第7話 バイマン・ヨアヒム・ボルツ 

カルロスらは突然響きわたった轟音に何が起こったのか混乱していましたが、状況を改めて把握すると更に混乱します。

何と城塞の壁がバラバラに砕け散り、ヴィクター以外にも巻き添えを食らった兵士は即死していたのです。

更に城塞の奥側には人間の骨が玉座の周囲に大量に捨てられているのが見て取れました。

その様子を見たカルロスとロレッタ、メリッサは恐怖すら覚えました。


(おい、なんだよ…あれ)

(あんなに!?いったい何人喰ってんの!?)

(まさか…人骨!?え、マジ!?人喰い鬼って噂マジだったの!?)


彼らは目を疑うような光景に驚きを隠せずにいましたが、そんな事などお構いなしとばかりに何とバイマンは卑劣にも傷ついたヴィクター目掛けて襲い掛かります。


「ギャハハハハハ!!まずは一人目だああああああ!!!!」


しかし、カトゥーロが倒れた兵士が使っていた青色の斧を咄嗟に拾うとバイマンの前に塞がり、振り下ろした斧を間一髪で食い止めました。


「ウオアアアッ!!」


ガキィン!!


バイマンの持つ巨大な斧とカトゥーロの持つ青色の斧が激しく克ち合い火花が散ります。


「ふぅ…戦いの最中に余所見とは感心しませんな?ボルツ中将殿…いや人喰い鬼さんよぉ」


カトゥーロはヴィクターを瀕死にしたバイマンに対して怒りの目を向けます。

するとバイマンはにんまり笑って、突撃の号令を掛けました。


「突撃開始!!敵は瀕死だぁ、一斉にかかれーっ!!」


その瞬間勢いが減じていた兵士たちの士気が戻り、ヴィクター目掛けて突撃を開始しました。

カルロスらも必死で応戦しますが、数が減った状態では流石に不利で徐々に押されていきます。


「くそ…つ、強え!」


そんな激戦の最中、バイマンの斧でカトゥーロは吹っ飛ばされてしまいます。

吹っ飛んだカトゥーロは物ともせず、起き上がると敵を押し返していきます。

彼も歴戦の戦士であり、白兵戦のプロ。相棒のヴィクターがやられていることもあり、怒りでボルテージも上がっています。


「オラァ!ハァッ!!チェリャアアア!!」


その様子を見た兵士達は恐れをなして一旦バイマンの後ろへと後退します。

そして兵士たちが後退した瞬間、


「ウルァアアア!!」


バイマンが巨大な斧を振り下ろします。

カトゥーロは寸前で躱しますが、その床は噴煙を上げて砕け散り、瓦礫が飛来します。

その後もバイマンは巨大な斧をぶんぶん振り回しながら突進してきました。

カトゥーロも応戦しますが、その力量差は如何ともしがたく、押されていきます。


「俺様はなぁ…お前を八つ裂きにして喰ったらどんな味がすんのか興味が沸いて仕方ねえんだ…それで夜も眠れねえんだわ」

「奇遇だね…俺もだよ。お前をぶっ殺した後の報酬がどんなもんになるか楽しみで楽しみでしょうがねえぜ!」

「さあ…もっと楽しもうぜ?血肉沸き踊る宴はこれからだぜええええええ!!」


テンションの上がったバイマンは周囲の床を巨大な斧で破壊しながら、カトゥーロをガンガン押していきます。

兵士達もじりじりと近寄りますが、流石に瓦礫が飛来しては危ないと見たのかある程度距離を取りながらカトゥーロ一行に詰めよっていきます。


「オラオラどうしたぁ?張り合いがねえじゃねえか!!もっと押して来いよオラァ!!」


バイマンの猛攻に殆ど反撃できず、カトゥーロはどんどん押されていきます。

壁にまで追い詰められついにこれまでと思われたその時、


パン!!


銃声が鳴り響き、バイマンの肩に銃弾が命中します。

バイマンの背後からケインが銃で射撃したのです。

ところが、銃弾はバイマンには当たらず鎧を掠っただけに留まったのです。


「そんな鈍で俺様に傷でも付けられるとでも…」

「閣下!!今です!!」

「デリャアアアア!!」


しかし、これがきっかけでバイマンの気を引くことには成功します。

その隙をカトゥーロは逃がさず、バイマンの頭目掛けて斧を振り上げます。


「うおぉっ!?」


バイマンは咄嗟に躱しました…が、実は斧の振り上げ自体がブラフで、咄嗟にカトゥーロはバイマンの肩目掛けて斧を振り下ろします。


「喰らえぇぇぇ!!!」


ザシュッ!!


流石のバイマンも躱すことは出来ず青色の斧の一撃をもろに喰らいます。

ところがこのカトゥーロの渾身の一撃ですらバイマンにとってはかすり傷に過ぎませんでした。そう、肉体自体も相当な強度であったため、かすり傷を付けるに留まってしまっていたのです。


「なっ…!これでかすり傷…だと?」

「…ほう。この俺様に一撃当てるとは随分とやるじゃねえか。いいだろう、そろそろ本気で相手してやるよ」


そう言った途端、バイマンの纏う雰囲気がそれまでとは別物になります。

バイマンの兵士たちですら相当な身の危険を感じたのか退散していきました。

カトゥーロはその様子を見て不穏な予感を感じましたが、もう後の祭り。

本当の地獄がこれから始まろうとしていたのです…。

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