3章第8話 牛を倒して挽肉宴会

 町の外に牛の魔物がいるということで私はアマクサ王子とアメ地区を出る。


 町の外の方が、魔物が少なくて安全のようにも思えるが、建物があるとないとでは睡眠中の防衛力に影響する。


 今日は夕方に宴会をやろうというわけなのだが、そのために牛の魔物を狩るという。


 草原に何体か生息している牛の魔物のランクはE。名前は暴れ牛。


 その名の通り暴れまわる牛の魔物で私が転生前にテレビで見たことある闘牛と同じくらいの強さだ。


 体当たりされれば確実に死に至る。


 さて、私はアマクサ王子と牛の事で相談する。


「牛って言うならあれですか? 赤いマントで闘牛士のような」


「なんじゃそりゃ?」


「知らないのですか。赤い布で牛を誘って暴れさせて、疲れさせるやつです」


「そんなのがレーモンの国ではあるんだな。見てみたいぜ」


「はい……」


 そんなものはこの世界での生まれ故郷に存在するはずない。何しろそれは私の転生前の世界での競技なのだから。


 しかしこの世界に暴れ牛がいて、その牛も私が前にいた世界と同じような性能なら闘牛は可能だろう。


 それはさておき、どうやらお目当ての魔物が1体現れた。


 それは全長2メートルの大牛。暴れ牛だ。黒い毛に鋭く白い角。そして鬼のような目とデカい鳴き声。


 相手にとって不足はない。


 私はショットガンを構えて暴れ牛を攻撃する。


 その弾は暴れ牛の顔や角に命中するが、奴の頭は頑丈なのだろう。


 血を吹き出しても倒れる気配がない。それどころか私に向かって突進してくる。


「よけろ! レーモン!」


 私はアマクサ王子の声を聞いて暴れ牛の攻撃をかわす。


「ありがとうございます、アマクサ王子」


「油断するな。振り向くぞ!」


 暴れ牛は私のいる方向を向いて再び私に向かって突進してくる。


 そんな動きは読めていた。私は暴れ牛の突進攻撃を受ける前に左に飛んで、ショットガンで暴れ牛の腹を攻撃する。


 腹をやられた方が暴れ牛にはダメージのようだった。


 そうと分かれば勝機は私にある。


 私は暴れ牛の腹を狙って容赦なくショットガンで撃った。


 ショットガンの魔力弾は暴れ牛にどんどん当たって、暴れ牛は息絶えた。


 これにはアマクサ王子も喜ぶ。


「すげえなレーモン。この暴れ牛は昔、高級料理で使われていたんだぜ。なかなか現れないのと暴れ牛1体が10人で倒せるか倒せないかの魔物でな」


「そうなんですね……」


 レアで強い暴れ牛。Eランクの魔物でこれほどの強さ。ならその上のDランクは尋常じゃない魔物なんだろう。


 それはさておき、私はアマクサ王子と暴れ牛の死体を運んで屋敷で解体した。


 これにはゴーケツが驚いた。


「それは暴れ牛。どうやって」


 私は気楽に答える。


「普通に戦って倒しただけだよ」


「いえ、普通に戦って倒せる魔物じゃないですって。Eランクの魔物ですよ。人間10人が束になってようやく勝てる相手ですよ」


 驚くのも無理はない。確かに槍に弓、剣でこの暴れ牛を倒すのは困難だろう。それに突進攻撃はまともに食らえば即死、運が良くて意識不明の重症だろう。


 しかし、倒してしまえばそんなことは関係ない。むしろ無傷でこの暴れ牛を倒して食えるのだから、楽しみだ。


 ウィンドウは猫の亜人で魚が好きかと思ったが、魚よりも牛の肉の方が好物のようだ。


 暴れ牛を見て大人しい感じでもよだれを垂らしているので分かる。


 私は屋敷にあった綺麗なナプキンでウィンドウの口を洗う。


「よだれ出すぎ。汚いよ」


「ごめんなさい。つい……」


 ウィンドウは顔を赤くして下を向くと、両手の人差し指を合わせ始める。


 さらに後ろの尻尾が左右に動き回っていた。興奮しているようだ。


 クールビューティーな感じを見せるウィンドウでも興奮すると嬉しくなるのだろう。


 私はそんなウィンドウの両手を握る。


「今日は宴会だからね。お酒をたくさん飲んで酔いつぶれよう」


 私はお酒を飲む気満々だ。今日は楽しもうと思う。


 さて夕方から夜になるころになって、暴れ牛の解体を終えたアマクサ王子はゴーケツに暴れ牛の様々な部位を渡した。


 ゴーケツは料理の天才だった。その肉で様々な料理を作った。


 そして料理を屋敷の3階の最上階へ持ってくると、ありったけの瓶ビールを用意して私達を呼んだ。


「皆さま、今日は思う存分楽しんでください。酔いつぶれたら近くに布団用意したんで、思う存分寝れます」


 お酒を飲みすぎたため用なのか、部屋の近くにお手洗いもある。


それはそうと、私はアマクサ王子達と暴れ牛の肉料理がメインの宴会を楽しむ。


 その中でも暴れ牛のハンバーグは美味い。


 ウィンドウは顔を赤くして涙を流していた。


「うまい~ほっぺがおちそう~」


 信じられないほどのウィンドウの笑顔に私は驚いた。


 それもそのはず、本来なら高級料理のハンバーグをビールと一緒に飲めるのだから嬉しくて当たり前だろう。


 それだけではなく、お酒をじゃんじゃん飲めるという事もあってウィンドウも酔っぱらう。


「レーモンた~ん。肉ウマびよ」


「ウィンドウ、酔っているのね」


「う~ん。でもまだ序の口だよ。もっと酔ってやるよ」


 ウィンドウは瓶ビールを手に取って自分用のジョッキに瓶ビールのビールを入れる。そして一気に飲んだ。

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