3章第7話 巨大ネズミのボスの魔物

 一応結婚の約束になったかどうかは分からないがアマクサ王子と私はそうしたということにしておく。


 ここにずっと住むというわけにもいかない。一旦スプリング王国へ戻るつもりでもある。


 そんな状況の時に大きな音がした。


 気になったウィンドウが外へ出る。


「静かに」


 ウィンドウはそれだけを言う。


 私とアマクサ王子は焼き魚を食べながら外について話す。


「アマクサ王子、外はどうなっているの?」


「外か。それをウィンドウちゃんが調べているんじゃないか?」


「でも気になるし」


「気になるなら外へ出てみればいい」


 私は外へ出る。音の方へ行ってみる。


 音は大きくなっていき砂埃が舞う。


 その先を見てみたら、目の前にウィンドウが何かに追いかけられていた。


「助けてくれ、レーモン」


「ウィンドウ⁉」


 よく見たそれは、全長20メートルの巨大ネズミだった。大きさ的にもボスランクの強さといっていい。


ウィンドウは走りながら私を通り過ぎる。そして叫ぶ。


「そのネズミは危険だ。猫の私が逃げるくらいだから」


 猫がネズミに対して逃げ出すのもどうかと思うが、転生前のあるアニメでもかしこく強いネズミが猫を圧倒なんていう話はある。


 このネズミはただのネズミではないだろう。


 よく見たらこのネズミの魔物は知っている。ビックマウス。ボスランクDの強敵。RPGゲームで言えば中ボスレベルだ。


 ビックマウスは本来地面の奥深くに生息する魔物だが、臭い場所をかぎつけて地上にやってくるようで、土竜のように穴を掘ってここまでやってきたのだろう。


 ビックマウスはいきなり体当たりをしてくる。この体当たり攻撃を受ければ私でも致命傷のダメージを受けるし、怪我が治るにも時間がかかる。


 私は素早い反応でかわし、カウンターのショットガン攻撃を繰り出す。


 私はショットガンで10発ビックマウスに魔力弾をおみまいしてやった。


「ちゅうううううううううう!」


「どうだ! いいダメージだろ」


 ビックマウスは痛がっている。だが反撃で尻尾攻撃をしてきた。私はその攻撃を見切れなかった。


「いやあ!」


 とっさにショットガンで身を守るが、近くの建物の壁に激突した。


 明らかに内臓が破裂して血を吐いた。しかしそれも装備しているティアラで自動回復するから問題ない。


 ビックマウスは私を追い詰めたように見える。私は立ち上がることが出来てもフラフラだった。でも手は動く。


 ショットガンでビックマウスの目を狙う。


 狙いは正確ではないが、ネズミも目をやられたらただでは済まない。


「ちゅううううう! ちゅううう!」


 いい叫び声をあげるビックマウス。その声は大きく鼓膜が破けるほど。


 私はまだフラフラで魔力を消費すれば意識を失いそうだが、それでもショットガンを撃ち続ける。


 その弾の数発がビックマウスの足に命中する。


「足が動かなきゃ動けないでしょ」


 しかしビックマウスも中級のボス。足をやられたからって動けないわけじゃない。


 スピードは落ちたが走っている。


「ちゅうううううううううう!」


 鳴き声を上げながら私を噛みちぎるつもりだ。


 しかしそんな攻撃は私にはお見通し。


 私はショットガンを何十発も放ってビックマウスの口の中を攻撃する。


「ちゅううううう!」


 悲鳴が聞こえるという事は聞いているという事。失敗すれば食われてしまうが、ダメージは大きい。


 私は容赦なくビックマウスが口を開けた瞬間を狙ってショットガンで攻撃する。


 ビックマウスはその攻撃でもがき苦しんだ後、息絶えた。


 その時にウィンドウがアマクサ王子を連れてやってきた。


「レーモン!」


「ああ、ウィンドウ。アマクサ王子も」


 この時アマクサ王子がビックマウスの死体を見て驚く。


「待ってくれ、このビックマウスの死体は……レーモン1人でやったのか?」


「まあ、そんなところ」


「ビックマウスは町1つ滅ぼせる危険な魔物だ。それを1人でなんて……」


 アマクサ王子は驚いていたが無理もない。ビックマウスはそれくらい危険な魔物なのだ。


 兵士が何人か集まってようやく倒せる相手。それを1人で倒したのだから。


 そんなことで、アマクサ王子は私へのお礼のためか、ハンバーガーを作ってくれた。


 ちなみにウィンドウはビックマウスを解体していた。どうやらビックマウスの皮は高く売れるようだ。


「ハンバーガーかあ。ホームレスじゃあ食べれないと思ったけど」


「小麦粉に野菜もあるし、肉は草原の牛の肉だ」


「草原に牛がいるの?」


「魔物なんだがな。でも焼けば食えるから」


「そうなんだ。暴れ牛かな?」


「まあ、この世界じゃ人を襲う動物は魔物だからな。この町の外の草原は暴れ牛ってわけではないが、Eランクの魔物だ」


 Eランクだからそこそこ強いのだろうが、牛の魔物はランクが高ければ高いほど美味いということは教会で教わった。


 私が通っていた教会では肉を食すのは問題なく、一定の食べ物を食べたり国の常識を学ぶことを重視していたため、怪しい宗教ではなかった。


 だから私も安心して通えたし、いろんなことを学べた。


 今回のビックマウスも教会で学んだこと。私は教会に通って良かったと思っていた。

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