4章第10話 レーモンがこれからしたい事

 居酒屋の食べ物をたくさん食べては酔いつぶれた。


 ホタテのバター焼きにタコのから揚げなども食べて胃の中にはビールと油が溜まる。


 それが至福なのだ。


 私は酔った勢いでウィンドウに話しかける。


「ウィンドウ。私はお姫様になりたい」


「今さら何言ってるの? もうお姫様じゃないの。表にしても裏にしても」


「いや、本物のお姫様はねえ。結ばれたくても中々結ばれない恋をした方が感動できるし、私にとっては嬉しい事なの」


「それじゃあアマクサ王子と結婚は無理じゃない」


「何で?」


「そりゃあ、もうその勢いならすぐ結婚出来ちゃわない?」


「そーかー、じゃあせめてアマクサ王子が誰かしらの姫と強引に結婚させられてピンチな時に私が来るっていうのは?」


「何かデジャブ」


 私は転生前のお姫様と王子様のアニメ映画を鑑賞してそのような感動的な物語の妄想をしていた。最終的には結ばれてハッピーエンド。


 まさか、農民の6女に生まれた私がこんな幸せな生活を送れるとは夢にも思っていなかった。


 しかし、油断できない。魔物で私より強いのが出たら命を落とすかもしれないし、縛り付けチェスで勝負する際に私を徹底的に倒しに来る天才が現れるかもしれない。


 だから注意が必要だ。


「ウィンドウ、私の家族の事を話していい?」


「うん、何かな。気になる」


「私は農家の6女。上のお姉さんはニートで他の姉さんは嫁に出ているの。私は家出」


「どうして家出したの?」


「嫌になったの。贅沢におぼれて家庭をないがしろにした両親が」


 それはどうにもならない事。家を出た以上私は家族とは無縁。きっと姉さん達に会うこともないかもしれない。


 奇跡的に出会った時、一体何をしてくるだろう。


「そのお姉さんがもしクズだったら、どうする? 縛り付けチェスの対戦相手になってもらう?」


「それも決断しなきゃいけない。でもこれからはウィンドウが家族になってくれるよね」


「まあ、レーモンが望むなら」


「でも足りないなあ。やっぱり家族は多い方が賑わうからなあ」


「王子様と結婚して子供でも作れば」


「それもいいんだけどお~子作りはまだいいかな?」


 やりたいことがいっぱいある私に子供はまだ早い。


 しかし私はアマクサ王子と酔った勢いで一夜を過ごし、触れ合った。


 それでお腹の中に赤ちゃんがいる可能性もある。そうなったらその赤ちゃんは生かしておきたいため出産するつもりだ。


 それはきっとウィンドウも同じことかもしれない。むしろウィンドウがアマクサ王子の子を妊娠している可能性が高い。私よりも体の触れ合いが多かった気がするからだ。


 その場合は責任を取って結婚になってしまうか。その時に考えればいいだけの話だ。


 ウィンドウはすっかり眠そうだ。嘔吐をしていないだけましだが、お会計はしておかないとだ。


 そこで私はここで飲みを切り上げてお会計を行いウィンドウを連れて馬車に乗る。


 そしてダークフォレストに戻ると、一緒に寝ることにした。


 私はウィンドウを寝かせると、裸になって下着姿で寝る。


 するとウィンドウが私のほっぺを舐めてくる。


「ぐへへへへ、おいしそうな牛乳」


「ちょっと、ウィンドウ?」


 さらに抱き着いてくる。これもくすぐったい。それに男性に行為でやられている気分。


 胸を触れられお尻を揉まれるなどセクハラ行為もいいところだ。


 それに私も飲み過ぎで眠れずお手洗いに頻繁に行く。結局その日の夜はこれで終わった。


 次の日に私とウィンドウが目を覚ましたのは昼。


 この時間はすでに昼飯モードだったが、私とウィンドウは気にせず昼飯である牛肉ステーキを食べる。


 それがあまりにも美味しい。さらにライスが来て共に食せばあっという間に完食。


 すっきりとした。


 その後は昼風呂。廃宿とはいえ、露天風呂が3階の屋上にあり、なんとそこから海を見ることが出来る。


 その眺めをウィンドウと一緒に見る。


「いい眺めだね。それにお風呂もいいねえ」


「この風呂、スプリング王国でストーム王子も好んでる美容の湯」


「そうなんだ。透明なのにつやつやな感じが美容効果につながるの」


「うん、猫耳や猫尻尾が気持ち良くなる。あと疲労回復にもいい」


 確かにその通りだと私は思う。気持ちよいお湯と外気が合わさって心を豊かにしてくれる。


 これで昨日の酔い覚めにもなり頭の痛みがなくなる。黄色いドレスと黄金のティアラを着れば解決する話でもあるが、実際にこのお風呂に入った方が効果抜群。RPGゲームでいう回復の泉のよう。


 おまけに森の中にある屋敷なのに海が見れる。


「それに海が見れるんだね」


「この森は海の隣。この廃宿は森と海の狭間。だから海が見れるし森の香りも楽しめる」


 これはお風呂を楽しむためのウィンドウの工夫だった。


「面白いね」


「レーモン、これからどうするの?」


「そうだなあ、まずは檸檬畑を作ってみるかな?」


「そんな話を居酒屋でしてたね」


「そして商売にレモンサワーに檸檬料理。楽しみだなあ」


 私は楽しみだった。これからのことを。この世界に転生してどんなお姫様ライフを楽しむか、お風呂で考えている。

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