お姫様好きのキモオタ野郎、転生したら貧しい農民の6女だったが、チート能力を手に入れ王子様のような人と出会いお姫様となる。

長尾水香

序章 転生!

序章第1話 お姫様オタク 蜂見檸檬

 この俺、蜂見檸檬(はちみつれもん)はお姫様好きだ。


この世には様々なお姫様がいる。普通の女の子が王子様に好まれてお姫様になったり、生まれた時からお姫様だったり、好き放題なわがままなお姫様だったりと。


 そんな全てのお姫様にあこがれている。


 こんな言葉を聞いたことがある。1人の王子の「女の子はいつだって、誰だってお姫様さ」という言葉。


 確かに年寄りになっても女の子と呼べる年齢じゃなくなったってお姫様と呼んだって良い。それは人によるもの。


 そんな俺もこの世の女の子は全員お姫様だって思う。


 そんな話をMMORPGで一緒にプレイしているチャット仲間、アッポーさんは分かってくれない。アッポーさんは男性アバターを使っているが中身が男なのか女の子なのか分からない。


 しかし、女の子らしい感じで話してくる。それも俺のことをキモオタと馬鹿にする悪い感じで。


「レーモンさん、またお姫様の話なの?」


「そうだって。アッポーさん。お姫様は最高だよ!」


「キッモ。だから現実で彼女出来ないんじゃん」


「なんだそれは? そういうのは唯一1人だけしか選べない。今はいろんなお姫様を好んでいたい。彼女にする女の子はその中でも俺の心を打ち抜くほどのね」


「あー、うざ。ゲーム強いからゲーム内では結婚しているけど現実じゃありえんし」


 一応だが俺とアッポーさんはゲーム内で結婚している。とはいえ性別は逆だし俺の方が嫁という形になる。


しかし、アッポーさんの男アバターは強い戦士ってイメージでもゲームは苦手らしく、それを俺がフォローしている感じ。


 いわゆる戦闘で苦戦している王子様をお姫様が助けるというやつ。


 俺はレーモンという名前で女の子のアバターを操作して出来る限りお姫様の格好になるような装備にした。


 そして様々な強いスキルで魔物を倒していく。負けはほとんどない。


 そのおかげでアッポーさんにはゲームでは頼られるのにお姫様の話でドン引きされる。


「俺、もしアッポーさんが現実でも女の子だったら……好むぞ」


「何言ってんだよお前。そういうのいいから」


 お姫様を操作して魔物を倒すのは楽しい。別のゲームでもエディットでお姫様要素の女の子アバターを制作して楽しんだり、遊び感覚でヴァーチャルライバーになったりする。


 お金がかかることもあるが、こういった趣味のためなら安いもの。


 俺がサラリーマンとして働くのはこういった趣味を楽しむためだ。


 今日も1日レベル上げに強いお姫様装備を狙って頑張っていこうと思う。


 アッポーさんはそんな俺の趣味に興味はないがゲームで強くなりたいという思いがあった。


 その思いに答えて俺はアッポーさんをサポートしてレベル上げにも貢献する。


 ちなみにお姫様の装備を作るのに必要な素材をアッポーさんが手に入れていたら、お礼で受け取っている。


 アッポーさんにとってもいらない素材だから、何も文句は言わずに俺に素材を渡す。


「レーモンさん、これでいいのかな?」


「それでいいんだよ。アッポーさんが手伝ってくれるおかげで素材が集まるよ。期間限定装備がようやく出来そうだ」


「なんじゃそりゃ? まさか、黄緑のドレスってか? うわあ~」


「そのうわあ~って何?」


「ドン引きだよ。それ以外考えられないでしょ?」


 アッポーさんとしては俺の趣味や素材を渡すことは気にしていないが、気持ち悪い内容についてはドン引きする。


 それが最近の女の子なんだろう。しかし女の子は誰だってお姫様。そんな考えを持っていてお姫様好きの俺がアッポーさんを嫌うなんてありえない。


「ごめん、アッポーさんは俺のことを嫌っているよね。もっとアッポーさんの気持ちに答えないと」


「いや、そんなに自分を追い詰めなくていいって。確かにお姫様を好むことはキモって思う。でもいつもレーモンさんは私のために色々としてくれるじゃん」


「そんなの当たり前の事。困っている人を助けるのは当たり前なんだから」


「なんか……こっちこそごめん。レーモンさんは、本当は親切でいい人なのに」


 こういった話で盛り上がっているとすっかり深夜になっていた。


「そういえばもう深夜か。今日は寝るよ」


「そう、私も学校ある」


 アッポーさんは学生。ちなみに俺が社会人であることは、アッポーさんは知っている。


「俺は明日休みだからな」


「有給とったの?」


「そんなとこ。さぼりのようなものだけどね」


「さぼりね……お姫様関連でしょ」


「ハハハハハ。アッポーさんにはお見通しだな」


「何笑ってんのよ。ってか本当に笑ってる?」


「笑っているよ。さて、今日はログアウトだ。おやすみ」


「おやすみなさい」


 長くゲームを楽しむ俺とアッポーさんは学生と社会人という別々の立場だが、友という感じの関係である気がする。


 また明日もログインしたら出会える。お姫様の他に、アッポーさんとの繋がりも重視したいと俺は思った。


 俺はそんな気持ちで明日に備えて寝る。


 明日はお姫様関連のグッツを買おうと思っている。昔のお人形も好んでいるがぬいぐるみなども購入したい。そんな気分だった。

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