1章から4章外伝 帝国の第3皇太子
1章から4章外伝第1話
俺はワンダラー。世界最強の帝国、エレメント帝国の第10皇太子だ。皇帝の十男であることから、俺は皇帝の位とは無縁の存在だ。
しかし運命というのはこのことを言うのだろう。今現在次期皇帝と決まっている皇帝の長男のサーバ兄様の座を狙おうと7男のサーペント兄様が歯向かってきたことだ。
既に次男のバード兄様をはじめ、他の兄様達は婿養子に出ているか、あるいは病死したりしている。よって今帝国にいる皇太子は俺とサーバ兄様とサーペント兄様だけ。
サーバ兄様はすでに30歳で15の俺より15歳も年上、サーペント兄様は18歳で俺より3つ年上。
裏で暗躍を重ねているサーバ兄様の横暴を許すまいとサーペント兄様は反発しているのだろう。
今は皇帝である父上がご存命であるから、大きな争いはないが、父上が亡くなられれば帝国は内部分裂する。
だからといって後継者問題とは無縁の俺が関わる話じゃない。争うなら好きにすればいいし、国が亡ぶなら滅べばいい。
俺は1人、ただのん気に小さな領地で寝るだけだ。
俺の母親は皇帝の側室で身分は貴族。貴族と言っても弱小だから大したことない。
それでも母親が頭良かったからなのか、俺はスバ抜けた天才で幼少のころから読み書き、剣術と様々な分野で不得意な物がなかった。チェスやゴム飛び遊びと様々な遊びでも負けたことない。
鬼ごっこも得意だ。
それだけ頭の回転が速く通常の人間では決して届かない圧倒的な才能を持っていた。
だから人生が面白くないんだ。何をやっても成功するし、学ぶことあれば理解できるまで学ぶ。出来るまでやり続ける。たとえ死ぬことになっても。この俺に負けはなかった。
既に先を見て予想できる能力。対処できる能力が俺の強さ。
そんな俺は今日、側近の女剣士であるナナと食事をしていた。正直この食事も面白くないが、ナナとの会話は面白い。
ナナの父親は皇帝である父上の部下の1人でナナはその六女。女剣士として育てられたが5人の姉が父上の側で仕えているのに対し、ナナは能力不足で俺の部下になった。
でも剣の腕は姉たちと比べれば弱いが会話は姉たちと比べれば上手。
だから相談役にもなるし、何度ナナの話を聞いても飽きない。
「ワンダラー皇太子。昨日の指輪商人が金塊を持ってきましてびっくりでした」
「金塊? そんなもんが本当にあるんだな?」
「何を? おとぎ話の話だと思ってますか? 実際金の指輪なんて金塊で出来ているのですよ」
「そうだったのか。これは勉強になった」
「いえ、ワンダラー皇太子は覚えるのがお早いですから、私はどんどんワンダラー皇太子に教えられるだけ教えますよ」
「じゃあ剣術、武術だ」
「それはワンダラー皇太子が上かと」
俺もこの世の全ての事を知っているわけではないが、ナナはそんな俺をフォローしてくれる。
ナナは情報収集能力に優れている。俺にもそれくらいの能力はあるが、基本そんなことはしない。
興味があることは実行するが、興味なければ実行などしない。そういうことだ。ナナはさらに面白い話をする。それはウィング兄様の息子のことだ。
「皇帝陛下のご次男、スプリング王国の国王ウィング王の息子、ストーム王子がよからぬことをしているようです」
「なんだそりゃ?」
「何でもここ最近スプリング王国で裏カジノの者や目立った貴族に有名なお姫様が消息を絶っているって」
「それがウィング兄様の息子、俺の甥っ子と関係あるのか?」
「ストーム王子が部下に命令して排除してるとか。消息を絶った人たちはストーム王子の部下の馬車に乗ってから消息を絶っているそうです」
「気味が悪い話だ」
「そうですよね」
ナナの話について調べたら、消息を絶ったやつらはほとんどが裏でよからぬことをやってたクズ共だった。
俺もそいつらの話を聞いて胸糞悪くて聞いただけで夜も眠れないくらいだった。だから目をつけられて密かに始末されたのだろう。
しかしストーム王子もやってくれるものだ。
いずれはそいつと全面的にやりあうことになるだろう。
それはさておき、俺は午前中に政務をなんなくこなして飯を食って寝る。
部下任せだと思う者もいるかもしれないが、それくらいどうとでもなる。何か事があれば報告係がやってきて俺に報告してくる。
真夜中になると俺は起きて帝国の城下町へ出かける。もちろんナナを同行させてだ。
案外朝と昼よりも真夜中が面白い。それでも心を満たせない。心を満たすことが出来ないのだ。どんなに偉大な才能を持っても、どんな新たな発見をしても心が満たされることがない。
きっと俺はこの帝国の皇帝になっても心が満たされることはない。それなら皇帝の座などいらない。
なって退屈でむしろ苦痛となるようなものなどほしくはない。今の俺にとっての苦痛は絶対的な才能があることだ。
だから俺は求めている。絶対的な幸福、相談役のナナなんて比にならないほどの絶世の美少女。そして圧倒的なお笑いと圧倒的な命懸けのギャンブル。それくらいの心に火がつくようなことが俺にとっての喜び。それを俺はほしい。
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