第8話 起死回生

バイマンが本気を出すといった瞬間、再び轟音が要塞内に響き渡り床からは粉塵が舞い上がります。

嫌な予感を感じていたカトゥーロは轟音が響き渡る寸前に咄嗟に左側に身を躱しました。

粉塵が収まると、なんとバイマンが斧を振り下ろした一直線上の床に大きな地割れが出来ていたのでした。

そして、地割れの先には…


「ディーナアアアア!!ケイーーーン!」


バイマンはなんと卑劣にも再びヴィクターを狙ったのです。

ヴィクターにバイマンの一撃は届きませんでしたが、バイマンの飛ばした巨大な瓦礫から咄嗟に庇ったディーナやケインまでもが傷を負ってしまいました。

ディーナもケインも頭や肩から血を流しています。


「うぐっ…なんて強さだ…」

「畜生……情けねえ…」


ヴィクターのみならずディーナやケインまで浅からぬ傷を負いカトゥーロが混乱している刹那、バイマンがいきなり高速で突進してきます。


「ウオルァアアアアア!!!!」

「なっ…!」


カトゥーロは躱そうとしましたがあまりの突進の速さに諸に突進攻撃を喰らってしまい、空中に吹っ飛ばされてしまいます。


「うおぉぉぉッ!?」


カトゥーロを吹っ飛ばしたバイマンはニヤリと笑い、


「トドメだぁ!!死にやがれえええええええ!!!!」


カトゥーロ目掛けて斧を振り上げます。流石のカトゥーロも空中に居ては躱すことが出来ません。青い斧で受けようとしますが、バイマンの腕力が強すぎたため青い斧は大きく弾き飛ばされ、胴体に諸に攻撃を喰らってしまいました。


「うぐぁっ!!」


バイマンの攻撃を喰らったカトゥーロは更に吹っ飛ばされて壁に激突します。

更に激突した瞬間あまりの衝撃だったためにカトゥーロは吐血し、頭から血を流しています。


「ガフッ…ク、クソが!」

「ほう…今のでもまだ死なねえか。だが、てめぇは丸腰だ。今度こそ終わりだ…なぁっ!!」


バイマンが再び斧を振り下ろそうとした次の瞬間、バイマンは肩に衝撃を受け巨大な斧がカトゥーロから少しずれます。


「うおっ!?な、なんだぁ?」


なんと、バイマンの肩に青色の斧が直撃したのでした。

カルロスが咄嗟に青色の斧を投げつけ見事に当たったのです。

しかし、次の瞬間バイマンはカルロス目掛けて斧を振り下ろしました。

カルロスはギリギリ避けましたが、振り下ろした斧によって出来た地割れに足を取られてしまいました。


「うおぉっ!?」

「くどい真似しやがってこのクソガキが…!!」


怒り狂ったバイマンがカルロスを八つ裂きにしようと近づきます。

しかし、その一瞬の隙をカトゥーロは逃がしませんでした。

床から一気に飛び上がると青色の斧を回収し、咄嗟に天井まで飛ぶと、


「喰らえバイマン!!これが俺の怒りの一撃だああぁぁぁ!!」


天井から勢いをつけてバイマンの頭上目掛けて斧を振り下ろしたのです。

流石に避けられないと判断したバイマンは、巨大な斧で受けました。

しかし、これこそがカトゥーロの策略だったのです。

バイマンの周囲の床はバイマンが本気を出して大暴れしたせいで罅だらけとなっており、今にも最上階自体が崩壊しそうな勢いでした。


(まさか…!あの野郎、最初からこれを狙ってやがったのか!!)


バイマンはこの時になって初めて自分が彼の罠にかかったことを悟りました。

カトゥーロ・マディアはイスヴァルド王国でもアーサー大将と並ぶ最強の将軍で、常勝無敗のクラウスですら破れなかった名将です。

そのカトゥーロを自分が討ち取ればオライオン帝国の次期大将となることは明白でした。

更にバイマンはクラウスの皇帝に対する復讐心を察知しており、彼が大将軍になったらオライオン帝国に未来はないと考えていました。

なればこそ彼は功を焦るだろう…そう考えていたカトゥーロはバイマンがウル要塞から退かないであろう事まで読み切った上で敢えて敵地に出向いたのです。

先日イスヴァルド王国で盛大な宴を開いたのも、功を焦ったバイマンの一手を誘うためだったのです。


ドグォォォォンッ!!!


カトゥーロの強烈な一撃がバイマンの斧を直撃しました。

次の瞬間バイマンの周囲の床が崩れ、バイマンはカトゥーロと一緒に下へと落ちていきました。


「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ……」

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