1章第4話 運命の王子様
私が初めての異世界の風呂を堪能している頃、私の住んでいる家から少し離れた国、スプリング王国を支配している王族夫婦が温泉を楽しんでいた。
王様の名前はウィング・スプリング。女王のバード・スプリングと共に裸で温泉を楽しんでいた。
ウィングは婿養子で王となっただけではなく、実権も権力もウィングが持っていた。
その理由はスプリング王国以上の力を持つウィングが帝国の皇帝の次男だったことが理由だ。
「おお、このような温泉があるのか? これは効果抜群だ」
「この地の温泉は疲労回復、美容効果、体力に魔力も回復といった効果があります」
「それはつまり、負傷者をこの温泉で治せるというわけか?」
「はい、それくらいこの風呂はすごいのです」
「まさに神の湯というものだ」
ウィングが温泉でゆったりしながらもバードは帝国の義父の話をする。
「これならば、帝国の皇帝陛下も喜んでくれますよね?」
「ああ、父上か。そういえば皇帝の座を兄上に譲ると言っていたな」
「お義兄様の評判はよろしくありません。裏で何かを企んでいるという噂もあります」
「最近帝国内でも死人が多いと聞く。闇組織の者達もあのあたりにはびこっているようだからな」
このような事態をウィングが黙っていなかった。対策として兄との戦闘もあり得ると考えているのだろう。
しかしそんな事以上に心配なことがあった。ウィングもバードも心配している第1王子で次期国王となるストーム・スプリング王子のことだ。
「こんな時にストームは何をしているのかと」
「そんなことを言うな。俺らもこのように温泉にはいってくつろいでいるではないか?」
「あの子は言う事を聞かないのです。あれほど危険な魔物退治を護衛もなしに行ったり、武器や防具を集めたり、闇組織の人間ともつるんでいると聞きます」
「あいつも10歳か。つるむやつらはストームと同じ年齢のガキ共だぞ。闇組織と関係ない」
「その子達は闇組織の子達なのです」
ストーム王子が闇組織の子とつりんでいるとはいえ特にストーム王子が酷い目にあっているという報告はない。
そして何かしらの悪さをしたという報告もない。
心配なのは魔物と戦っているという事。しかもスプリング王国の魔物は中級の魔物ばかり。
豚の二足歩行の2メートルの魔物、オーク。二足歩行の熊の魔物、キラーベアー。人間と同じ背の高さの二足歩行の剣を持ったトカゲの魔物、ソードリザードなど様々な魔物がいた。
中でも凶暴なのが大きな蝙蝠の魔物、ジャイアントバッド。
空を飛んで襲ってくるため厄介だ。
しかし、ストーム王子はわずか10歳にして仲間と協力して中級の魔物を倒していく。
オークが現れた時は仲間に弓矢を放たせ、弱ったところでストーム王子が鉄の剣でオークを斬る。
このような動きを繰り返していた。
しかも彼らは全員私服で鎧はつけていない。
これについてもウィングが心配しているところだったが、しかしストーム王子には考えがあった。
ストーム王子の連れのタイフーンはストーム王子に鎧などの防具を着ない理由を聞く。
「ストーム様、鎧と兜はよろしのですか?」
「あんなものは防御力を上げるだけの装備。身につければ重くなる」
「ですが、安全な装備です。貫通すればひとたまりもありません」
「ではボロボロな鎧兜でも貫通はしないと言えるか?」
「いえ……それは」
タイフーンは何も言い返すことが出来ず、黙り込んだ。
「鎧兜は重いだけで動きを遅くする。それなら動きやすい格好で動くのだ」
ストーム王子はそう言って次の獲物を狙う。森を抜けだし山道を歩くところでストーム王子とタイフーンをはじめとしたストーム王子の連れは、ジャイアントバッドの群れを発見する。
「おお、ジャイアントバッドがあんなにもいるのか?」
タイフーンはストーム王子を説得する。この数では明らかにストーム王子の方が不利だからだ。
「逃げましょうストーム様。あの数はキラーベアーやソードリザードの何十倍も恐ろしいです」
「ジャイアントバッドは中級の中でも下級。群れで来ようが同じだ」
「中級の中の下級だからこそ群れで行動するのです。この群れを相手にした凄腕の旅人が命を落としているなんて話も聞きます」
「らしいな。父上から聞いた」
タイフーンは必死に説得するもストーム王子はタイフーンに弓矢をくれるように要求した。
「弓矢を俺に渡せ」
「まさか、ジャイアントバッドを?」
「一匹やるぜ。お前らも奴らを狙え」
「なんと!」
流石に無茶だと思ったタイフーンだが、王子の命令は聞かなければいけないと思い弓矢をストーム王子に渡す。
ストーム王子は容赦なく弓矢でジャイアントバット1匹を倒す。
それに気がついたジャイアントバッド達が一斉に襲い掛かろうとするが、ストーム王子は素早い動きで矢を放っていきジャイアントバッドを圧倒した。
もちろん連れの弓攻撃もあるため、ジャイアントバッドは思うように襲い掛かることが出来ない。
形勢不利と判断したジャイアントバッドの群れだが、ストーム王子はそれを見逃さず弓矢をタイフーンに返すと鉄の剣を持って逃げていくジャイアントバッドを追って斬りつける。
ジャイアントバッドの群れは混乱状態となり次々とストーム王子に倒されていった。
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