第25話 激戦
黄牙連邦の存亡を賭けた戦いが繰り広げられる数日前、オライオン帝国城内にて…
オライオン帝国城内での閣議中、黄牙連邦から緊急の知らせが届きました。
『我が国はイスヴァルド王国の侵攻を受け、危機的な状況にある。至急援軍を送られたし』
この知らせを受けたハインリッヒ3世は少し考えてから…
「これ以上の遠征はせぬと宣言したばかり。援軍を送ることは出来ぬ」
この言葉に幕僚たちはざわつきます。
ウル要塞攻防戦での負傷の療養を終え今回の会議に参列していたバイマン中将も驚きを隠せず、思わずハインリッヒ3世に詰め寄ります。
「陛下、恐れながら黄牙連邦は我が国の同盟国であるはず。それに万一黄牙連邦が滅亡するとなれば今後更に不利になります。何卒御考え直しを…」
「バイマン将軍、我が国はこれ以上他国に余力を割く余裕はない。ウル要塞も落ち、国家の内情も荒れに荒れておるのだ。今は遠征を控え、イスヴァルド王国からの侵攻に備えるのが先だ」
「し、しかしそれでは黄牙連邦は!」
「バイマン中将、陛下は我が国に余裕はないと仰せです。私情を政治に挟まれませぬよう」
食い下がるバイマンをクラウスが冷静に制止します。
バイマンはクラウスを睨みつけながらも渋々と下がりました。
「各々国外からの侵攻に備え、軍備を整える事に専念せよ」
「「「はっ!!」」」
「…御意」
結局援軍を送らない事が決定し、この瞬間黄牙連邦の命運は決した…かに思えました。しかし、カトゥーロへの復讐に燃えるバイマンは諦めませんでした。
(冗談じゃねえぞ…!こうなったら俺様が独自で黄牙連邦へ出向いてイスヴァルド王国軍を蹴散らしてやらぁ!!)
バイマンは独断で軍隊を率いて黄牙連邦へ援軍として出向くことを決意するのでした。
とはいえいくら勇猛果敢な彼であっても難攻不落のウル要塞へ直接攻め込むことは至難の技でした。
やむを得ず自腹で戦艦を調達し着々とオライオン帝国領北東のゲブラ岬から黄牙連邦へ向かう準備を進める事にしたのです。
(カトゥーロ・マディア…次に出会った時がてめぇの最期だ、覚悟してやがれ)
――場所は戻り黄牙城城外、戦いは更に熾烈さを増していました。
レルム率いる黄牙連邦軍は宝玉の力で無限の回復力を持ち、イスヴァルド王国軍をじわじわと撃破していき、優勢と思われた王国軍は徐々に劣勢へと追い込まれていきます。
ところがしばらくすると前線付近で戦っていたカトゥーロは何か閃いたのか突如近くに落ちていた重鎧を持ち上げて…
ドガッ!!
何と近場に居た敵軍の兵士を叩き潰します。兵士は悲鳴もなく即死しましたがカトゥーロは辞めません。
ドガッ!ドガッ!グジャッ!!グジュッ!!!ビシャッ!!!
辺り一帯が兵士の血で血まみれになりましたが、それでも辞めません。
ついには重鎧の方が壊れてしまいます。もはや兵士は脳や臓器や骨があちこちに散らばりバラバラの肉塊と化していました。
異様な光景に敵味方双方の兵士たちが一瞬怯みます。
(さて…これなら宝玉の効果はあるかな?)
再び『女神の宝玉』の回復効果が発動しますが、バラバラの肉塊となった兵士は復活しませんでした。その様子を確認したカトゥーロはニヤリと笑い自軍の兵士に号令を掛けます。
「各部隊に次ぐ!敵の回復力には限界がある!!敵軍の兵士をバラバラの肉塊になるまで圧し潰せ!!勝機は我らにあり!!」
その一声が聞こえた瞬間、突如王国軍の本隊の背後から重鎧の塊が物凄い勢いで飛んでいき、敵兵を押しつぶします。
「質量爆弾じゃ!ヴィクター連隊長の分まで食らっとけやぁ!!!」
何とロレッタは重鎧を魔導兵器で持ち上げ、丸ごと敵兵ぶつけたのでした。
その一撃に王国軍は勢いづき一人また一人と黄牙連邦軍の兵士を圧し潰して肉塊へと変えていきます。連邦軍も残り半数を割り、ついにレルムの姿を捉えるところまで来ました。
ところがその瞬間レルムは『女神の宝玉』を再度発動しようとしていたのでした。
(今度こそ奴を仕留めてくれるわ…!!)
そしてその瞬間再度、『女神の宝玉』が強烈な光を放ちます…がその瞬間に銃弾が『女神の宝玉』を持つレルムの手に命中しました。銃弾はレルムの手を木っ端微塵にしました。その結果、『女神の宝玉』が転がり落ちたのです。
「うぐぉっ…!」
レルムが良く見るとケインが大分大き目な拳銃を構えています。そう、レイモンド・バーキン准将がウル要塞で獲得した新素材を使って銃を新調したのでした。
「ヒュー…効果グンバツだなこりゃあ…次の効果は使わせねえよ?俺だって伊達にスナイパーやってないんだぜ!」
ところが撃たれた瞬間、彼も地面に落ちた『女神の宝玉』も消えていました。
なんと高速化したレルムは専用の連射銃を構えて次々に王国兵を倒しまくり、カトゥーロの眼前に現れます。
「死ねえええええ!!」
そう、彼は『女神の宝玉』の効果で高速化していたのでした。カトゥーロは咄嗟の判断でその場にあった重鎧をレルムにぶつけようとします。ところがレルムはその場から大きく飛翔して重鎧を軽々と躱し…
「喰らえぃ!燦巌流奥義!!死兆狂咲ォォッ!!」
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