意な人いる?」
「ええ、おりますとも。もしよろしければ内部のご様子をお見せ頂けますかな?」
「いいだろう。だが妙な真似をしたら…」
「ヴィクター、だからそう脅かすなって…悪い、ビビらせちまった。いいぜ、案内するよ。見てってくれ」
そう言うと、カトゥーロらは女性の商人を要塞の内部へと案内します。
修繕が必要な箇所を見て回る事1時間ほど、一通り崩落した箇所を案内し終えたところで、商人は驚くことを口にします。
「ふーむ…思ったより、崩壊はしていないようですな。これなら4日と掛からず完璧に修繕できますぞ」
あまりにも信じがたい内容だったためか、ロレッタは商人に食って掛かります。
「おい、一度に二つも出任せ言ってんじゃねーぞ」
「出任せとは人聞きの悪い!真ですぞ?」
「落ち着け…あんだけボロボロだってのに4日とは随分でかく出たな。わかった、お前さんに任せるよ。必要なもんがあったら言ってくれよ」
そうカトゥーロは言うと商人はにんまり笑って自信満々に宣言します。
「かしこまりました、必ずや4日で修繕して見せますぞ。宝天商会の実力、とくとご覧あれ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます