第21話
そうして翌日、朝食を摂った後、私達が王宮を出る準備をしていると、クロティルド殿下が部屋へとやってきた。私達は礼をすると殿下は今までに無いほどの暗い表情をしている。
「怪我が軽くて良かった。君が王宮に運ばれて来た時、私の心臓は止まる思いだった。本当に良かった」
「心配をお掛けしてすみません。侍女のお陰で軽くて済みました」
「だが、顔や腕に傷が残ってしまうと聞いた。私は君を妃に迎えたくて動いていたけれど、傷のある令嬢を正妃にするのは駄目だと両親に言われた。
二人から反対されてしまって正妃として迎える事は出来ない。
それから……まだ詳しくは分かっていないが、君を襲った犯人はどうやら私の婚約者候補である令嬢が命令したと言っている。情けない気持ちで一杯だ。君を守る事が出来なかった」
殿下の話を聞いて内心驚きを隠せないでいた。王太子妃を狙う令嬢に狙われたのか。やはり貴族は怖い。自分も貴族だけれど。
私が青い顔をしている事に気づいた殿下は心配そうに私の手を取った。
「大丈夫かい?君をこんな目に遭わせた家は必ず処分するから安心してほしい。お茶会から君を虐めたり、嫉妬で怪我させようとしたりする者達が多くて不信感で一杯だろう。私がこれ以上君に近づくとまた標的にされかねない。
君を思うと心苦しい。……モア嬢、君は隣国へ静養しに行きたいと言っていたよね。これは私から父に願い出してもらった書類だ。君1人分だけだが受け取って欲しい。私はまた君に会いたいと請わずにはいられない」
殿下は何を言っているのだろうか。私は以前から会いたいと思っていませんよ、むしろ関わりたくないと口から出かかったけれど、グッと我慢して殿下から書類を受け取った。
「クロティルド王太子殿下、有難うございます。祖母の下でしっかりと静養させていただきます」
そうして殿下は私の手の甲にキスを一つ落とすと部屋を後にした。
「さぁ、モア。急いで帰りましょう?」
「えぇ、お母様。もちろんですわ」
私達は医務室へ行き、医者にお礼を言った後、メリダに声を掛けてから邸へと戻った。父とフルム兄様は私が持ち帰った書類を見て喜んでいたわ。
「すぐに隣国へ出発する手続きを行う。荷物もまとめよう」
ようやくサルドア国へ出国の準備を始める事ができる。
そして一週間後に王宮にメリダを迎えに行った。足は怪我をしていないので歩いて馬車に乗り込んだの。でもね、馬車の揺れは響くらしくて『痛っ』と何度も言いながら涙目になっていた。
……メリダが生きていて本当に良かった。
そうして一月後、ようやく出発の準備が完了し、私はフルム兄様と隣国へと向かった。
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