2章第2話 ストーム王子の新計画
ガーゴイルは金の温泉で力をつけてはいるが、ストーム王子を倒して温泉の所有権を独占することを企んでいた。
それにより大金を得られるからだ。それはストーム王子も同じ考えだった。
温泉饅頭を食いながらタイフーンと共にガーゴイルの持つ金の温泉に目をつけていた。
「どうだタイフーン、この温泉饅頭は。味がこれまで食べてきた温泉饅頭よりも美味いぞ」
「はい。硫黄の温泉の饅頭は、他の温泉と比較しても沸騰など蒸し具合が違います」
「このまま金の温泉を手に入れられれば、最高の温泉饅頭が食えるというものだ」
「あそこはガーゴイル王子が独占している温泉でございます。あそこを奪い取れば、今より倍以上の金が手に入ります」
ガーゴイルは政敵ではあるが、ストーム王子にとってはたった1人の従弟。親族を討伐することは辛いと彼は思っていた。
「奴を倒すのは辛い。親族をまた失うことになる。父は亡く母もご病気な時に」
「甘さは命取りです。ここは心を鬼にしてガーゴイル王子を倒すべきかと」
「そうか、だが大義名分もない。ただ単に奴を倒せば、俺は親族殺しの汚名を残すことになる」
「はい、ですから時を待つのです」
「待つと言っても、次期皇帝の叔父、親父の兄にあたる皇子はガーゴイルを気に入っているようだぞ」
「ガーゴイル王子は次期皇帝の皇子をいくども金の温泉にご招待しております。それもあってお2人は良好な関係であるのです」
「困ったものだ」
ストーム王子にとってガーゴイル王子を倒してでも金の温泉を手に入れることは、国の経済を安定させるためにも必要不可欠だった。しかし大義名分がないため手が出せない状況だった。
考えすぎて頭を痛めるのも良くはないとストーム王子は思って、タイフーンと温泉に入る。
その温泉はストーム王子お気に入りの温泉で疲労回復、魔力回復、美容効果などの様々な効果を持つ温泉。
ガーゴイル王子が独占する金の温泉ほどの効果はないが頭の疲れなどを癒すにはちょうど良い温泉だ。
しかもその温泉だけはストーム王子とその身内、そしてストーム王子に許された者しか入れない貴重な温泉なのだ。
「この温泉はいいものだ。金の温泉ほどではないがな」
「ストーム王子は先王以上の温泉好きですな」
「温泉だけではなく、それと似た効果を持つ風呂なら何でも好きだがな」
「素晴らしき事かと。ストーム王子だけではなく、このタイフーンの体が美貌であることもストーム王子のおかげというものです」
「はははははっ。そんなに褒めるな。もしそうならガーゴイルの方がよほど女にモテモテというものだ」
「だからこそ我々もあの金の温泉がほしいのですがね」
「金の温泉は今はいいだろう。その前に手に入れておきたい温泉がある」
「山奥の温泉ですね」
「違う。あれは考えても結論が出ない。今は保留だ」
「では何でざいますか?」
「銀の温泉だ」
「銀でございますか?」
「ああ、ガーゴイルが独占している金の温泉ほどの効果はないが、手に入れられれば奴と並ぶほどの力を持てる」
銀の温泉はガーゴイルも狙っているみたいだが、中々発見されないらしい。それもそうで金の温泉と同じで伝説並みに見つからないとされる温泉。
金の温泉はガーゴイルが長い年月をかけ、血みどろになってようやく見つけたもの。
伝説というのは本に書かれている内容だけで本当にあるかどうかは分からない存在。
しかし金の温泉をガーゴイルが見つけたのだから銀の温泉がないはずがないとストーム王子は思っていた。
そこで今は銀の温泉に注力しようと思ったのだ。
「銀の温泉を見つけるにしても本には温泉の効果と、どんな色かという事が書かれているだけで手がかりもありません」
「ガーゴイルの独占している地域に金の温泉があったんだ。銀の温泉もあるはずだろう」
「はい。しかし探し出すには長い年月と莫大な費用が掛かるでしょう」
「金なら使えるだけ使え。こういう時にこそ使うべきだからな」
「かしこまりました。それで銀の温泉を探し出す担当はどなたにいたしましょう?」
「俺がやる」
「ストーム王子、これまでの温泉は容易でもさすがに伝説の温泉となれば危険です」
「だからこそ自分で見つけることが大事だ。それに俺が見つけたとなれば俺の手柄ともいえる」
「周囲にはどのような魔物が潜んでいるか分からないのですぞ」
「まあそう言うな」
ストーム王子は簡単に考えていたが、タイフーンが心配するのも無理はなかった。
妄想を現実にすることなど簡単な話ではない。難しい話であるのと同時に過酷なこと。
銀の温泉を見つけ出すには遠出をして深く穴を掘り、強い魔物と戦うという重労働だ。
そんなことをストーム王子が喜んでやるとは考えられない。
だからタイフーンが心配するのだ。
とはいえこの計画を実行しなければいずれガーゴイルがスプリング王国の実権を握り王位につくことは明白。
それだけは阻止したいと思うことはタイフーンも同じ気持ちだった。
タイフーンは出来る限りの優秀な者を集め、銀の温泉を探し出すのだった。
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