2章第9話 ストーム王子と居酒屋で
スプリング王国の港町の居酒屋は一般人がはいるような普通の居酒屋。
ビールやワイン、枝豆に魚介類といったものを楽しめる。私はストーム王子によって居酒屋の2人っきりのルームに案内される。
居酒屋に入った時の店員とその他の客の盛り上がりっぷりはすごかった。
「これはこれはストーム王子、今日も来てくれて光栄です」
「ああ、今日も来たくてな」
「しかも今日はかわいい女の子連れているじゃないですか。それも、とびっきりのお姫様ですねえ」
これに客は興奮してその中の中年男性が叫ぶ。
「おおおおおお! 王子様にも春がきたようですなあ! 女の子を居酒屋に誘えるなんて!」
それに続いて他の客たちが興奮する。
「そうでしたか。ついに春が! そして結婚ですか!」
「それならこの国も安泰ですな! わっははははははは」
喜ぶ客達を前に苦笑いのストーム王子。私も苦笑いして2人っきりの部屋へ行く。
一方でウィンドウは外で待機していた。
私は2人っきりのルームに入ると、ストーム王子が店員に赤ワインボトル1本とワイングラス2本を頼んだ。
「ワインは好きかな?」
「はい、ぶどうのコクがいいですよね」
「そうかい。でも俺は香りが好きだ」
「はい、香りも最高ですよね。癖になっちゃって」
そんな話をしていると、すぐに店員はワインを持ってきた。そして担当の者に赤ワイングラスの中に赤ワインをついでもらった。
「どうだい? 俺は王子だからこうやって店員はワインをついでくれるんだ」
「このワインの赤い感じがすごいです。これまで見たワインの中で綺麗です」
「そうだね。このワインはこの居酒屋でもかなり高価でね。俺のお気に入りなんだ」
「はい、香りも最高です」
「それじゃあ乾杯といこうか」
私はストーム王子と乾杯してワインを飲む。
アルコール度数が強くてすぐに酔ってしまいそうだが、それでもストーム王子が用意してくれたワイン。飲まないわけにはいかなかった。
私にとってこれは夢のようだった。
本物の王子様と今私は2人っきりでお食事をしている。これはお姫様になったといってもいい。
こういうのにあこがれて私はお姫様を目指していたのだから食事も豪華なのがいい。
そう思っていたが、この居酒屋にあるものは安い海鮮のおつまみ。
船盛にほっけ。さんまの塩焼き。白いご飯といったものだった。
「ストーム王子。これがここのメインですか?」
「そうだ。この港で取れる魚介類を使用していてね。この居酒屋の料理長の腕は一流で港で働く漁師とも良好な関係を築いている人望ある方なんだ。良ければ呼ぶぞ」
「呼ぶなんて、料理長は今他のお客様の料理の調理中なんじゃ?」
「大丈夫。そんなのは料理長の部下が対応している。だから呼ぶのは問題ない」
ストーム王子は店員に料理長を呼ぶよう頼んだ。
すると早急に店員は料理長を連れてきた。
「お待たせいたしました。こちらが料理長でございます」
その料理長というのが驚きで、小柄の水色のバンダナをつけた身長140センチの幼女だ。
「おまたせじゃのう。王子よ」
そしてのじゃロリ。
「料理長、今日は面白い子を連れてきた」
「料理長と呼ぶなかれ。レイナと呼ぶのじゃ」
「すまないレイナ」
「やれやれ、若さを維持できる食べ物や運動に温泉に入る週間を繰り返すというだけで100年も生きればこういう者の相手をしなければいかんとはのう」
この料理長レイナの言葉に私は反応する。
「100年生きてるってどういうことですか?」
「ああ、そなたにも話しておくが、わしはこう見えて100年生きとるんじゃ。若さを維持できるようにそのような食べ物を食し、運動と若さと健康維持の温泉入浴。これらを毎日行っていることでこのように若い少女のようになったのじゃ」
とんでもない話に私はびっくりする。若さってそれくらいのことでどうにでもなるものなのだろうかと思う。
でも実際そういうのは面倒くさくて途中でやめてしまう人だっているだろうし、それを考えれば毎日やれるのは凄いしそれくらいやれば若さを維持できるのだろう。
私には出来ないやり方だが参考にはなる。
私はレイナさんの若作りも気になるが、この料理の事も気になる為聞く。
「レイナさん。この海鮮はどのような料理ですか?」
「レーモンよ!」
「はい!」
突然キレて来たので悪いこと言ったと思いビビる私。しかしレイナさんの返答は面白いものだった。
「良き質問じゃな」
「ふぇ?」
「この海鮮はこのスプリング王国の海だからこそ取れる貴重な魚じゃ。温泉大国と呼ばれ、体に健康をもたらすこの国の海もまた生き物に健康をもたらす。つまり、魚は健康であり、害もなくこの国の者達がおいしく食べれる料理なのじゃよ」
「ほおお」
私には分かりにくい話だったがレイナさんにとってこの海鮮は民の健康をもたらすための貴重なものだということ。
またおいしさも貴重だということがレイナさんの考え方だった。
「素晴らしい考えです」
「分かってくれたかの?」
「はい。レイナさんの海鮮料理の熱意と思いが伝わりました」
「それはうれしいことじゃな」
レイナさんは機嫌よく笑った。
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