1章から4章外伝第4話

 ちなみに民に危害が出ないようにするのと暗殺女が逃げられないように柵の周りには協力な結界がはられてある。


 この結界は物理攻撃でも何百何千回と攻撃すれば壊れる魔法道具で作り上げた結界だが、この暗殺女を脱出させないようにするにはちょうど良いものだった。


 暗殺女はボロボロになるも、ナイフを使いこなしてギガデビルの弱点を攻撃する。どうやら暗殺のプロで腕の立つようだ。


 しかしギガデビルに足を掴まれ、地面に叩きつけられる。


 その衝撃であばら骨は骨折して内臓も破裂したはず。暗殺女は血を吐く。


 それでも戦い続ける。やがてギガデビルの方が弱っていき最終的には暗殺女にとどめを刺されて倒された。


 これにより民は興ざめだ。俺はダースにこのことを説明する。


「全然面白くないし民はがっかりしている。これで終わりか?」


「お忘れですか。ここで保険を発動します」


「そういえばそんなことも言っていたな」


 ダースがダースの部下に合図を送ると、土の中から何か出てきた。全部で30体はいる。


 それは身長が人間と同じのミイラだ。包帯グルグルで巻かれているミイラの魔物だ。


「何だミイラか」


「ただのミイラではありません」


「どういうことだ」


「ぜひお楽しみください」


 ミイラ達は暗殺女におそいかかる。この時の暗殺女はもうボロボロ。まともに戦えない。しかもミイラにナイフが通らない。そしてミイラの素手攻撃はかなりダメージを喰らうものだった。


ミイラ達は容赦なく暗殺女をひっかいたり蹴ったりして攻撃する。


 あるミイラは体当たりをしたりして攻撃した。


 暗殺女は30体のミイラにボロボロにやられ、悲鳴を上げる。


 その悲鳴が聞きたかった。そして無様にやられる姿は美しいものだった。特に露出度の高い暗殺者が大怪我で体中から血を流している姿は見物だ。


 弱ってきた暗殺女だが、容赦はしない。俺はもっと苦しませるようにダースに指示を出す。


「中々面白いぞ。だが足りないな。もっと苦しませろ!」


「かしこまりました」


 ミイラ達は出来る限り殺さないよういたぶった。それを1時間続けた時に暗殺女は息絶えた。


 ミイラ達はそのままダースの部下に始末され、暗殺女の遺体はミイラ達やギガデビルの遺体と共に回収された。


 ダースは俺に感想を聞く。


「いかがでしたか? このショーは楽しめましたか?」


「ああ、集団で死なないように苦しませる公開処刑。死ぬほど辛いだろう」


「はい、そういう時、人は速く死にたいと思うのです」


 戦闘は思う存分に楽しめた。次は舞姫の登場だ。


 舞姫はベリーダンサーが出てきた。セクシーな女ならばこの俺の心を虜に出来るだろうとダースは思っていただろう。


 しかしそれは普通の男だとか変態野郎の場合。俺はそうじゃない。


 だから酔っていてもベリーダンスを心行くまで楽しめない。


 ダースが俺の様子を見て舞姫を変えるように指示を出す。


「ワンダラー皇太子殿下はベリーダンスを好まないようだ。では子供ダンサーだ」


 次は子供ダンサー。お遊戯を見せて俺の罪深い欲を出させようとするつもりだが、当然これもだめ。


 こういうのは精神的に良くない。ナナは好んで見ているようだ。おそらくお遊戯を頑張っている妹を見るお姉さん気分だろう。


 実際俺には姉や妹がいてそういうお遊戯的なことはあったから分かる。


 「それもダメだ」と俺はダースに指示を出した。ダースはすぐに子供ダンサー達にお遊戯をやめるよう指示を出した。


 そして次のダンサーが出る。これでだめなら俺の気分は悪くなる。


 しかし最後の1人というのが、俺の心を貫く踊り子だった。


「おい、ダース」


「はい、ワンダラー皇太子殿下。この者は先ほどの者達よりもいい味を出していません。追い返しましょう」


「違う。あのダンサーは?」


「はあ、遠くの村から踊り子の修行でやってきたとかいう小娘です」


 年齢は15歳といったところだろうか。白い肌で布面積が多い踊り子の服。ちゃんとお腹と脇が見えているが腕を隠し、足も隠している。胸も隠せていることから過激な露出じゃない。


 なのになぜだろうが、美しい魅力を感じる。髪型もサイドテールで髪飾りも可愛い。


 サイドテールのリボンも黄色いリボンをつけていてかわいい。


 かわいさに肌の美しさ。そしてセクシーな部分を見せつけられる女の子。


 しかも彼女は踊りながら歌う。おそらく魔法道具を使っているのだろう。声がちゃんと響き渡る。


 ナナはこの子を良くは思っておらず、ダースも良いとは思っていないようだ。しかし俺は違う。良いと思う。


 民全員も彼女のダンスは良く思っていないようだ。ダースは俺に相談しようとするが俺は固まったままでその声は届いていなかった。


「ワンダラー皇太子殿下。この者はあまりにも美しくありません。民も落ち込んでいます。今すぐにやめさせましょう」


 俺は固まっている。


「あの、ワンダラー皇太子殿下、殿下!」


「おお、すまない。見惚れていた」


「見惚れていた。どういうことです?」


「あのダンサーだ。面白き者ではないか」


「本気で言っているのですか?」


 さすがのダースも俺の発言にはドン引きのようだ。

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