第17話 魔法
「ここら辺かな?」
ヴァロザは深夜すぎ、ノノノタ地方にいた。ククスと口喧嘩(?)をしたのち、帝都から直行したのだ。
ちなみにだが、ククスが付けると言ってた人員はここにはいない。置いていかれた本人たちは、待ち合わせにこないヴァロザにどうすればいいのかと右往左往している。間違いなくわざとやっている。
それだと言うのに『今頃、ククスは怒っているのかな』なんてヴァロザご本人はとても楽しそうである。ここにククスがいたら『いいご身分ですね』と皮肉を言うのか、ガチ目にキレるのか。ヴァロザにもわからない。
だが、そんなのはどうだって良い。などという関係者一同ブチギレ案件の思考を展開しながら目的地へと向かう。
運命の改変を行なったと思われる、その場所に。
ついた先はなんの変哲もない畑に草原、林に森に。
──まぁなんて言うか、
「田舎だな〜」
と、本音がダダ漏れ状態だ。
「なんもない。マジでなんもない。……人目を憚ったってことかな?」
ストン、と草原の上に降り立ち、考えを整理している。出た結論は
「ん〜、もうちょっと先かな?」
というもの。
なんだこの時間はと思うかもしれないが、これは必要なものだった。なぜなら、運命を知覚すると言うのはそれだけで大きな負担だ。そこに、神法を行使することが加わったらもう無理だ。
ヴァロザは才能があるし、長い間生きてきた経験もある。それでも無理なものは無理なのだ。
ということで、地上に降りて場所を確認したヴァロザは再び空へと飛ぶ。
だが、行き先はもう目の前だ。
あの、丘で運命に誰かが干渉した。
間違いない。
その考えは丘の上に立った時、より一層深まった。なんとなくといった漠然とした判断ではない。
昨日、この場所で、誰かが生死を捻じ曲げた。
よく見れば見るほどその考えは強くなる。
ただ、一つ悲報があった。ここで行使された運命改変の力。それはかつて恐れられ、それゆえに追いやられた“旧神”が介入したもの。つまり、魔法の力だ。
あたりに残る力の残滓、あと数時間遅ければ消えてしまいそうなその力が、見える。この力が、運命を改変したものなのだ。運命そのものを知覚し、その奥底までを暴くことはとても難しい。しかしながら、運命改変の力が行使されたその場所であれば、どうしても運命に干渉するその前段階、場の支配という工程を挟まなければいけないのだ。
だからこそ断定できる。
これは“旧神”の、それも相当強く気に入られた奴の魔法だ、と。
見逃すことはできない。
徹底的に調べなければ。
旧神などに頼る愚か者には“死”こそお似合いだ。たとえ、どんな理由があろうとも、たとえ、その先に死が待っていようとも。
ヴァロザは運命を見る。
その瞳には、何が映っているのか。そんなことは本人にしかわからず、月の光できらめくがただ冷淡な感情を称えているように思わせるだけだった。
と、そこへ
「もぉ、速いですよ〜」
「置いていかないでください。こちらも困ってしまいます」
背後から五名、音もなく現れた。ククスが呼んだ隊の声に、ヴァロザは少し驚き振り向く。
「あれ、思ったより早かったわね」
「ククス様から『さっさと向かうんだ!』と言われましたので。それで、なぜここに?」
「ん? ククスから話を聞いてないの?」
「ククス様からはヴァロザ様の補佐をとしか……」
「そっか〜。私の話はともかく、ここでなんかあったの?」
「いいえ、ここでつい昨日、一人異世界人の処理を行ったので……」
「あはっ、そうかその可能性があったか。私としたことが、それを忘れるとは、耄碌しちゃったかな?」
「あの、本当に何があったのですか?」
「いやいや、ん〜、説明しちゃっていいか! 昨日だけどね、ここで“旧神”の力を借りて人の生死に干渉するようなやつがいたんだよ」
「そっ、それは」
「間違いなく、とまではいえないけど、その異世界人が関わってるでしょ。違ったら逆に何があったんだよって言いたいよ」
「では?」
「明日から、いや今からでも、その異世界人を探さなきゃね〜」
大変になことになった、とヴァロザの話を聞き、彼らは思った。
そして、彼らの視線が向かう先は──ロロス・イラムース。
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