Road To Aurora ~オーロラ大陸戦記~

@shogunsama

第1話 戦いの始まり

この星にはオーロラ大陸と北天大陸というとても大きな大陸があります。

北天大陸は氷だらけの未開の地でしたが、オーロラ大陸には四つの国がありました。


―イスヴァルド王国、オライオン帝国、ガラディア公国、黄牙連邦―


4つの国々はあるときは同盟を組み、またある時は敵対し、長い、長い時間、共存していました。


―大陸歴444年4月―


豊富な鉱物資源を巡り、緩衝地帯のライガッド丘に侵攻したオライオン帝国が大軍を率いてイスヴァルド王国と激突しました。

後にライガッド丘陵の激戦と呼ばれたこの戦いでは、イスヴァルド王国もオライオン帝国も多数の犠牲者を出し、その激戦の最中、地形が変化するほどの大地震が発生し両軍ともに撤退を余儀なくされました。

イスヴァルド王国にとっては国を守ることに成功した形とはなりましたが、この戦いを指揮したイスヴァルド王国のカトゥーロ・マディア将軍は素直に喜べませんでした。


「畜生…あのクソジジイ、とんでもねえ案件押し付けやがったな」

相対した敵の将軍がとてつもなく強かったのです。

負傷したカトゥーロは撤退の道すがらその将軍が送り付けてきた手紙を部下のケインとドミニコと一緒に読んで悪態をついていました。

「クラウス・ヴァッサーマンつったら無敗の軍神じゃねえか。道理で俺でも死にかけるわけだわ」

「…閣下でもお厳しいと?」

「大変お厳しゅうございますねケイン少尉。この戦い終わらせてとっとと将軍辞めてやろうと思ったらこれかよ…参ったね、これじゃ辞めるわけにもいかん」

「これからどうなさるの、カトゥーロ閣下?」

「…とりあえずは陛下に戦況報告と状況をご説明に行くぞ。まあ食って寝て過ごしてりゃそのうちいい考えでも浮かぶだろ、多分」

「は!」

「はぁい」


しかし、そんなカトゥーロ達の心配を他所にイスヴァルド王国の国民はこの戦いの結果に沸き立ちます。

帝国軍の3分の1の軍で大陸最強のオライオン帝国軍を退けることに成功したという事実はオライオン帝国の強さに絶望していたイスヴァルド王国を奮起させたのです。

オライオン帝国もまた浅からぬ衝撃を受けていました。

特にオライオン帝国のクラウス・ヴァッサーマン将軍は痛み分けに持ち込まれたことについて歯ぎしりして悔しがっていました。

「…あの将軍の名前は?」

「はい、カトゥーロ・マディアという者だそうです」

「早速奴の情報を調べろ。嗜好、性格、出自…何でもいい。かき集めるんだ。さあ早く!」

「は!」

クラウスは拳をわなわなと震わせていました。

「カトゥーロ・マディア…その名、一生忘れんぞ」


一方、イスヴァルド王国の王都オルセスに戻ったカトゥーロ将軍を迎えたのは民衆からの大歓声でした。


「カトゥーロ様万歳!!」

「カトゥーロ将軍に栄光あれ!!」


カトゥーロ一行はそんな大歓声に対して、あまり喜べない気分ではありながらも、そそくさと王城に入るとイスヴァルド国王のエドワード7世は大喜びで出迎えました。


「陛下。戦況のご報告に上がりました」

「おお!!カトゥーロ!!カトゥーロではないか!!よくぞ、よくぞ戻ってきてくれた!!」

「お出迎え頂き光栄にございます。しかし、恐れながらまずはご状況をご報告いたしたく存じます」

「少々取り乱してすまぬ…ではここで聞こうではないか、早速報告してくれ」

カトゥーロはエドワード7世に今回の戦況を報告しました。

敵を退ける事には成功したこと、味方の犠牲も少なからずあったこと、今後の方針について…

「む、そうか…わかった。国民にはわしから説明しよう。忙しくなるな…カトゥーロ将軍はしばし休まれよ。我が国の英雄にばかり負担をかけるわけにもゆかぬ」

「は、あり難き幸せ」

そう静かに言うとカトゥーロ一行は王城から出ていきました。

「さて、と。一先ずご報告は終わったな。次の予定は…」

「お会いになるんでしょ、息子さんと」

「そうだ!カルロス!2年ぶりの感動の再会、楽しみだぜ。あいつ元気にしてっかな」


ワクワクしながら王城から出て郊外の村へと出向くカトゥーロ一行。そこの小さな鍛錬場でカルロスが素振りの練習をしていました。

カルロスはカトゥーロに気づくやいなやうれしそうな声を上げます。

「おかえり、オヤジ!」

「只今カルロス!お父さん滅茶苦茶頑張ったぜ~!!」

2年ぶりの感動の再会で、親子同士強く抱き合います。

「あの戦いの話、聞いたよ!やっぱオヤジはすごいよ!!」

「なーに言ってんだよ!お前が居たから頑張れたんだぜ!それにお前、めちゃくちゃ逞しくなったじゃねえか!」

涙ながらの再会にケインとドミニコは嬉しそうな表情を浮かべ、雑談をします。

「うれしい再会ね」

「俺も結婚したらこういう時がくるんですかね」

「あら、考えてるのね」

「当たり前だっすよ!そういうドミニコ軍医はどうなんです?」

「それは…あら、なんか来てるわね」

言おうとした矢先、騎馬で走ってくる非常に大柄な騎士に気づいたカトゥーロ一行は騎士のほうに振り向きます。

「ヴィクター連隊長じゃありませんの。如何なさいまして?」

「たった今謎の傭兵団がここに迫ってるという話を聞いてここへ来た。狙いはおそらく閣下だ」

それを聞いたカトゥーロ一行はみな、険しい表情になります。

「へえ…親子の再会に水を差すとは面白え真似をしてくれるじゃねえか。一人残らず返り討ちにしてやるぜ。総員、戦闘用意!!」

カトゥーロの言葉で全員が武器を構え、臨戦態勢に入りました。

長い長いカトゥーロ将軍の戦いが今にも始まろうとしていたのでした…。


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