第39話
「あぁ、モア。違うわよ?クリストフェッル家と一緒にしないで頂戴。もっと別の方法よ?」
私の表情が陰った事をいち早く気づいた祖母はそう微笑みながら答える。このままマティアス様の求婚を受けてもよいのかしら。少し悩んだあと、返事をする。
「マティアス様、求婚をお受けいたします。けれど、卒業まで待ってもらえますか?」
「えぇ。もちろんです。卒業したらすぐに結婚式を挙げましょう」
「もし、マティアス様が卒業までに他に好きな人が出来たら言ってくださいね」
「絶対に余所見をする事はないですが、約束します」
私はそっとマティアス様の持っていた花を取り、花の香りを確かめる。
「素敵な香りですね」
私はそう言うと、彼は私の持っていたその花を髪飾りに挿してくれる。
「貴女を必ず幸せにします」
そう言って彼は私の手に一つキスを落とす。
「あらあら、私事のように嬉しい気分だわ。モアを頼みますよ」
「畏まりました」
そこから彼は礼をした後、すぐに王都へと戻っていった。祖母は泊まっていけばいいと言っていたけれど、彼はすぐに父と母の元へ行き、婚約の手続きを急ぎたいのだとか。
私はというと、このまま休みはここで過ごす事になっている。もちろん祖母の侍女として。祖母はこのままでいいのよ?というけれど、お婆様の側で侍女として結婚までは居させてほしいとお願いしたの。
お婆様も侍女長達も快く私を受け入れてくれたのは本当に嬉しい気持ちで一杯だった。誠心誠意働く事を誓ったのは言うまでもないわ。もちろん学院の勉強も怠らない。
一週間程経った頃、離宮に母がやってきた。
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