第19話 強者の意地
「うおおおおおおあああああああッ!!これで終わりだああああああッ!!!」
魔導兵器を発射しようとしたマルティムに、カトゥーロを守ろうとカルロスとロレッタは背後から襲い掛かります。
ところが、カルロスとロレッタが一撃を噛まそうとするとまたしてもマルティムはその場から消えていました。
「な、なにっ!?」
「消えた!?」
「いや、上だ!!」
なんとマルティムはカトゥーロに魔導兵器を発射すると見せかけてかなり上空へ飛び上がっていたのでした。
「喰らえ!燦巌流奥義!万死滅星ェッッ!!」
―『万死滅星』
燦巌家13代当主の燦巌威光(さんがんたけみつ)は今までの武術に行き詰まりを感じていました。
そんなある日のこと、彼は異国から魔導書(今の魔導兵器)が持ち込まれたことを知ります。
魔導書の効果に惹かれた威光は古来の武術と魔導書を使って全く新しい流派を生み出そうと試みたのでした。
当時こそ反発する弟子も居ましたが、完成した彼の奥義を見て考えを改めざるを得なくなりました。
その奥義こそ『万死滅星』だったのです。
この奥義のあまりの威力について、当時の文献に燦巌家の弟子の一人は次のように記載しています。
『…万死滅星といふ奥義は凄まじきに尽き、放りしばかりにきは一帯が荒れ野となるほどなりき。さほどの凄まじさに我はただ立ち尽くせり…』
参考文献「著:燦巌源十朗 猿でも分かる燦巌流 詫間文書 大陸歴423年 p.15~16」
次の瞬間、半径20mほどの広範囲の緑色の石のような弾幕が一斉にカトゥーロ一行に襲い掛かります。
致命傷は避けられたとはいえカトゥーロといえど全ては捌き切れず、肩や足に石礫を喰らってしまいます。
そしてカルロスとロレッタもまた剣や魔導兵器で弾幕をある程度は弾いたり躱したものの、腕や足に石礫を喰らいました。
「うぐぐぐ……」
「いった…」
しかし、マルティムは追撃の手を緩めずカトゥーロにつかみかかり、奥義を喰らわせようとします。
「ぶちかましてやるよ…万死滅せ…」
ところが言い終わる前にマルティムはいつの間にか頭から地面に叩きつけられていました。
「うがっ…ぐ…」
マルティムは首の骨が折れかけましたがどうにか持ちこたえます。
なんとカトゥーロは一瞬でマルティムを掴み返して俵返しを喰らわせたのでした。
これで終わりかと思いきやなんとマルティムは地面を殴って再度宙に舞い、
「将軍!掴まってください!!」
騎馬で駆けつけてきたデミックスに掴まり、その場を早急に立ち去ったのでした。
「ジャック!大丈夫か!?」
「か、閣下…僕の事は…気にしないで…下さい…」
「分かった、大人しくしてろ」
そう言うとカトゥーロはマントを千切って応急措置を施します。
そこへマーリンが駆けつけてきました。
「閣下!ご無事ですか!?」
「俺は問題ない。それよりこいつを頼む」
そう言ってマーリンに護衛隊長を任せると、
「敵はこちらの1/4以下だ!落ち着いて各個撃破に専念しろ!!」
黄牙連邦軍が少数であることを見抜き、兵たちに発破をかけます。
そう、黄牙連邦軍は機械兵器を含めると2万相当で王国軍とほぼ同数ですが、機械兵器を除けばなんと1/4に過ぎなかったのです。
カトゥーロの指摘によってそのことに気づいた王国軍は一気に勢いづき、再度黄牙連邦軍を押し返していきます。
カルロスとロレッタも即座に応急措置を施すと、黄牙連邦軍に猛攻を仕掛けます。
連邦軍も抵抗しますが、勢いづいた王国軍を押し返すには至らず徐々に押されていきます。
ところが、あと少しで連邦軍が総崩れになりそうだったその時、
ヒュンッ!!
なんと3mほどもある巨大な物体がカトゥーロの本陣を突っ切ったのでした。
カトゥーロは咄嗟に躱しましたが、その背後で数十人の兵士が犠牲となってしまいます。
「この技…狙いは俺か!」
そう、マルティムは再度カトゥーロを狙ってきたのでした。
「押しつぶしてやるよ!!喰らってくたばりやがれッ!!」
魔導兵器を応用して使い物にならなくなった機械兵器をカトゥーロ目掛けて次々に発射していきます。
カトゥーロはどうにか躱しますが、発射の度に十数人単位で犠牲になっていくので溜まったものではありません。
ところが、5発目を発射しようとしたときマルティムに頭が割れるほどの激痛が走ります。
「うがああああッ!!!」
次の瞬間、マルティムの鼻と目から血が溢れ出します。
(そうか…独眼点穴かッ…!あの一瞬で…やったというのかッ…!)
「将軍!!これ以上の交戦はもう無理です!!退避しましょう!!」
「クソ…!諦め…きれるかよ…!!負けられるかよ…!!!どう…すれば…!!」
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