第18話 マルティムの本気

大陸歴444年5月、カトゥーロ・マディア中将率いるイスヴァルド王国軍とマルティム・ド・オーギュスタン中将率いる黄牙連邦軍は黄牙連邦領のギラナ・プルナ平原で激突しました。

最初は黄牙連邦軍がイスヴァルド王国軍に対して先手を打ちましたが、カトゥーロはしばらくして黄牙連邦軍の動きを看破、連邦軍を誘い込んで罠に嵌め機械兵器を機能停止に追い込みと、一転して猛攻撃を仕掛けます。

ところがマルティム将軍はこの程度で終わる程度の男ではありませんでした。


(これまでか…?いや、まだだ!俺はこんな所で終われない!終わってたまるか!!死ぬ前にあの破壊神に一撃くらいブチかましてやる!!)


そう考えると、マルティムは魔導兵器を応用してなんとその場にあった機能停止した機械兵器を盾にしました。

更にすぐさま直属の部隊にも自分と同様に機械兵器を盾にするよう指示したのです。

そして王国軍本隊から見てあと少しで黄牙連邦軍の本陣が見えるほどの距離に来た瞬間、


「突撃開始だ!!狙うはカトゥーロ・マディアの首ただ一つ!行くぞおおおおおッ!!」


その号令を聞いた瞬間、王国軍本隊のカトゥーロはしまった…!と感じました。


(まさか…『キリング・ウォール』か!クソが…噂に違わねえ強敵だぜ!!)


そう、マルティムは自らの死をも覚悟で機械兵器を盾にして次々に王国軍の本隊を蹴散らして、カトゥーロ目掛けて突っ込んできたのです。



―『キリング・ウォール』


大陸歴345年6月、オライオン帝国のパウル・フォン・メンデルスゾーン中将率いる帝国軍がガラディア公国のコッラ・エド・ユーディライネン中将率いる公国軍をライガッド丘陵で迎え撃ちました。帝国軍は1万、公国軍は4万と数としては大きく劣勢だったにも関わらず帝国軍は公国軍に突撃を行い挑発を繰り返しました。ところが何かの拍子に帝国軍は陣形が崩れてしまいます。

待ってましたとばかりに公国軍は一斉に突撃を行いましたが、あと少しで帝国軍の本陣に着くところで、なんと帝国軍の前衛は巨大な大盾を一斉に構えユーディライネン中将目掛けて一点集中して猛攻を仕掛けたのです。

先鋭化し質量爆弾と化した帝国軍の攻勢は凄まじく、あっという間にユーディライネン中将の本隊の元に辿り着き、逃げようとするも大盾に押しつぶされて圧殺されてしまいました。

結果、公国軍は総崩れとなり敗走する羽目になったのでした。

彼の名前を取って『パウルの反り盾』とも呼ばれるこの戦法はオライオン帝国の恐ろしさを大陸中に知らしめることとなったのです。


 参考文献「著:ハイドリッヒ・メルケル オライオン帝国戦史 エントヴルフ 大陸歴414年 p.146~147」



(な、なんだ!?巨大な機械兵器が突っ込んできやがる!)


前線で奮戦していたマーリンは巨大な大盾の部隊が突っ込んでくる所を見ると、たまらず咄嗟に横に躱しました。

ところが敵部隊の進行方向を見て、マーリンは一気に青ざめ、突撃する連邦軍を猛追します。


「ま、まずい…!閣下ぁあああああ!!」


カトゥーロもまた咄嗟に防御陣形に切り替え、迎撃しようとしますが次々に蹴散らされていきます。

そしてついにマルティム率いる敵部隊はあっという間にカトゥーロの率いる本陣まで辿り着き、


「喰らえ!これが俺の渾身の一撃だ!!」


マルティムが咆哮した次の瞬間、機械兵器の隙間から弾丸の嵐がカトゥーロの本隊に襲い掛かります。

一撃、と言いながら実は彼の魔導兵器は数百発を一斉に掃射する非常に高性能な代物です。

いくら本隊の兵士達といえど一溜りもなく一撃で数人が倒され、カトゥーロもまた全弾は防ぎきれず、肩と脇腹に数発弾丸を喰らってしまいます。


「やるじゃねえか…よぉ!!」


しかし、この程度で斃れるカトゥーロではありません。銀の斧を手にマルティムの突撃部隊をガンガン薙ぎ払い本隊の敵討ちとばかりに命を奪っていきます。

ところがマルティムはカトゥーロの後ろからカトゥーロ目掛けて攻撃を仕掛けに来ました。


「もう一発!!」


「なっ…!」


「閣下!!危ない!!」


流石にカトゥーロも反応が間に合わずもはやこれまでと思いきや、護衛隊長と部下の兵士達がマルティムの前に咄嗟に立ち塞がりマルティムの魔導兵器を受けきりました。

ところが護衛隊長と兵士達はその一撃で満身創痍となり、倒れ伏してしまいました。

しかし、その瞬間マルティムに一瞬の隙が出来ます。

カトゥーロはその隙を逃がしません。


「ちぇりゃああああああっ!!!」


「うぐぉぉっ!?」


カトゥーロはマルティムが盾代わりにしている機械兵器を銀の斧で弾いてのけました。

更に追撃を掛けマルティムのとどめを刺そうとするも機械兵器を斧で弾いた場所にマルティムはいませんでした。


「何ッ…!まさか…」


なんと、マルティムはまたしても一瞬でカトゥーロの背後に回っていたのでした。


「うおおおおおおあああああああッ!!これで終わりだああああああッ!!!」

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