第9話 死の間際で
カトゥーロの放った決死の一撃でバイマンは要塞から叩き落されそうになりますが、なんとすんでのところで最上階に出来た穴の淵に掴まりました。
バイマンが叩き落されそうになっている床の下は吹き抜けとなっていました。
更にウル要塞は高さにして100m越えという非常に高い要塞、そんな要塞の最上階から落ちればどうなるかは言うまでもありません。
カトゥーロはというと穴から少し離れた場所に吹き飛んでいましたが、どうにか起き上がります。
「うぐぐ…くそ…がっ…!!やって、くれやがったな…!!」
「そこに…居やがるのか…バイマン…、待ってろ…とどめ…を…」
ところがあと少しでトドメをさせそうな瞬間、カトゥーロはこれまでのダメージが祟りその場に倒れ伏してしまいます。
カトゥーロが倒れた様子を見たカルロスとドミニコは悲鳴を上げました。
「親父ーっ!!」
「閣下!!閣下ぁぁぁぁ!!」
カトゥーロの状態を察したバイマンは穴の淵から内心ほくそ笑みます。
(ついに俺様が斧に仕込んだ毒が効いてきやがったか。ここから這い上がってそのまま連中を皆殺しにしてやるぜ…!!)
ところが、次の瞬間なんと瀕死だったヴィクターが目を覚まし、
「うおおおおおおあ、おあああああああぁぁぁぁ!!!!」
なんと持っていた槍をバイマンのいる穴目掛けてぶん投げたのです。
そしてその槍は、バイマンの穴の淵に突き刺さり…
「しまっ…!」
バイマンがかろうじてつかんでいた穴の淵が崩れ落ちました。
掴む場所をなくしたバイマンは今度こそ一階へと落ちていきました。
「うおあおあああああおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ…」
バイマン中将が一階へと落ちていく様子を見せつけられた残り少数となっていたバイマンの兵士たちは支柱となっていた者を失った恐怖で一気に士気を失います。
丁度その時、ディーナやケインも負傷から持ち直しました。
更に、下を制圧したヴィクターの精鋭兵達も駆け付けます。
その様子を見たヴィクターは、兵士たちにこう呼びかけます。
「よく聞け!!今この時を以てバイマンは戦死した!!投降すれば命は保証しよう!!さあ、どうする!!」
バイマンが居なくなったことにより混乱を来していた兵士たちは勝ち目がないことを悟り、あっさり投降しました。
そして意識を失ったカトゥーロはというと…
――――――
「あ、目が覚めた」
「うおっ!?なんだここ?」
「なんだここって…家ですけど?」
「モルガーナ…俺は、俺は死んでるのか?」
「何言ってるんですか。今もこうしてピンピンしてるじゃないですか」
「はは、そうだな。ちょっと変な事言っちまったみてえだ」
「丁度朝ごはんが出来たので呼びに行こうとしてたんです。そしたら戸を開けたとたんに目が覚めて驚いちゃった」
「おお、今日はどんなメニューなのか楽しみだなぁ~♪モルガーナの飯はめちゃくちゃ美味いからな!」
バサッ…ドッドッドッドッ…
「じゃ~ん♪今日のメニューは人参のクリームシチューとぉ~、鱈とジャガイモのフライで~す♪」
「うおおおおぉぉぉ!!美味しそう…!いっただきます!!」
ムシャムシャ…
「おっほぉぉぉぉ!!美味ぇ!!フライのこってり度合と言い、クリームシチューの甘みととろみと言い最高の味わいだぜ!!こんなのが朝から食えるなんて最高!!」
「んも~、カトゥーロったら…♡」
「一生懸命よくできました!」
「一生懸命頑張って作りました!」
ムシャムシャ、ズズッ…
「そういえば、最近ガラディアで反乱が起きた話については聞きました?」
「ああ、お偉いさんから聞いたぜ。今の王様が圧政を敷いた影響で民衆が反発したんだ、と。とうとうツケが来たか」
「暴君ってどこにでもいるものなんですね」
「実は元から暴君だった、てケースは意外と多くないんだぜ」
「そうなんですか?」
「最初の内は名君だったが、突然強硬的な行動に出た、なんてのは歴史を見渡してみりゃあ意外とあるんだよ」
「国民が悪い、とか?」
「いや、その時の国情や価値観もあるだろうから国民だけが悪いとは言い切れねえ。色んな要素が絡み合って暴君にならざるを得ない、あるいはなっちまうなんてのは良くある話なんだ」
「国家全体の問題なのかな…」
「だろうね。そんな君主を選んだ、もしくは止められなかった国民に責任がないかと言われりゃあそうでもないからな。テメーの失敗を棚上げして脳死で他人をクソ呼ばわりする奴は国民だろうが権力者だろうが俺は好かん」
「権力者を選ぶのも国民の立派な役目なんですね」
「国民に限らず、自分たちのコミュニティを守るという意味ではまとめ役はどうしても必要になるからな。コミュニティの規模がでかいと尚更だぜ…ごちそうさん!んじゃ、今日も元気に行ってくるわ」
「いってらっしゃ~い!気を付けてくださいね~♪」
ガチャッ…バタンッ!
(うお、まぶしいな…)
――――――
「はっ…!俺は…一体?」
「親父!!よかった…!!目を覚ましてくれて…!!」
「閣下!!閣下ぁぁ!!あぁ…良かった!!本当に良かった…!!」
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