1章第10話 始まりの終わり
私が家を購入してベッドや調理道具、またタンスなど必要なものを購入した。
あっさり家を購入出来たので宿に連泊したのは7日間くらい。
マリアンちゃんにもお世話になったしお礼もかねて家に招待する。
「いい家だね」
「地味だよ。それにいつまでもここにはいない」
「そうなの?」
「時が来たら家を売って旅でもするよ」
「どんな?」
「お姫様を目指す旅……かな?」
「なるほどねえ」
こんな話をマリアンちゃんとして今日を終えた。
それからしばらく変わることのない日常が続いた。私の両親が刺客やお姉様達を差し向けて私を狙ってくると思ったがそんな気配も話もない。
きっと大金や贅沢を繰り返しているせいで私のことなど心配もしていないのだろう。畑仕事なんかよりもそういった生活に夢中となっているのだから。
私がいようがいまいがもうあの両親には関係のないこと。
私はそんなことは忘れ夢に向かってマリンブルンで育っていく。
そして5年の時が流れる。
町も発展し船も多く来るようになった。新たな店も増え気がつけば私は15歳。
魔物を倒したり図書館で勉強しながらこの世界の様々なことを学んだ。
そして私は銃の作り方をこの世界の知識を応用して作り上げた。
自らの魔力を銃に込めて引き金を引いたら魔力の弾が発射される魔法銃だ。
その銃はショットガンの構造で、発射した時の威力は未知数だろう。
私はそのショットガンを背中に背負いながら、新たに着るドレスと黄金のティアラを最近オープンしたばかりの高級よろず屋で購入した。
ちなみにドレスは黄色いドレスなのだが、ただのドレスではない。布が特殊な魔力を持つ布で着ているだけで魔力を回復する。これは魔法銃で魔力が減ってしまうのをカバーするためのもの。
そして黄金のティアラは体力を自動回復する効果があった。
傷がついても頭にこのティアラを被っているだけで癒しの魔力が頭から足先までを通り体力と傷を回復してくれる。
その効果は期待出来るほどあるわけではないが装備しないよりはましで休憩の際に傷が少しずつ治っていくのは応急処置の必要がなくなるからよい。
それにドレスもそうだが、ティアラもおしゃれという意味ではお姫様のようになるため私としては着ていたい。
私の身長は145センチで体重は45キロ。この歳になるまでの5年間で私は身長が伸びず、体重も軽くなるように努力した。
食事の量を減らし、運動を欠かさない。お腹がすいたら野菜と少量の魚料理を食べる。そういった生活を続けた。
ドレスとティアラの合計金額は金貨100枚だったが、私が払うには十分。この5年間でそれなりの金貨を貯めたからだ。
私はよろず屋で購入した黄色いドレスと黄金のティアラを着た後、マリアンちゃんと出会う。
「レーモンちゃん。すごくかわいい。本物のお姫様だよ。でももう15歳で成人。大人なのに」
「まだお姫様じゃないって。それに私は学ぶことを終えたばかりだし」
この世界の成人は15歳。お酒を飲めるのも15歳からだそう。国によっては20歳からというのもあるそうだが、基本は15歳から飲酒していい法律となっているそうだ。
だからマリアンちゃんが私を飲みに誘う。
「明日でお別れなんでしょ?」
「うん、家を売却出来たら即ね」
私は家の売却手続きと家具の売却を行っていた。5年間マリンブルンで暮らし、学校のような場所にもいった。そこでは教会で友達も出来た。
表向きは国や周辺諸国の情報をさぐるために作ったのだが、人間関係の構築も重要だと考えていた私にとってはいい思い出。
そんな友達からマリンブルンの南に温泉の国があると聞いて、そこへ向かう船が明日ここに来るらしかった。その船に乗るために私は明日旅立つ。
「まずはどこを目指すんだっけ?」
「南にあるスプリング王国って場所。あそこには温泉があるらしいんだ」
「そうなんだ。レーモンちゃんはお風呂が好きだからね」
「まあ、それもあるし、美容を求めるには温泉かなって」
「マッサージやエステと美容を中心にレーモンちゃんは勉強していたしね」
今の私の容姿は小柄な美少女。肌は白くてつやつやで綺麗。髪色も黄色くてつやつや。
胸もBカップで大きくないことから幼いのにしっかりものなかわいい女の子って感じだ。
しかしショットガンを背中に背負っているため、それについて他の人の目も変わってくる。
「これから美容だけではなくいろんな国に行ってお姫様になるため学んでくるよ」
「夢が叶うといいね」
そして次の日、家を売却した私はスプリング王国行きの船に乗船する前にマリアンちゃんや教会の友達の何人かに見送られる。
「元気でね」
「ありがとうみんな。お姫様になったらきっとここへ戻ってくるよ」
友達の1人が話しだす。
「お手紙もよこしてよ」
「うん。それじゃあいってきます」
その言葉を最後に私は船に乗った。旅に必要なものとして私は大きなポシェットに必要な荷物を持って船に乗る。
船に乗るのはこの世界では初めてのことだった。
「よし、私はお姫様になってみせるぞ!」
気合を入れて船の2階の屋上で叫ぶ私。私のこの世界でお姫様になる本当の物語が始まったのだ。
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